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【生活日記】2023年4月16日 北陸音盤祭でレコード購入、『中野正彦の昭和九十二年』を一気読み。

朝から布団の中でダラダラ過ごしつつ10時15分起床
免許証が無事に見つかったので心穏やかに過ごせている。

近所のドラッグストアで惣菜パンとコーヒーを買い、車で香林坊地下駐車場を目指す。駐車場からエレベーターに乗り香林坊アトリオ1階へ出る。百貨店ならではのコスメの香りが充満する空間を横目に外へ出る。目的地はすぐそばの金沢文教会館。北陸を中心に各地の中古レコード店が一堂に会する北陸音盤祭が開催されている。大きめの会議室にはレコード・CD・カセットがずらっと並んでいる。ジャズの箱を片っ端から漁りめぼしいものを探す。出店数は少ないながらもEveryday Recordsさんの箱には良い作品がたくさん詰まっていた。

しかめっ面でぶつぶつ独り言を言いながらレコードを物色する男性たちに混ざって、思春期の娘さんを連れたご夫婦や、中学生や小学生の男の子を連れたお母さんの姿も見かける。「ママが若い頃は赤盤をよく聞いていた。ウチにもCDがあるけどレコード買ってみる?」という親子や、「これはUS盤だからね〜(いらないというニュアンス)」と語り合う両親と娘。レコードを介した親子のコミュニケーションがなんとも微笑ましい。

北陸音盤祭@金沢文教会館

エリック・ドルフィーのライブ盤2枚とSunaga t Experienceが2000年代に出したレコードを購入した。6月には金沢駅の地下広場で大規模な販売回も企画されているらしい。現場に足を運ばないと情報を得られないと改めて痛感した。

移動時間に聞いていたのはTBSポッドキャスト『スカルプD presents 川島明のねごと』2023年4月2日放送回。ゲストはコットン。熱心な古畑ファンである川島さんによる「もしもあの人が古畑に出たら」のコーナーが素晴らしい。先に聞いたレッツゴーよしまささん、そして今回のコットンのきょんさん、どちらも川島さんの用意したスクリプトを読み上げると見事に古畑任三郎が再現できる。このコーナーが秀逸なところは、あくまでも追い詰められる犯人を演じるのであって、古畑のモノマネは入らない。古畑の声や姿はリスナーの頭の中で描いているからこそ、ゲストの演じる犯人がより引き立つ。ある意味で見立ての芸ともいえる。田村正和亡き後、テレビドラマの続編制作はほぼ不可能に違いが、ラジオドラマの形だったら存続できるのではないだろうか。もちろん三谷幸喜が望めばの話だが。

AP通信(英語版)が北野武監督の最新作『首』に関する簡単なレビューを配信していた。ChatGPTにかけて日本語訳してみたが、さして新しい話題はなかった。

北野武監督の新作映画は、来月のカンヌ国際映画祭で初公開される。この作品は英雄のいない侍の物語であり、人間の欲望、裏切り、残忍さを非情に描いている。

北野監督は、1997年の映画「花火」でヴェネツィア国際映画祭の金獅子賞を受賞したが、「首」(伝統的な日本の斬首を指す)という時代劇映画を制作することを望んだ。

「ほとんどの侍映画は有名人を描き、人間の存在の汚い側面に焦点を当てたり、邪悪な人々が普通の人々を薄情に殺戮することについて描いたりしない」と北野監督は土曜日に記者に語った。

物語は、16世紀にオダ・ノブナガという強大な武将を中心とした抗争を描いており、日本では有名だが海外の観客にはあまり馴染みがない。しかし、シェイクスピア的な陰謀は十分に理解できる。

「首」の製作会社である角川の社長である夏野剛氏によれば、壮観な戦闘シーンは黒澤明監督の「七人の侍」や「影武者」を思わせる。

北野監督は、舞台に立ってキャストと一緒に登場し、「最新作は殺人の恐ろしさと不条理さを並置したものである」と語った。北野監督は76歳で、かつてはお笑い芸人のビートたけしという名前で活躍し、その後、テレビ番組や映画でスーパースターになった。

AP通信の配信より抜粋

午後からの諸々の予定を終えて、Kさんと電話。本日中にお互いの親に報告をする約束をした。

18時30頃に荷物が届く。遂にあの本が届いた。感謝しかない。
早速読みたいのはやまやまなのだが、どうせなら一気に読みたいので少しだけ我慢する。

お惣菜と鮮魚のクオリティが高いと評判のスーパーで寿司・鰹のタタキ・ベーコンポテトを買ってくる。父親から差し入れてもらったストロングゼロを飲みながら食事をしていたらKさんから連絡。夕食に入った飲食店で、孤独のグルメ第一回に出てきた”つくねピーマン”がメニューに載っているとのこと。それが何かを知らなかったが、テレ東のサイトを見て把握した。(本当はダメなのだが)BiliBiliやYouTubeにドラマが上がっていないか探していたら、なんと45分前にテレ東公式チャンネルでその回が公開されていた。

第1話 江東区門前仲町のやきとりと焼きめし 孤独のグルメ Season1

生のピーマンに鳥のつくねを挟んで食べる。この店に行けなくても簡単に真似ができそうだ。それにしても松重さんが若い。Kさんいわくこれが伝説の回だそう。配信されている間に初期作を全部観たくなった。

夕方届いた樋口毅宏著『中野正彦の昭和九十二年』を読み始める。

『中野正彦の昭和九十二年』by 樋口毅宏

メールマガジン『水道橋博士のメルマ旬報』での連載時から毎回欠かさず読んでいた作品だ。過激な右翼思想に傾倒した男が綴る日記の形式で物語は進む。膨大な数の新聞や週刊誌の見出し、ワイドショーの報道、虚実ないまぜのSNSへの投稿に対して、ときに悪態をつき、ときに賛辞を送る。連載が初は差別用語のオンパレードに吐き気を覚え、「いったいこの小説は何なんだ…」と軽い怒りさえ覚えた。ましてリベラルの水道橋博士(これは私の勝手な思い込み)が主催するメルマガで、なぜこんな右翼小説が掲載されるのか。全く理解することができなかった。

しかし物語が少しずつ進んでいくにつれて印象が大きく変わる。四六時中、見聞きする時事ネタに罵詈雑言を浴びせかける主人公の姿は、リベラルを自称する読者である私と表裏一体なのではないか。彼の姿は私の姿なのだろうか。彼の屈折した価値観の中に読者である私の姿が見える瞬間があった。その頃から表面的な言葉だけでなく、著者の真意はどこにあるのか真剣に考えるようになった。

物語の中に登場する森友問題、山口敬之のレイプ事件、共謀罪の成立など、当時熱心に荻上チキ氏のラジオ番組を熱心に聞いていただけにあの頃の感情が生き生きと蘇ってきた。

残念ながら水道橋博士の参院選出馬に伴いメルマ旬報は終了。『中野正彦の昭和九十二年』の顛末を読めないことが本当に心残りだったが、連載の最後に加筆修正の上で出版が決定のサプライズ報告があった。昨年秋の発売を心待ちにしていたのだが、その後の騒動によって書店で手に入れることはできなくなった。

あれから数ヶ月が経ち、本書を読む機会に恵まれた。中野正彦はいったいどうなってしまうのか。帯に書かれているように安倍晋三を殺めることになるのか。期待に胸を膨らませて一気に読みすすめた。気づけば深夜1時を過ぎていた。

終盤にかけての怒涛の展開は、中野正彦の内面世界が東京に満ち溢れたかのようだった。あえて主語を大きくするが、”我々”はちょっと背中を押されるだけで1923年9月1日に戻れるのかもしれない。この小説で感じた背筋が凍る瞬間、中野正彦に自分の影を見た瞬間を決して忘れたくない。良識のある方の手に届いてほしい一冊だと思った。

昭和九十八年四月十七日、午前一時十分、読了。

読後の興奮が収まらず午前2時頃まで眠れなかった。

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