正当な対価の交換と対等な立場の構築

撮影現場などでフォトグラファーをサポートする人たちは通常「アシスタント」と呼ばれると思いますが、ぼくは「お手伝いいただける方」という回りくどい表現を使うようにしています。ここではその考えについて書いてみます。

対等な立場になりたい

ぼくは普段から直属の「アシスタント」をつけていません。そういう時期もありましたが、おそらく今後はありません。なにより「アシスタント」と師弟関係を結びたいわけではないし、憧れのような感情だけでお仕事に来ていただきたくないと思っています。探しているのは、お手伝いいただける対等な立場の方なのです。

仕事の内容は実質「アシスタント」と同じ部分はあります。でも、そういう表現はできるだけ使わないようにしています。その語感が持っている上下関係の雰囲気にどうもしっくりこないのです。気持ちの問題かもしれませんが、ぼくのなかではとても大切なことなのです。

月に数回程度「アシスタント」希望のご連絡をいただきます。その気持ちはたいへんありがたいのですが、

刺激を受けたい
勉強させてほしい
ステップアップしたい

というような言葉が前面にでていることが多いです。とくに学生さんからのお便りにこの表現が顕著な印象があります。もちろん熱心なお気持ちの表出であるとは理解していますが、ぼくがお願いしているのは「実務的なサポート」です。そのお仕事の正当な対価としてギャランティをご用意しているのです。

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正当な対価との交換

これが会社のような組織であれば話はまた違うとは思うのですが(もちろん後進の教育に熱心な個人もおられます)、ぼくは来ていただく方の勉強のためやステップアップのためにお金をお支払いするわけではありません。お願いしているのは勉強したり刺激をうけてもらうことではないのです。ましてやその人がステップアップするために自分を踏み台として差し出せるほどの関係性もありません。そうしたいと思える人はいますが、それはぼくが決めることなのです。

もちろん結果としてそのような無形の何か(技術、知識、コネクション、インスピレーションなど)を得てもらうことはあるかもしれません。そうならぼくも幸せなことだと思います。しかし、それを求めることが目的である(のが前面にでている)方にお仕事をお願いする可能性はとても低いのです。それは労働である以前に依存なのではないでしょうか。

ぼくがお仕事をお願いするときに知りたいのは、

何ができるのか
その根拠の提示

になります。根拠とは作品だったり経歴だったり、それを元に想像できる働きの対価と交換できることです。そう言われると実績や経験がないと務まらないと思われるかもしれませんが、そうとは言い切れません。

現場での立ち回り方や、気遣い、写真を撮るセンスなんかが活きるかもしれません。それは特別この業界にいなくても身につけることができるはずです。必ずしも高い技術を持っている必要はないのです。「できること」と「対価」を交換する関係になりたいのです。

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ボランティアもインターンもありません

もっとも困惑してしまうのが「なんでもやります。お金はいらないので一生懸命やります。」と言われてしまうことです。確かにそのような表現は人間性を知るうえで必要ではあります。熱意は理解できますし、逆にある程度なければ本人がしんどくなると思います。しかし、それ「だけ」ではお仕事をお願いすることはできません。

ゆえに、ぼくがお願いするお手伝いにはボランティアやインターンはありません。「100%対価の発生するお仕事」になります。ぼくの現場においては、いわゆる世に言う「やりがい搾取」はもっとも排除されるべきものなのです。どちらかが一方的に求められることがない、依存し合わない、ゆえに対等な関係なのです。そこに上下の関係はありません。

個人的には、労働とは本来それだけで生活できる対価を得られるべきだと考えています。労働のために別の労働(や借金)をしなければいけない状況をなくすことができたらどんなにいいだろうなあと思います。少なくともぼくがお願いするお仕事に関してはそうしたいのです。

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長くなりましたが以上が、対等な立場でお手伝いいただくと表現する理由です。もしかしたら割り切った関係のようにも聞こえるかもしれませんが、まずは対等な状況をつくることが大切で、そのうえで人間的な交流ももちろんあるので誤解しないでいただけると幸いです。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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(↑いつもお世話になっているみなさん)

<備考>
ちなみにぼくのお手伝いの日当は、実働8時間の場合「3万円(税別+必要経費)」で統一しています。それより時間が短い場合や長期に渡る場合はその都度計算し直します。これはどんな方にお願いするときも同じです。おそらく業界の「アシスタント業務」の相場より高いはずです・・・

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