映画を観た記録99 2023年9月16日  イ・ジュンイク『金子文子と朴烈』

Amazon Prime Videoでイ・ジュンイク『金子文子と朴烈』を観る。

本作品の素晴らしさは、金子文子を演じた女優の笑顔にある。危機的な状態においても、天真爛漫なその笑顔が悲壮な深刻な物語をきゅんとさせてしまう。本作品でわかるのは金子文子は、その生い立ちが、刑務所官僚の役人でさえ、読んでしまうような悲惨さなのであったのだ。このことからわかるのは、戦前、絶対的天皇制支配下日本において、社会主義者、またはアナキストになるということは現在のような知的な意匠ではない。貧困者のリアルな究極のオプションなのだ。それにしても金子文子は字さえ両親から教えてくれなかったようだ。その彼女が1000ページもの自伝を独房で書き切ったのだ。それが「表現の自由」なのである。

本作品でわかったのは、関東大震災朝鮮人虐殺は、何も日本人が集団パニックになったということではなく、内務大臣・水野錬太郎の計画なのだ。大日本帝国政府が暴徒鎮圧を名目に、戒厳令を敷くその名目が「朝鮮人が井戸に毒を投げた」である。

大日本帝国政府が不逞朝鮮人が反乱を起こしかねない、その背後に朴烈がいる、というストーリーで日本民衆を騙したのである。

そして、大日本帝国政府の権力者たちは、天皇制のもと右往左往させられていることが本作品で痛烈に描かれる。

本作品は関東大震災とその余波を正しく描いた映画としてリスペクトされなければならない。

大傑作である。

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