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子どもの行動に大人は何ができるか 〜Uターンした農家の挑戦〜

学校と地域の橋渡し役として、双方の思いをくみ取りながら、子どもの学び、地域住民の生きがいづくりを行っている地域学校協働活動推進員。清水 琢也さんは10年ほど前にUターンし、「清水農園」として野菜作りを行うかたわら、飛騨市立山之村小中学校区で推進員を務めています。「みんなに喜ばれること」をしようと活動を始め、子どもたちの挑戦をそっと後ろから支える清水さん。活動内容や地域活動の魅力などを伺いました。

■プロフィール
清水農園、飛騨市地域学校協働活動推進員(山之村小中学校区)
清水 琢也さん

岐阜県飛騨市神岡町山之村出身。前職では警備会社などを経験し、2012年にUターンした。現在は「清水農園」として農業を営み、ホウレンソウや「寒干し大根」、「寒熟大根」などの野菜を育てている。

友から学び、推進員に。子どもの行動を見た大人に願うこと

――推進員になったきっかけを教えてください。

以前の校長先生からお声がけいただいたことがきっかけです。頼まれたことはまずやってみようとの思いでした。年に4回ほど地域づくりに関する講習や研修会に出てみて、推進員の活動が軌道に乗れば、地域が盛り上がるはずだと期待が膨らんでいきました。
 
実は元々、プライドがめちゃくちゃ高い性格でした。でも人望が厚い友人と出会い、考え方が変わりました。彼がいるだけで周りの雰囲気が自然と良くなるような人なんです。その人に何ができるのかではなく、みんなに喜ばれることをするのが大切だと改めて気づかされました。そうして引き受けたのが推進員です。
 
課外活動が自分への学びにつながることにも魅力を感じていたので、ベストタイミングで声がかかったと思っています。

――推進員の活動を教えてください。

僕はどちらかというとコーディネーターのような役割をしています。例えば、子どもたちが運営した販売会を来年につなげるために、「こういうことをやってみるといいかもしれません」「こういう人に相談してみると面白いですね」などと、子どもたちの行動を後押ししています。
 これからは、子どもたちの活動を知った地域の方々がどう応えていくかだと思っています。自発的に動けるような運びにするのは本当に大切ですよね。

販売会(山っ子ブランド販売会:山之村の特産品販売を通し、山之村の魅力発信を目的とした活動)の開催に向け、地域の生産者の方々と企画している様子

Uターンし、農業に挑戦。販売ルートに乗らない野菜も活用

――普段の活動を教えてください。

農業をやっており、飛騨のホウレンソウをメインに育てています。約50年前から親父がやってきたほうれん草農家を継いだような形ですね。元々、農業への思いがあったことから、僕が帰ってきた2012年から知り合いの農家さんでアルバイトをしながら勉強を始めました。
 
当時は、ホウレンソウの袋詰めくらいの経験しかなく、学校の菜園で土を触った程度でした。今でも分からないことだらけです。

――農業の活動について詳しく教えてください。

ホウレンソウのほかに、寒干し大根を作っています。大根は夏に栽培を始め、11月あたりに収穫し、それを保存し冬場の寒い時期に作ります。
 
しかし天候によって、形が悪かったり、小さかったりする大根があります。それらを切干し大根にしたりもしています。これが結構人気があって(笑)。 また、テレビの取材の際に食べていただいた干す前の大根が美味しいと言われることもあり「寒熟大根」と名付けて冬場に大根を販売しています。寒干し大根を軸にしながら、温暖化のような環境の変化にも対応できるようなチャレンジもしています。

経験を積み、成長する子ども。あと一押しで移住者が増える?

――今年の販売会で印象に残った出来事を教えてください。

実は販売会は雨で、売れ残りが発生してしまいました。子どもたちにとっては、売れ行きが天気に左右されるという学びにつながったと思います。
 
ただ、雨でも市役所前の売れ行きの良さにはとても驚きました。職員さんも売れ残らないよう気を使ってくれるじゃないですか。そうなると、「農家も野菜が余りそうな日は市役所の前で売るか」みたいな(笑)。それも一つの学びというか、経験です。
 
あとは、子どもたちの発案で山之村ブランドのステッカーを作ったのですが、子ども主体でロゴの勉強や発注を行っていたのに驚きましたね。

昨年9月に「飛騨産直市そやな」で行われた「山っこブランド販売会」の様子

――今後やってみたいことについて教えてください。

先日、郡上の石徹白地区の地域おこし団体と交流会をしました。彼らが言うには、水力発電の運営が全国的に取り上げられて注目されはじめ、移住者が増えたというんです。それを聞いて、販売会で子どもたちがやった「山之村ブランド販売会でPR」というブランディングは間違っていなかったし、続けて注目を受けることが大事なんだなと改めて思いました。
 
なので、僕たちが子どもたちの活動に移住者が増えるようなメッセージを盛り込んでいくことが大切です。最近地域の若い方と、やっぱり移住者が増えるといいよね?と語り合い具体的にどうアクションしていこうか?と相談しているところです。

失敗重ね、次世代の山之村を!

――最後にお伝えしたいことはありますか?

大人が「ほらを吹くくらいの夢を語ったり理想を語る」ことが大事になると思うんです。もっと自由に、自然に対話できる場所があってもいいよなと感じています。思っていることを言いやすいような環境を作っていきたいですね。
 
あとは、学園構想も始まってまもないので、失敗ありきと考えることが大切です。ミスを責めるより、いかにカバーできるかに意識が向きます。今年の経験を活かして来年はこうしようみたいに、得られたものを着実に分析して、次につなげていきたいですね。