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市政の行方② かじを切るのは 解体か、保存か どうなるサン・ファン号

 県慶長使節船ミュージアム=石巻市渡波=に係留されている復元船サン・ファン・バウティスタ号。老朽化が進み、原寸大での修復を断念した県は、4分の1大の繊維強化プラスチック製の後継船を造ることを決め、本年秋以降の解体工事着手に向けて粛々と準備を進める。一方で市内外から原寸保存を求める声が出ている。予定通り解体されるのか、それとも修復保存へ道が開かれるのか。かじ取りに注目が集まる。【本庄雅之】

 3月21日、サン・ファン館の公式サイトに、「3月31日まで」としていた船の公開を「東京オリンピック・パラリンピックの開催期間までは、野外広場から観覧が継続できる」と告知。修復保存を主張する市民運動に配慮したのでは、と受け取る向きもあったが、「工事スケジュールが明確になりましたことから」と、あくまで工程にのっとった措置であることを明記していた。

 そもそも解体に反対の声を上げたのは、石巻市内でリサイクル業を営む齋藤祐司さんと料理店のオーナー阿部久利さん。県民を巻き込み、当時の技術を結集して平成5年に建造した現存する日本一大きな木造船を壊してしまっていいのか。令和元年7月から勉強会を重ね「サン・ファン・バウティスタ号を保存する会」を立ち上げた。

 その後、石巻市の亀山紘市長に保存を要請したほか、遠藤信哉副知事に約3300人の署名簿を提出。今年1月26日には、保存する会のほか、ハポン・ハセクラ後援会などと「サンファン号保存を求める世界ネットワーク」(白田正樹会長)を結成。メディアの注目度は一気に上がったが、有効策に苦慮しているのが現状だ。

 同ネットワークは解体、後継船建造に県予算を支出することには違法性があるなどとして監査請求したが、県議会で予算が決議される前だったため却下された。その後、予算は可決されており、同ネットワークでは改めて監査請求する方針という。

 3月13日に石巻中央公民館で開いたフォーラムには、ほぼ満員の約80人が参加。関心の高さをうかがわせ、横浜国立大の平山次晴名誉教授(造船工学)はサンファン号を「宮城県だけでなく国の宝」と評価。他の識者も複数の具体的な保存方法を示した。

 市民の間には「解体されるのが分かっていたのに放置していた責任は」(70代男性)、「復元船をただ展示しているだけで、有効活用できていなかった」(60代女性)「実物大だから意味がある」(40代女性)との声がある。ある市議は「復興に追われ船のことまで気が回らなかった」と市民感情を推し量った。

 幕末に太平洋を往復した軍艦「咸臨丸」より約250年も前にヨーロッパを周回してきた支倉常長らの偉業をどう捉え、伝えていくか。新市長は、サン・ファン号に対する考え方を説明する必要はあるだろう。

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