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#211-23APR2020 ▶ うちで旅するブックガイド 2020

STAY HOMEな毎日でも、旅の心を持ち続けることはできるはず。
今週のSound Excursionは、家にいながらにして、ここではない場所へと心を連れていってくれる6冊の「旅本」を、そのイメージを広げる音楽も交えてご紹介します!

ON AIR

4月23日(木)19:30-20:00
FMまつもと(長野県松本市 79.1Mhz)
注)今週はポッドキャスト配信はお休みです。

☆アプリ/ブラウザより全国どこからでも無料で聴取可能です
アプリで聴く https://fmmatsumoto.jp/aboutus/officialapp
ブラウザで聴く https://fmplapla.com/fmmatsumoto/

うちで旅するブック・セレクション

1〜3:クノー 友人(匿名)セレクト/レビュー 
4〜6:クノー セレクト/レビュー

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1.『世界の童話23 カロリーヌのせかいのたび』 小学館(絶版)
こどもには少し大きい百科事典サイズで、実家の本棚の一番下の定位置にあった。姉弟三人で読んでもうボロボロで、表紙も裏表紙も、しまいには本編も何ページかなくなってしまったのを引っぱり出してきては読んだ。女の子と動物たちがそれぞれ個性を持って世界を旅する話で、スパゲッティはイタリアのものなんだ、と知ったりメープルシロップは木から採れると知ったり、大きな発見ではなく、この本で刷り込まれていった感じ。
大人になってからどうしても自分の家に一冊欲しくなり、こどもへのプレゼントにと、ネットで探して定価の30倍ほどの値段で表紙までちゃんとついている古本を買った。もちろん、表紙も裏表紙もない何十年前の本も大事にしてある。
ちなみに源池の井戸の脇半杓亭の奥、おおいど文庫にひっそり並んでいるのを発見。

🎶イメージを広げるオススメ音楽

2.『なんくるない』 よしもとばなな 新潮社

とにかく沖縄が好きで好きでたまらなく、恋しているようにいつでも沖縄のことを考えているときにこの本が出た。この本を読んでは沖縄独特の光や明るくてどうしようもなく暗い雰囲気、おいしいものの匂いまで思い出して、次はいつ行けるだろうかと考えていた。その土地には住んでいない、旅人として沖縄に魅せられた人が書くとても具体的な描写が痛いくらいに重なって、当時はほぼバイブルのようだった。今も。

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3.『ぬまばばさまのさけづくり』 イブ・スパング・オルセンさく・え きむらゆりこやく 福音書店
今も一番好きな絵本を聞かれたらこの本を選ぶ。
デンマークの沼地に住むぬまばばさま一家がすばらしい材料で春を祝う酒をこしらえる話で、絵も文もとても雰囲気があって楽しい。
何年か前、友人を訪ねてデンマークを訪れた時、草原にふさふさの草が風になびくのを見て、「あれはぬまむすめの髪の毛かもしれないー」と感動したのを覚えている。デンマークの田舎は信号もほとんどなく、車も少なくて、本当に音がない不思議な景色だった。
お酒をたっぷり飲んだぬまばさまの家族が陽の光をたっぷり浴びて春を喜ぶ場面は、本当にあたりまえのようであたりまえでないのだと、いま家で自粛するわたしたちには沁みる場面。

🎶イメージを広げるオススメ音楽

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4.『アンリくん、パリへ行く』レオノールクライン作 ソールバス絵 P-Vine Books
ソール・バスは有名なグラフィックデザイナーで、日本国内では、京王百貨店、紀文、コーセー、の企業ロゴを手がけていることでも知られています。そんな人だけあって、この本は、色づかいや文字の配置など、デザインがとても可愛らしく楽しいです。
ストーリーは、フランスのルブールという町に住む、パリに憧れるアンリくんという少年が、ある日お弁当をもってパリを目指して出発するという、ほほえましい内容。しかし、同時にそれは、当番組の冒頭で流している「いつもの移動が旅になる」というメッセージにも通ずる思想をも含んでいるように感じました。
遠くへ旅することがままならない昨今ですが、そんな状況の今、ぜひ大人にも読んでいただきたい一冊です。

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5.『全ての装備を知恵に置き換えること』石川直樹 著 集英社文庫
石川直樹さんといえば、北極・南極やチョモランマなど、辺境を旅する写真家として有名ですが、こちらは文章メインの旅エッセイ。
ここで書かれている題材は、一般の感覚でみると果てしない大冒険の記録なのですが、それが「血と汗と涙の壮絶なドラマ」といった雰囲気ではなく、その段階すら通り越した達観してしまったかのような清々しい文体が印象的です。
ちなみに、この本のタイトルは、アウトドア・ギア・ブランド「パタゴニア」の創設者イヴォン・シュイナードによる言葉。
「あれもない。これもない。さあどうしよう?」というときに示唆をあたえてくれるような、強力な言葉だと思います。

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6.『中原中也 詩集』角川文庫
「旅本」として、細切れにいつでもくりかえし読み返すことが出来る詩集という形態はけっこうありな選択。
これは、ぼくが中学生のときに生まれてはじめて買った詩集ですが、そのきっかけとなったのは、ブルーハーツのギターのマーシーが、中原中也のポートレートと詩をプリントしたTシャツを着ていたことからでした。
そして、そのプリントされていた言葉というのは、『宿酔』というタイトルの詩からの引用で、倦怠感と夢見心地がごっちゃになったような独特の世界に、「よくわからないけどわかる」みたいな不思議な共感をはじめて体験したような気がします。
この本は、ほんとうに長きにわたって様々な旅先に持ち出しましたが、一人旅独特の「こんなところでいったいなにをやってるんだろう」という、抜け殻のような気分になったときには、いつも必ずマッチしていました。

🎶イメージを広げるオススメ音楽

真島昌利 - ルーレット(アルバム『夏のぬけがら』より)


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