見出し画像

金利と経済を読み解く③ -EU-

金利シリーズの第三弾はEU(と英国)に関して、勉強します。

本日の内容
1. そもそもEUとは
2. EU経済圏の金利
3. EU政策金利の歴史
4. 英国を取り巻く現状と今後のEU経済

1. そもそもEUとは
まずはEUを復習します。
EUはEuropean Union(ヨーロッパ連合)の略で、1993年に発足した世界最大の共同経済圏である。

細かい歴史は下記の通り

(Wikipediaより転載)

1950年頃から「ヨーロッパ同士、協力して経済発展を進めよう」と話題になり、それが

1965年
ECSC(欧州石炭鉄鋼共同体)
EEC(欧州経済共同体)
Euratom(欧州原子力共同体)

   ↓    
1967年 EC(European Communities:欧州共同体)
   ↓
1993年 EU発足
という歴史を辿り、加盟国は2019年4月現在28ヶ国です。

(Wikipediaより転載)

初めは、石炭や鉄鋼の関税を無くすために作られた共同体でしたが、現在は共通通貨であるユーロを発行し、パスポートや税関チェックを廃止し、EU加盟国内のヒト・モノ・カネの移動をスムーズになっています。

EUのGDPはアメリカに少し届かない規模で、2018年IMF統計では18兆750億ドル、世界全体の22%を占める規模でした(2018年 IMF)。つまり世界第2位の経済規模を誇ります。


(https://ecodb.net/ranking/group/XD/imf_ngdpd.htmlより)

EUの問題点としては豊かな国(ドイツ、フランス、イギリスなど)と貧しい国(ギリシャ、スペインなどは経済破綻寸前・・・)の貧富の差が激しく、豊かな国は金銭的負担や難民、労働者受け入れなどを背負わねばなりません。この辺りがイギリスのEU離脱問題の核となっています。

ここまでのまとめ
EUは28ヶ国からなる世界第2位の経済圏
イギリス離脱問題が正に現在進行形で起きている


2. EU経済圏の金利

さて金利シリーズなので、EUの金利に関してまとめていきます。

EUの金利は、ECB; European Central Bank(欧州中央銀行)が政策金利として理事会が6週間毎(毎月第一木曜日)に決定します(理事会自体は月2回)。ECBは傘下にEU加盟国の中央銀行を従えます。理事会は総裁、副総裁、4名の常任理事、19カ国の中銀のうち輪番による15の中銀総裁の多数決で決定する。

ECB総裁は、マリオ・ドラギ総裁です(2019年4月現在)。

(Mario Draghi氏)

ECBは物価安定の指標である消費者物価指数(HICP指数)が前年比2%未満またはその前後になるように、金融政策として①公開市場操作②常設ファシリティ③最低準備預金制度の3つを実施します。HICP指数は詳しく後述します。

①公開市場操作(オペレーション)は最も重要な政策で、国債などの債権を売買することで、金融市場に流通する通貨量や金利をコントロールします。さらに政策主要金利主要リファイナンス・オペ金利)を決定し、それに基づきEU加盟国の中央銀行はその国の民間金融機関との貸し借りの際の金利を決定します。

②常設ファシリティでは、各国の中央銀行と金融機関との間での短期的な貸付、預金の金利をそれぞれ制定し、急激な金利変動を抑制します。

③最低準備預金制度は、民間金融機関が保有する預金の一定比率以上を中央銀行に預金させる制度で、市場の通貨量の調整を行う制度です。

ここまでのまとめ
・ECBは政策金利などを制定する
・ECBは公開操作常設ファシリティ最低準備預金制度などで市場に流通する通貨量をコントロールする

3. EU政策金利の歴史と今後
EUの物価安定はHICP指数が2%前後に保てているかどうか、で図ります。HICP指数とは前回調査時より物価が何%増加(減少)したかを表す統計です。「HICP指数が+2%」は物価が緩やか(=安定的)に上昇し、経済成長も得られている、と考えられる水準です。リーマンショック後のHICP指数は下記の通り。

(https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/201812/201812q.pdfより)

リーマンショック以降、HICP指数が2%を下回る(=物価が不安定)期間が長く、ECBは政策金利を1〜1.5%から徐々に政策金利を下げ、各国国債などの買い入れを行い、市場通貨量を増やし、消費を促しました。

ようやく2017年頃にHICP指数も目標値に達し、ECBの積極的介入姿勢は落ち着きを得ました。

現在までEU政策金利は0.0%のままとなっており(2019年夏までは確定的とされる)、ECBは緩和的な金融状況を保つ姿勢を示している。

2019年1月のECB理事会でドラギ総裁は「2020年(半ば)頃に利上げが開始されるかもしれない」ことを言及している。また同時に「経済成長は伺えるものの、軟調化している」ことも明言した。

ここまでのまとめ
・政策金利はリーマンショックの金融緩和政策で下がり続け、現在は0.0%
・EU経済も(米国など同様)成長認めるも、雲行きが怪しい
・政策金利は2020年半ば頃から上昇に転ずる可能性が割と高い

結局のところ、EUもアメリカも
経済成長最中だが、陰りがみえてきている
政策金利は引き上げられる方針
と同じ方向を向いています。

今後の英国EU離脱問題、中国経済の停滞、日米貿易戦争などの問題にも注視したいところです。

おわり

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?