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ロマンからリアルへ「変容」の先に辿り着いた夢の続き〜FC町田ゼルビア2023シーズン終了に寄せて



はじめに

2023年11月16日、日本代表 SAMURAIBLUE ワールドカップ二次予選 ミャンマー戦、日本代表は上田綺世・鎌田大地のゴールで前半3点を先取した状況で、鹿島アントラーズ所属・佐野海舟は日本代表としてはじめてピッチに立った。

低い姿勢で鋭く潜り込む粘り強いフィジカル、相手を押し出しボールを奪うデュエルは町田在籍時から不変のもの。鹿島アントラーズ、J1でより磨かれた前への意識・アクションは、彼を知る者にとっては至極当然な「いつもの海舟」で、いつも通りを欧州猛者揃いの代表のピッチですんなり表現できるあたり、いつでも渡航の準備はできているのかもしれない。

海舟がボールを前につけると、足を止めずにパスの受け手をフォローできる前後左右へ、ポジショニング微調整を繰り返す姿に懐かしさを覚えた。
中盤に海舟が控えると、アタッカーは勇気を持ってチャレンジできるのだ。万一失敗しても、海舟ならすぐに回収できる。隣の高江と連携して、すぐ攻撃に転じられる、と。

日本代表という「夢の舞台」に見慣れた顔が見せるいつも通りのプレイに、のぼせるような高揚感を感じつつ、海舟が野津田を湧かせた数々のプレイと共に脳裏に思い起こされたのは、2022年10月19日、平日夜のホーム最終戦。「変容」の必要性を訴えた、大友前社長の震える声だった。

2022シーズン終盤に見えていた風景

「何かしら変えなければいけない」と、多分みんな感じていたと思います。

キーマンが語る町田のJ2制覇とJ1昇格 奥山主将が振り返る変化、競争と感謝

奥山キャプテンの言葉に含まれる「みんな」は選手・チーム・フロントだけでなく、それまでチームの行末を見守ってきたサポーターにとってもまったく同じ心境にあったと思う。

カタールワールドカップ開催の影響で少し早まった2022年シーズン、10/23アウェイ新潟戦の直後からチームの変化はサポーターの耳にも届いた。

2022年10月24日。藤田社長の就任、役員体制の変更を皮切りに、選手・コーチ陣にも及んで吹きすさぶ退団・移籍の嵐。

長谷川アーリアジャスール・ドゥドゥ・ヴィニシウスアラウージョの契約満了、鄭大世引退、シーズン後半にかけて出場を増やし、勝てない中でも小さくない献身を見せた岡野、菅沼も去っていった。
そして主力中の主力だった太田修介・佐野海舟・平戸太貴もJ1へ移籍、好調だった2年目以降のチームを構成した中心メンバーが軒並みチームを出ていった。

はじまりは「頓挫」

3カ年計画を掲げてスタートしたポポビッチ体制において、絶望的バッドエンドに終わった2022シーズン。
J1昇格を目指した3年目の計画が頓挫し「心機一転、新しいステージに臨みたい」というマインドに至るのは当然の気持ちで、彼らがチームを出るのは極めて妥当なタイミングだと思っていた。

佐野はオーバートレーニング症候群による長期不在、平戸についてはキャプテンとしてチームをまとめきることができなかった自責もあった。
それまでもJ1やJ2上位からのオファーには事欠かなかったであろうこの2人については、むしろ3年目終了まで、よくぞチームのために残ってくれていたと思う。

ここで区切りをつけない理由は、実際なかったと思う。さみしさはあれど、それまでの貢献にただただ感謝し、送り出すしかなかった。

KENTA F.C. さんの動画につけられた新潟サポのコメント。

町田サポ的には全く別チームになっても強けりゃいいのかな?個人的には血(選手)の入れ替えを徐々にやって強くなったほうがチームに対して愛着を維持できるが。 アルビサポとして今の選手をほとんど代えて「はい、J1優勝」となってもなんだか複雑な気持ちになるだろうな。

【エゲツない戦略と戦術】町田ゼルビア、J1昇格&J2優勝決定! 中堅市民クラブが最強のマネーゲーマーへ変貌。大躍進した理由を超わかりやすく解説します。 コメント欄より

自分で思わず返信してしまったのだけど

去年ポポビッチ体制3年目がそもそも選手獲得に苦しみJリーグ全チームで最小人数の編成でスタート。チームの空気悪く競争原理も生まれずラスト10戦勝てずに大破。中心選手も経営も一斉に抜けたタイミングだったので、新加入選手が多かったことは自然というか、サポも含め、変容を受け入れる土壌、覚悟がチームに完全に揃っている状況でした。 サポ(というか自分)は今年うまくいかなかったら損切りで経営撤退されても文句言えないなみたいな怖さもあったし、町田は町田なりに、町田にプロサッカーを残すための背水の陣の賭けだった部分もあったと思います。

【エゲツない戦略と戦術】町田ゼルビア、J1昇格&J2優勝決定! 中堅市民クラブが最強のマネーゲーマーへ変貌。大躍進した理由を超わかりやすく解説します。 コメント欄より

2022年シーズンのゼルビアは、強化部の編成失敗の影響によりスタート時点で26〜27名の選手のみ。これは当時J1〜J3通じて最小のスモールチームだった。
(この辺りの問題は郡司さんがFootballista・ゼルビアタイムズでもかなり踏み込んだ内容を書いている。1〜2年目までに潜んでいた影が顕在化し、少数精鋭で3年目のシーズンに突入せざるを得なくなった状況こそ、3カ年計画失敗の顕著な現れ。)

シーズン中に紅白戦すら満足に行えない状況で、そこから主力多数含む9人が退団・引退となれば、当然、新たな選手を獲得せざるを得ない。

チームへの愛着などと悠長なことを言える気分でもなかった。
自分のため、チームのために、好むと好まざると選手は出ないといけなかったし、チームは出さざるを得なかった。変わらないといけなかったから。

サポーターに向けた社長としての最後のメッセージとして変容の覚悟を訴えたのも、大友さんの優しさだったのかもと考えると染みる。

解体されたポポビッチ体制3年分の期待と夢

2022シーズン末、解体されたのはポポビッチ体制 3年分の期待と夢。

平戸・高江・佐野・吉尾ら若い力の輝きを、中島・深津・水本らベテランがサポートしながら進むチーム。
バックスタンドが改修工事に入り、すこし手狭になったバック席で肩ひしめきあわせながら、大きくなっていくチームを眺めてきた。

2019年からは応援番組であるゼルつくがABEMAでスタート。チームの様子をつぶさに定期的に明るく知らせてくれるメディアが登場。(振り返れば、チームにとってゼルつくの開始は地味に非常に重大な変化だったように思う。)

やがてバクスタ柿落としホーム新潟戦での山口一真J2年間ベストゴールFK、コロナで声出しない中、ただスタジアム中の拍手だけで新潟の猛攻を耐えた5分間。アウェイ磐田戦で自陣ビルドアップからフラッシュパスで磐田サイドを切り裂いたアーリアのゴール。プレーオフのない中5位となった2021シーズン、人工芝の市営グラウンドで練習していたチームについに素晴らしいクラブハウスができてーーー。
東京のすみっこ、おらが町のスモールチームとして過ごしてきた期間の長いチームにとって、その成長が本当にキラキラと眩しかった。

相馬体制が終焉した焼け野原から立ち上がった1年目、強度とパスサッカーの融合を垣間見た2年目、そうして築き上げたあの頃の理想が見事に崩れ落ちた3年目の終わり、瓦解。

チームの根幹も枝葉も、多くの人が去り更地となることで、今シーズンの変容を受け入れる土壌ができていったように思う。

そんな中でも、ポポビッチ3カ年計画の中核選手のひとりである高江、相馬時代からのゼルビアを知るナカシ・奥山・深津・福井らが残ってくれたことは救いで、サポーターにとっては、2023シーズン開幕までのチームに想いをつなぐよすがでもあった。

2023年ゼルビアは「メタボリズム」のチーム

黒田監督体制の全貌がベールを脱ぎ、J2競合チームの主力をぶち抜く新加入選手の面々が明らかにされていく。
強烈な個性・実力を備えた陣容、どういうサッカーをしようとしているのかうっすら伝わってくる新加入陣の編成。
デュークそしてエリキの加入を筆頭に、その新しいスカッドを嬉しく、たくましく感じる一方で、これでコケたらうちのチームは事業的にほぼほぼ不良債権、もうどう判断されてもおかしくないな、といった不安感はあった。

あの黒田剛監督のプロ初指揮、お手並み拝見の雰囲気に包まれた2023年開幕節「今年は守れそうだし、結構いけるんじゃない?」という気持ちになったのを覚えている。優勝・昇格への確信まではなかったにしても、ラスト15分の失点を愛でるイベントにはならずに済みそうだとは思えた。

そこから第2節群馬戦の初勝利以降、波に乗り、上位〜首位へと快走をはじめたゼルビア。
多々試合ある中でも、多くの記事やサポーターの声でも挙げられている通り

  • ホーム大分戦:超絶セットプレーでゲームの流れを引き寄せ、首位を奪取した

  • ホーム清水戦:ロスタイム劇的弾勝利でチームの自信を深めた

の意味は実に大きかった。

この大分戦・清水戦についての感想はそれぞれ下記、翌節プレビュー記事の冒頭に書いています。

序盤はまだまだこれからという雰囲気だったチームとしての連携が、毎節、首位を守る結果を出しながら少しずつ出来上がっていく。

変わり続けたアタック構造

シーズンが進む中で怪我人の発生、選手個人の好不調の波、対戦相手の傾向も加味しながら、スタメンが順次変わり続けたのも今年のチームの特徴だった。

おおざっくりなイメージ、前目の選手の変遷だけで考えても、

  • デューク・エリキ x 平河・荒木(開幕後〜:442)

  • エリキ・藤尾 x 平河・荒木(デューク負傷時期:42211)

  • デューク・エリキ x 平河・荒木 x 安井・高橋(国立ヴェルディ戦前後:442)

  • 藤尾・デューク x 平河(沼田)・バイロン・荒木 x 安井・松井(アウェイ清水戦以降:4231)

  • デューク・沼田 x 平河・高橋・バイロン・荒木 ☓ 下田・宇野(藤尾離脱以降:4231/3421)

と時期・状況ごとにベース人材の変遷があり、対戦相手をふまえ各選手の特徴を考慮して人選・フォーメーションも変わり続けていた。

※このあたり、シーズン中の戦術的な変化はりんぐさん記事が書かれているのであわせてご参照ください。

3バックが機能しだした最終盤

個人的に、リーグ戦最終盤で3バックをベースとした戦い方が機能しはじめた点が興味深かった。

アウェイ徳島戦での逆転敗戦を筆頭に、シーズン序中盤は3バックでの守備固めは機能していたような、していなかったような雰囲気だった。4バックからフォーメーション変更をかけて以降の時間はゴール前で強い気持ちは見せていたものの、あまりに低く引きがちになってしまうことが多く、構造としてはいまいち確信が持てなかった。
特に跳ね返し系メンバー筆頭の池田負傷・深津移籍から後。

ざっくりの印象として、この3バックの使い方が変化していった要因は下記などが挙げられるように思う。

  1. エリキの負傷離脱により相手チームの守備ラインが上がった。縦横無尽に走り回れるエリキがいなくなったことで前からの守備の強度、頻度が減った

  2. 町田の苦戦する試合の傾向を見て、町田にボールを持たせ、球際に強く来る対戦相手が増えた

  3. レンジ・安井・バイロンのフィットで中盤でのボール保持とサイド攻略を組み合わせる戦い方にメドが立った

  4. 甲府戦で宇野禅斗の前ベクトルのプレイスタイルが覚醒(間に合った)

  5. 両サイドバックが鈴木準弥・太田宏介となり、WB稼働時のライン取りが高くなった

  6. 前線・中盤・サイドが上下動しての連動プレスが仕上がったことで、ミドルサード守備時の3CBの負担が減った

  7. 結果、最終ラインから守備面・ビルドアップ面でも冷静な対応が行えるように

すべての要因がつながるものではあるが、特に5鈴木準弥・太田宏介のセットが機能した効果が大きかった。

攻守のハードワークとキック精度のある2人をサイドに置くことで

  • 相手サイド攻撃に対して前目からチャレンジできるようになった

  • CBビルドアップのボール出口となった

  • バイロン・荒木などサイドに配置されたアタッカーと連携しやすくなった

といった要領で、戦い方全体の機能性が最終盤に来て一段上がったように感じる。

シーズン前半の3バック(5バック)に比べ、終盤戦の3バックは前から連動して守り攻める、よりアグレッシブな3バックだったので、積極性あふれる非常にエキサイティングな守備を見られて楽しかった。

陣容変更の中でチームの強さを身につける

シーズン途中での移籍・加入も非常に頻繁だった今シーズン。

スポーツナビ https://soccer.yahoo.co.jp/jleague/category/j2/teams/30532/transfer?gk=6 より引用

このOUTの多さ……黒川やグティ、佐藤をはじめとした育成型期限付き移籍組を含め、選手それぞれの意向を配慮した上でOUTを進めてきた流れを感じる。
(おそらくは移籍先を探していたと思うのですが)そもそも契約更新が1/9と遅かった高橋祥平にはじまり、夏に移籍オファーを受けた高江・深津、怪我のリハビリ継続〜トレーニングマッチ復帰後すぐに所属元の山雅に帰還した一真。

一覧で見ていくと、他サポからの声にある「今までいた選手をほとんど入れ替えて……」どころか、むしろ貢献者にチャレンジ機会+一定のモラトリアムを与える意図も視野に契約更新を進めたのではと思えてくる。昨シーズンの精算を図りながら強化を押し進めたシーズンとも言えるのかもしれない。

――選手のためにもなるし、きちんとアフターケアをすれば代理人サイドからの信頼にもつながりますね。

 それはあると思います。あと昇格したときも (高橋)祥平くんや深津くん、(髙江)麗央にはLINEを送りました。黒川(淳史)にも送りました。途中で出て行ったけど、昇格は彼らのおかげもある。そういうことをやりながら、「おかげさまで」という感じですね。

キーマンが語る町田のJ2制覇とJ1昇格 強化部・原FDが振り返る移籍戦略とチームマネジメントとは? https://sports.yahoo.co.jp/column/detail/2023111700001-spnavi?p=2
 より

その辺の別れの肌感も、原さんが来たことで、可能な範囲で穏便に実現できたことな気もする。

スポーツナビ https://soccer.yahoo.co.jp/jleague/category/j2/teams/30532/transfer?gk=6 より引用

並べてみると今季途中加入メンバーの加入以降の貢献度の高さに驚かされる。(アデミウソンは来季の期待枠コミとして)

怪我や累積警告、代表選出など誰かが試合に出れなくなれば、代わりに入った選手が奮起する。そうした人の入れ替わりをつないで繋いで、勝ち点を積み上げながら、人と形の変化にトライし、新しい戦い方の可能性を広げていく。

終盤、藤尾・平河・デュークを代表選出で欠き、町田にとって飛車角落ちで臨んだアウェイ秋田戦などは、ちょっと衝撃的なほど「残された者の総力戦」で勝ち取った、個人的今季最エモ試合のひとつだった。

――「やりたくないこともやった」というのは具体的にどの部分ですか?

 チームでいえば後半の秋田戦(10月14日)ですよね。かなり空中戦、エアバトルが多い展開でしたけど「あえてそのステージで戦おう」と割り切りました。我々がやりたいサッカーではなかったし、あえて中盤も排除するゲームプランも覚悟して臨みました。

スポーツナビ 黒田監督が語る町田のJ2制覇とJ1昇格 「高校とプロは違う」の声にはどう応えたのか? より引用

(やりたくないこと、ではあったとの話だが)あの、「徹底」の、吉田謙監督の秋田を相手に、同じ土俵に乗って捻じ伏せるなんて選択、他にどこのチームがやっただろう。なくはないだろうが、あまり記憶がない。
首位なのに、ああいう試合ができる。正直狂気の沙汰のような試合だったが、勝利に徹する結果の奇怪な仕草、非常に感動した。
大きな試練だった秋田戦を勝ち抜くことができた勢いは、間違いなく翌節の大一番・熊本戦で生きた。

メタボリズムーーーシーズン中も継続したやや過剰気味の新陳代謝で自らの形を変え続けたことで、チームの可能性を広げ、競合他チームに背中を掴ませない独走を果たせた部分はあったように思う。

2023シーズンを支えた「悲劇感の共有」

シーズン終盤も浮かれないサポたち

シーズン終盤最終コーナー、ラスト7節くらいに入った頃からは、SNSやメディアでも「町田の昇格は堅い」という論調のコメントが増えていった。

それでも、X上のポストから察された町田サポの「浮かれなさ」には感心した。
気を抜けば足元を掬われる。まず目の前の試合に勝つ。喜ぶのはまだ早い。まだ何も終わっていない。

サポの皆から漂っていたリーグ最終盤のアラート感は、最終盤の対戦相手が(過去の歴史的に町田がポカしやすい)中位下位チームばかりであったこと、また「悲劇ならもう去年観てきた」最悪の事態は起こり得るという実感が、今年の応援姿勢に与えた影響が、ものすごく大きかったように思う。

だいたい一番肝心なところですっ転ぶ経験は去年に限らないのだ。Jリーグチーム誘致失敗から階段を登り始めたチームであり、スタジアム基準未達によるJリーグ入会見送り、初のJリーグからJFLへの降格、長野でのぬか喜び、幾度にも渡るJ1ライセンス取得の壁……。

選手やフロントとは少し違う角度から、サポーターにもまた、悲劇感は共有されていたように思う。それは年や歴史を、大きくまたいで見てきたサポーターだからこそ生まれる意思で、そんなつもりはなかったとしても、これはこれでチームとしての年輪なのかもしれない。

目の前の状況を素直に信じない。それでも現場とチームはひたすら信じて声を上げ続ける姿勢。
それは熊本での試合でも、最終節の仙台でも変わらず強く感じた今シーズンだった。

ゼルサポにとって佐野海舟が日本代表に選ばれたことの意味

佐野海舟はゼルビアサポーターにとって、米子北の卒業出たての詰襟姿で町田へとやってきた、まぎれもなく「うちの子」だ。

相馬体制の最終年、SB起用でプロの舞台に立った。SBにしては早すぎる飛び込み、上下動のタイミングまずさも散見され、決して全部が全部上手くいっていたわけではなかった。それでも相馬さんは、これからの選手と我慢強く海舟を起用していた。

そして、ポポビッチ体制3カ年計画の中、本職ボランチについた海舟は、攻撃展開の高江・守備奪取の海舟でJ2トップ級のボランチコンビを組み、
多くの試合経験と成長を積み上げた。

町田にとってロマンの塊な「うちの子」

佐野海舟は、チームにとって特別な日々である相馬時代にはじまり、輝かしい未来を夢想したポポビッチ体制の申し子である。暦年のゼルビアサポーターにとってロマンの塊であり、宝物なのだ。

だからこそ、佐野海舟の日本代表での活躍、そして日本中のサッカーファンがその名を語る様は、一際に眩しく映った。

一部サポの間からすらその存り様を糾弾する強い声の上がった前体制の3年間。

確かに問題は多々あったけれど、決してすべてが間違いではなかったんだと、ほんの少し救われた気持ちになった。
昨シーズン吹き荒れた嵐の中にも、今へと至る光が間違いなくあったのだと、海舟は私たちが見慣れた青いシャツでピッチに立って証明してくれた。

続く夢の舞台と夢の街

そして、私たちの宝物は、決して海舟だけではない。平戸、吉尾もいる。高江はプレーオフでのし上がれれば本物、高江加入以降の好調を見れば、彼は山形の立役者となるだろう。
太田修介&コージの新潟勢もJ1で待っている。

ロマンの時代を越え、リアリズムでJ2を駆け抜けた2023シーズン。徹底した守備、大きな補強、勝負にこだわる戦い、フォアザチームの選手たちの献身。

他所からの罵詈雑言、誹謗中傷まがいなちょっかいに、どれだけ殺伐とした感情に苦しんだだろう。
リスペクトを胸に、相手チームを知るためにプレビューを書き始めた自分が、自分は真にリスペクトできているのか。自らを疑う心が何度も何度も首をもたげてきては、辛かった。
この最高のシーズンは、自分にとって降格危機に巻き込まれた2019年に次いで苦しいシーズンだった。

それでも、勝った。チームは勝ってくれた。

昇格・優勝を経験してみると自分はもちろん嬉しい。嬉しいけれど、それ以上に、選手たちに「良かったね」という気持ちの方がずっと大きくて、特にほっとしたおっくんの表情を見ると、気を抜くと涙がこぼれそうだった。(熊本戦の日は、泣いた。)

そして来春、日本最高峰の舞台に、私たちのチームが、町田が、ようやくスタートに立つ。

こんなにまで最高なロマンがあるかい。

パレードは進むどこまでも

パレードの日は、ただただ最高だった。予想された荒天も前日まで早々に過ぎ去って、澄み切った空の青も印象的だった。

パレードの模様はSNSのサッカー界隈から一般ニュースでもいくらか話題になった。市は、待ってましたとばかりのスピードで、来季以降を見据えたゼルビアJ1臨時予算の計上に動いてくれた。

街の風景が青く染まり、物事が動き出した。

ここから、良い時も悪い時もあるだろうけれど、私たちの住む街は、これでやっと、やっと、スタートラインに立ったことになるのかなとも思う。

おおよそなれたと思います!
このいただいた声が今年の原動力でした。ありがとうございました。

最後に

2015年くらいから少しずつ試合を見始めてきて、いったんここで大きな一区切りかなという気持ちでいます。

これからも長く長く、この街にあるサッカーを楽しみ、応援していけるように、少し無理しすぎないようバランスを取っていきたい。

今年は終盤戦、長崎に家族で、熊本と仙台にひとり遠征に行きました。どれも素晴らしい試合で良かった。
金銭的にも身辺的にも、正直今年ほどの遠征を来年できるかどうかはわかりませんし、それだけのお金があればチームに落としたい気もする。まああれこれは来年また考えます。味スタ・横国・埼スタ・鹿島スタは行けるといいなぁ。

来年の執筆について

いま時点では、来年の全節プレビューは難しい気がしています。(今年もそのつもりが結局やってしまったのでまあわかりませんが。)
ただ、プレイスタイルや選手の個性も有名で知られているJ1で、対戦相手に関する情報がそこまで豊富ではないJ2ほど、自分が下調べしてまでプレビューする理由を見つけづらくは感じています。

プレビューはやりたいなと思った試合でいくらかやって(FC東京戦はやる予定)、あとは時々、興味の湧いた試合についてはレビューを交えていきたいなーと今のところ思っています。勉強しときます。

流石に長々となってしまいました。
今回、そして今年も1年間、お読みいただきありがとうございました。
ここから、さみしい別れも、頼もしい出会いも、あれこれあると思いますが、少し休んで、To the NEXTへ、新しいステージへ進んでいきましょう。強い気持ちで。共闘🔥

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