ヨイショでサヨナラ 19.10.6

いったいこれ、何をしたかったんだろう……。

企画の趣旨としては

・作家の著作を読んだうえで、作品名+「ヨイショ感想文」のハッシュタグをつけて感想をツイート
・感想は「ほめちぎる」ものに限定し、作者を「気持ちよくさせた20名の方に、ネットで使える1万円分の図書カードを贈呈」

とある。


一瞬『WI●L』『HAN●DA』の関連商品の宣伝かと思ったがそうではない。あの新潮社である。
「そんなにおかしいか」の開き直りでおなじみの。


今回の作者は、ベストセラー作家とされており、ここまでしなくともある程度は売れていただろう。しかし、予想の売り上げには届かなかったのか、それとももっと売りたかったのか、なんらかの意図があって、このキャンペーンを企画したと思われる。


プレゼントがもらえる投稿企画で、わざわざけなす感想を(本気で)書く人がそれほど多いとは考えにくいのに、なぜ「ほめちぎる」ものに限定しているのだろうか。
しかも、ただ「ほめる」のではなく「ほめちぎる」と。

もちろん、毀誉褒貶の激しい作者である以上、「ほめる」以外の感想が寄せられることも充分にありうる。

しかし、大前提として、募集時に感想の内容を限定するのは、「やらせ」の類に属するのではないか。


その他の疑問。

・この企画は、作者を「気持ちよく」させる以外に、誰に、何の得があるのか。本気で販売促進になると考えていたのか
・いわゆる「炎上商法」だとしても、このような結果になることを誰も予想できなかったのか
・大出版社がなぜこんな、カネでやらせレビューを募るようなことをするのか。そこまで追い詰められているのか
・作者自身、上半身裸で金ピカに加工されて告知画像に出ているが、作家としての自身のイメージを毀損するとは思わなかったのか

去年の『新潮45』、そして、記憶にも新しい『週刊ポスト』の嫌韓特集と、明らかに出版界にも「ビジネス右傾化」の波は押し寄せているように感じられる。

今回のことも、目先の利益を追った末の過ちなのだろうか。


急に話は変わるが、一昔前、主にネットが普及する以前は、個人が自作の小説なりエッセイを発表する手段は

出版社の文学賞で入賞、あるいは持ち込みなどで文壇デビューする
自分で費用を払って自費出版する

のほぼ二つに限られていた。

したがって、売り上げなどの問題で出版社から見放された場合、そのまま失業につながる。

しかし、現在は、電子書籍という形で、誰もが文章を発表し、販売することができる(noteもその一手段)。もちろん、出版社と規模は大きく異なるが。
それでもなお、「大出版社」で「紙の本(not 薄い本)」が出されることに憧れを持つ作家志望者は少なくないように思う。


だが、今回の一件で、それ――大出版社ゆえの安心感――が幻想であったことが明らかになった。

もはや出版社なんていらない


とはまだ言えない。
いくばくかの良心が、一部の社には残っていることを信じたい。


ただ、大出版社ですら、このような「ありえない」キャンペーンの企画が堂々とまかり通ってしまうところまで追い詰められているのは明白だ。

もはや「紙の本を売る」商売自体が、とても難しいことになっているのかもしれない。

僕自身は、ネットに救われて、今こうして、拙文を発表できている。
そもそも作家? としてのデビューもネット(ゲイサイト)だし、BLゲームのシナリオ担当を経て、現在も電子書籍オンリーで自作を販売している。

どんなに売れなくとも、今後もネットで作品を発表し続けることはできるのだ。

だから、筆を折る理由はない。今のところは。
自分の心持ち次第で、書き続けることはできる。


それで生活できるか、となると、疑問符がつくところだが……。

とにもかくにも、今回の件は、「大出版社のベストセラー作家となれば安泰というわけではなく、一方で個人販売の小説書きにもチャンスはある」という教訓となった。

――と、さんざん大出版社をディスれるのは、おそらく今後ともそこからは本が出ない(出せない)からである。

が、万一、

万万が一


本が出ることになっちゃったりしたら


喜々として
宣伝ツイートを繰り返すだろう。


そんな僕です。


【確認】
私には生まれつき節操がありません。

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