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世界ネット「もう一度考えて」 修復保存求めて提訴 解体迫るサン・ファン号

 「サンファン号の保存を求める世界ネットワーク」(白田正樹会長)は23日、県知事を相手取り復元船サン・ファン・バウティスタ号の解体のための公金支出差し止めなどを求めて仙台地裁に提訴した。慶長遺欧使節ミュージアム=石巻市渡波=に係留中のサン・ファン号は、老朽化に伴って解体が決まっており、早ければ今秋に工事が具体化する。世界ネットの保存運動は、いよいよ法廷の場に持ち込まれた。

 訴えたのは、市民団体の「世界ネット」のほか5人。訴状によると差し止め理由は

①復元船は歴史的意義を後世に伝えるために建造された木造帆船。今後の建造は事実上不可能と言われる貴重な財産
②県が平成29年8月1日に復元船の修復保存を断念する方針を決めたのは事実評価を誤認し、保存不可能と判断した誤り
③文化的価値を十分考慮せず、原告が提言する保存方法を全く検討しなかったことは妥当性に欠き、裁量権の範囲を逸脱している。

 また「改修のため海水を抜いて船底を下ろす際、荷重がかかり腐朽している船体が壊れる危険が高い」などとした県の判断に対して具体的な修復保存方法を示した。横浜国大の平山次清名誉教授(造船工学)らによる「サン・ファン号を安全に乾燥状態に移行し、長期保存する工法」では海水を抜きながらドック内に砂を流し、船体の内部補強をする方法を提示した。

サンファン保存提訴 (2)

解体中止ののぼりを手にして仙台地裁に向かう原告ら

 さらに文化財建造物修理技術者の日塔和彦さんが4月にサン・ファン号を視察した上で作成した「サン・ファン号船体修理の基本構想」では、文化遺産として修理を行い、ドック上に屋根で覆った展示館を設置して一般公開する案なども明示した。

 解体後、県は約4分の1の繊維強化プラスチック製の後継船を製造、展示する基本計画だが、日塔さんは県が見積もった16-20億円の事業費があれば、修復保存は十分可能と主張した。

サンファン保存提訴 (1)

会見した「世界ネット」の白田会長(右から2番目)

 仙台弁護士会館で記者会見した白田会長は、解体に反対する署名が目標の1万筆に達したことを報告。「県民の意識の高さを再認識した」とした上で「県は今一度真摯な態度で調査し、修復保存に動いてもらいたい」と訴えた。

 世界ネットのアンバサダーを務める都甲マリ子さんは「決まったことだからと、このまま解体に突き進むことが宮城県にとっていいことなのか。もう一度立ち止まって考えていただきたい」と話していた。今後も、運動を広げる活動は継続するという。【本庄雅之】


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