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卒業旅行


水平線から朝日が昇り始める

遠くに見える漁船が
海に一筋の道を作っていく

その光景を静かに見つめている

彼はまだ規則正しい寝息を立てている

起こしたくなくて
窓際の椅子に座り
静寂の中
息を潜める

見なくても思い浮かべる事ができるのに
その愛しい寝顔を見つめたい衝動

それさえも諦めて
ただ彼の寝息を聴いている

彼が起きてしまえば
この旅は終わる


何度も何度も
様々な場所を彼と旅した

旅を終えても
時が経てば
また新たな旅に出て

耀く彼の姿を見つめ続けた日々


この旅を終えれば
もう
彼と共に
そんな時間を過ごす事は無い

お互いに納得して
選んだ道は
二人を分かつものだった

そんな
あり得ない選択を
二人で選んだ

彼は
瞳を潤ませる事も無く
静かに笑っていた

長い年月は
彼を成長させていた

それは嬉しくもあり
また淋しくも思えた


まだあの頃のあどけなさを感じるのに
彼はもう立派な大人の男に成長していた


「あなたが護るべきなのは
もう俺じゃないから」


そう言いながら
彼の指先が触れた指輪を見つめる

左手の薬指に光る
彼ではない人との
約束の証


後悔は無い
間違えているとも思わない


それなのに

この時間が
永遠に続けばいいのにと
心から思ってしまう


そんな自分に苦笑し


窓の外の朝日を見る

昇り始めた朝日は
いつしか
眩し過ぎて
見つめる事が叶わなくなる
その寸前の日の光を
この目に焼き付けて

立ち上がり
ベッドに向かい
朝日がきらきらと
耀かせている
彼の髪を撫でる


瞼が微かに震え
やがて目を覚ました彼の
綺麗な瞳に
思わず見とれてしまう

「おはよう」

そう言って
微笑んだ彼の笑顔に

あの出逢った頃の
あどけなさが宿り
胸が締め付けられた


言葉を発すれば
震えてしまいそうで

ただ微笑んで
彼の髪を撫でると

不意に彼の顔が歪んだ気がした

けれど
もう表情は見えない


抱きしめてくる彼を
受け止める


残り少ない
二人の時間


静寂の中
彼の愛しい体温を
全身で感じながら
ただじっと
抱きとめた

*卒業旅行*

*チャン・グンソク*
作詞*森大輔・Nono Umino
作曲*森大輔

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美しくも切ないピアノの旋律と
グンちゃんの歌声に心が震えて・・・
またまた妄想してしまいました
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