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【日々是食日】#1 長野の初夏 ぼだこしょう素焼き

長野市、小料理屋にて


数年前、長野を旅行しました。関越トンネルで新潟方面から入り、小布施、長野市内、善光寺、戸隠神社をまわる1泊2日の車旅でした。
その日は温泉に入り(これまた凄く良かった)、小布施の街を散策し、長野市内に入り1泊というスケジュールでした。

私達夫婦は、食に関する価値観が割と似ています。四柱推命で「お金は知らないけど、食べ物に困る人生は送らない」と占断された夫婦です。
旅行中のご飯、私達は「地のもの」を頂くことに全力をかけます。今回は連休中の旅、自炊が出来る宿は満室だったので路頭に迷いたくない私達はお店を予約しました。

予算を伝え、「とにかく地のもの、近場のものを少しづつ思いっきり堪能したい。嫌いなものはない」という旨を伝え、予約をします。
ええ…(怪訝)と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、割といけるものです。まあ、酒なども一緒に用意して欲しいと伝えるので「呑みアテ」と理解してくださるのか、特に問題が起こったこともありません。

その晩も、お刺身(長野、実はお魚天国)や地のお野菜を中心に堪能させていただきました。八町きゅうりの信州味噌だけで頂くのも美味しかった。マスターは県内の方。おやきや野沢菜の思い出などを教えて下さり、談笑しながら食事を楽しむこと2時間ほど。


皮が薄くて水分が滴る八町きゅうり。信州みそがまた酒を呼ぶ



すると、マスターが何かをグリラーに入れて焼き始めました。その頃はもう客は私達2人だけ。ああ賄いか、もうそろそろお暇する時間かと思っていたのですが、特に急かす空気の色に変わる訳でもない。ん?思い違いか…それならまあ、もう1種類くらいお酒頂いてから帰るかとメニュー表に目を落とした時。


初対面 ぼだこしょう

「ぜひ食べて。」と言われて差し出されたのが、寄り添った2つのそれでした。

中玉トマトくらいの大きさの緑色の野菜は、全体に美味しそうな薄皮が浮いていて、ところどころに見ただけで口の中にほろ苦さを呼ぶ焼色。その上で優雅に遊ぶ糸がつお。

これは?ピーマンか?いや、焼いた皮目はししとう、万願寺のそれだな…。なんだろう。食に興味を持ち始めてから、野菜の種類まで分からないのは初めての経験だったので、じっくり見たい!食べたい!と高ぶりました。


肉厚な、とれたての夏を焼いたようなぼだこしょう

マスターが「ぼだこしょうです。このあたりでは畑にたくさんありますよ。」と教えてくれました。
そうか、なんばん系かと思いながら頂いたのですが、肉厚でジューシーな皮、熱を通しても伝わる新鮮さ。
そして爽やかさを堪能したのも一瞬、私は見事に大当たり。鮮烈な辛味が口の中を走り、目を見開いたところをマスターに見られ、「いい思い出ですね」とマスターの締めの言葉で長野の夜を締めたのでした。
帰ってから調べたところ、形がいびつなほど辛いとのこと。
…人間と同じねとか言わせないよ?

帰路についた次の日、野菜が生い茂る畑の中を通って帰ってきました。青空を遮るものがないところで全力で育っている野菜はすごく力強くて、見ているだけで元気をもらえます。
道のところどころには無人野菜販売の小さな建屋がぽこぽこと。建屋の棚には、野菜が山積み。八町きゅうり、オクラ、ナスなどの夏がひしめき合うこの時期が一番大好きな私の幸福感に拍車がかかります。
そしてもちろんソウルベジぼだこしょう。ふぞろいな個性が雑多に袋の中でぱんぱんになっている姿に秒で心を射抜かれました。もちろん木箱に小銭を何枚か投入し、購入させて頂きました。

ぼだこしょうはなかなか信州以外で見かけません。
ここに所縁がある人は、ぼだこしょうを見ることで夏の到来だったり帰省を実感するのは素敵だなあと思いながら、後部座席を信州夏野菜でいっぱいにして帰路についたのでした。

おわり


旅の切り抜き📸

もちろん買いました。素朴な味は飽きない。


ぶどうに巻かれるあじさい。毎年「もう‼(怒)」って
思ってるんだろうな

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