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女川産ギンザケに熱視線 戦渦でサーモン輸入減 国内産需要増も先読めず

 ロシアのウクライナ侵攻で、輸入水産物に大きな影響が出ている。ノルウェー産サーモンもその一つで、輸入量が激減。生食用が手に入りにくい中、安定生産が見込める宮城県産の養殖ギンザケが注目を集める。一大産地の女川町で水揚げが始まっており、すでにスーパーや大手チェーンのすし店などで在庫を確保する動きがみられ、価格は昨年より上昇。漁業者はこれを機に知名度も高めたい考えだ。

 ノルウェー産サーモンは生食に向き、刺身やすしネタとして引き合いが強いが、戦渦に伴ってロシア領空内を飛べず、船舶輸送はコンテナが足りないなどの要因が重なり、日本への輸出量が激減。価格も高騰し、安定した確保が難しくなっているという。

輸入サーモンが不安定となる中、女川産のギンザケが全国から注目されている

 一方、県産の養殖ギンザケは、生産量日本一で国内シェアは80%以上。ブランドの「みやぎサーモン」は平成29年に地理的表示(GI)保護制度に登録され、商品力を高めてきた。生食用としての高品質と鮮度を誇り、旬が4―7月とあってこれから安定した量を確保できる魚種として注目を集めている。

 女川町小乗浜の(株)マルキン女川工場では連日、日の出前に同町尾浦沖のいけすから、ギンザケを水槽に移し替えて氷締めし、漁港で待機していたトラックに載せて加工工場に運ぶ。現在の搬入量は約1トンだが、段階的に引き上げ、ピークでは1日10トンに上るという。

この日は約1トンの銀ザケを水揚げ

 同社の鈴木真悟常務(34)は「ギンザケは用途が幅広く、輸入サーモンの代替として需要がでてきた。すでに問い合わせも昨年より格段に多い」と話す。

 生産者にとっては需要増で高値となるのは大きな恩恵だが、原魚を仕入れて加工する工場では、それがコストとしてのしかかる。先を見据えれば、手放しで喜べない。「ギンザケ養殖の新規参入の可能性、ロシアの動向を含め今後の価格変動が見えない。需要はありがたいが、ギンザケは大衆魚。供給とのバランスが崩れてはいけない」と話す。

 県外ではギンザケの陸上養殖も進み、今後は競争の激化が予想される。同社はMEL(マリンエコラベル)やASC(水産養殖管理協議会)認証を取得しており、ブランド力を高めた付加価値で時代を先読みしていく。【渡邊裕紀】





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