LoveLetter 22

愛してやまない大切な作品がある
今も続く私の大好きの数々は
その作品のおかげで作り上げられたと断言できる

けれど私は
その作品の最終話を読んでいない

あり得ない

作品を愛する人たちからの
そんな声を目にしたから

大切にしていた人への想い
その世界の全てが変わってしまうのが怖いから
手にしているその一冊を封印したまま
長い長い年月が経っている

その事をふと思い出した


あり得ない

私にとっては初めましての
過去の世界の中のあなたに
私はそう感じました

大好きなあなたが命を吹き込んだこの人を
好きになれないかもしれない

初めて抱くあり得ない気持ち


けれどいつしか
彼と心を一つにし
彼の沈む心と同じく自分の気持ちを沈ませる程
彼の幸せに自分も全身を震わす程に
シンクロしていた

愛しくて愛しくてたまらない人になった


やがて最終話
あと30分あるかないかの終盤
大きなあり得ないに襲われた


彼は少しも幸せにならない

彼を巻き込んだ人々は
それぞれの人生を歩き始めるし
救いがある様にも思えない

敵はとんでもない悪人だった


なのにさらなる最大なるあり得ないに
心は沈んでしまった


彼が何者であるかを知ってもなお
絶対に口にしてはならない言葉を浴びせ掛け
彼のたった一つの宝にまで・・・

あの人は最後まで
最低最悪の極悪人でなければ
ならなかったと思う


そうでないのなら
彼が誰なのかを知った時に

自分はその人にまで・・・
と自分の愚かしさに苦しみぬいて
涙を流して欲しかった


そこから
彼が最高の男になって
幸せになっていく様を
見せてもらえたら
どんなに良かっただろう


彼をこんなにも愛してしまったから
尚更にそう思った


そんな悶々とした気持ちを抱えて
どうにも苦しかった時

先輩うなぎさんが声をかけてくださった
そしてこの作品にまつわるエピソードを
聞かせてくださった


理不尽に耐え
苦悩しながらも前を向き
自分を苦しめた人たちをも
さげすむ事無く
憎む事無く
包み込んでしまう


彼と
彼に命を吹き込んだその人が重なる

愛しくて愛しくてたまらない






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