ひれかつ

四十代の男、都内に勤めるサラリーマン。結婚20年目に訪れる危機。

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四十代の男、都内に勤めるサラリーマン。結婚20年目に訪れる危機。

マガジン

  • サスペンス

    実際にあった恐ろしい体験

  • 妄想集

    中年男の妄想集

  • 医療ドキュメンタリー

  • 夫婦間の緊張の瞬間

    中高年夫婦の間に訪れる緊張状態の数々。 45歳のオジサンの夫婦間に起こった実話。

最近の記事

新宿の片隅で

【新宿の片隅で】 女性に導かれるまま中に入ると、そこは薄暗く小さな部屋だった。大きさにして3畳間程度だろうか。閉塞感が苦手だったが、これから行うことを考えれば必要十分な大きさなのかと納得した。 目が暗闇に慣れてくると、部屋の中には幾つかの調度品が見えてきた。 部屋の右半分はベッドで占められていた。シーツのみが掛けられた簡素で硬そうなベッドだ。ベッドの横にはタオルが山積みにされていた。使途不明だが「握り」のついた器具や、液状のモノを入れた容器も見えた。それらの調度品は、あ

    • 午前3時の警官来訪(最終回)

      警官が我が家を訪問してきた後、興奮と不安で眠ることができなかった。この不安を解消する解決策は、訪問者が名乗っていた「組織」を問い質すことしかない。 私は同じ日、陽が高くなってきた8時頃に、千葉西警察署へ連絡した。この時初めて、警察署の電話番号は下4桁が0110であることを知った。

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      • 電車の中の恐怖

        通勤や通学で利用する列車の中で恐ろしい経験をすることがあると思う。私の経験を共有しよう。 ==========第一話========== 金曜日の終電間際の列車は混んでいるものだ。その日のJR大崎駅も同じだった。 でも私は間一髪、山手線内回りの列車に飛び乗ることができた。他と違ってそのドアのところだけ、二人が立てるくらいのスペースが空いていたのだ。その隙間に、ドアが閉まる寸前に滑り込むことができた。 しかし乗り込んでみると、あることに気づいた。 もう一人分空いていると

        • 午前3時の警官来訪

          昨夜、午前3時過ぎに自宅玄関のチャイムが鳴った。深く寝入っていたので、チャイムの音を聞いた直後は、何が起こったのか状況を理解できなかった。部屋の時計は3時を回っていたし、そんな時間の来客は尋常ではない。自分が寝ぼけているのか、夢なのかも判然としなかった。 インターホンへ向かって歩いていると、徐々に思考が回復してきた。アドレナリンが出てきたのか頭が冴えてきて、次のような想定を行った。 〈私の深夜の想定1〉 ①深夜に家を抜け出したものの、鍵を忘れた息子 ②部屋番号を間違えた

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        記事

          レジでの妄想

          某所の屋台にて買い物した時に、釣り銭が少ないというトラブルがあった。 詳細を言うと、700円のものを購入するのに、1,200円を差し出したら、300円しかお釣りが返ってこなかったというものだ。 店員の女性にそのことを指摘すると、彼女は私の差し出した手を引き寄せて、そっと500円を置いた。 その時だ。 彼女は(柏餅の葉が餅を包むように)両手で私の手を上下からは挟み込んだ。その状態のまま、私の目を真直ぐに見つめつつ「ごめんなさいね。」と言う。まるで彼氏に「ねえ、今度の週末

          レジでの妄想

          老眼の妄想

          老眼は始まると進行が速いと聞いていたが、自分の身にも今、当該事象が起きている。 会社のPCに向かう時は、ほぼ常時、老眼鏡が必要となってしまった。逆に頑張って裸眼でスマホを見てた後は、しばらく周りがよく見えない。 今後もし仮に、誰かと?キス?せざるをえない機会が訪れることがあれば、何らかの対策が必要だろう。 その都度(そういった機会が複数回あればということだが)、老眼鏡をカバンから取り出すか、裸眼のままで過去の僅かな経験と直感をフル動員して対処するしかないだろう。 面倒

          老眼の妄想

          飛行機内の妄想

          今日、飛行機に乗った。 私はいつも、飲み物のサービスにはスープを頼むことにしている。疲れた体に染み込む感じが好きなのだ。 さて、今日のキャビンアテンダントのことだが、そのスープの入った紙コップを私に渡す時に、こう言った。 「熱々ですので、気をつけください。」 彼女は真っ直ぐに私を見て、事務的ではない笑顔を見せた。まるで付き合い始めたばかりのカップルが「はい、あ~んして。」って言う時のような、そんな笑顔で。 私は呆気にとられた。きっと人見知りの子供が遠くから他人を観察

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          浮気チェックリストの恐怖

          【夫婦間の緊張状態:ケース7】 小学校6年生の娘が突然「パパ浮気してるでしょう?」と聞いてきたのには正直、面食らった。 常日頃無防備な私は、娘からそんな質問をされた時の備えはしていなかった。 特に、その日は疲れていて、早めに寝ようと布団に入ったのだが、そんな最高のリラックスタイムに、最高に緊張する質問をされたものだから、たまらない。恐らく私は、戦国時代に奇襲をくらった雑兵のような顔をしていたに違いない。娘からの質問ではあったが、娘の背後に嫁がいて、聞き耳を立てているのも位

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          娘と抹茶ムースと緑色のシミ

          【夫婦間の緊張状態:ケース24】 (軽犯罪で捕らえられた容疑者が警察に余罪を追求される時には、こんな気持ちになるのではなかろうかという喩え話) クリスマスイヴを目前に控えた先週末のこと、娘と二人だけで(ヨメや息子には秘密で)スイーツを食べた。 といってもササヤカなもので、コンビニで売ってるスイーツを、車の中で食べただけなんだけど。 でも、ちょいと失敗した。 帰宅して気づいたのだが、私は抹茶ムースを暗い車中でこぼしてしまったようだ。恥ずかしい話だが、セーターの胸元に緑色

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          MRI体験記

          曇り空、冷たい雨。 僕は閉所恐怖症なので、MRI 検査が恐い。とはいえ、エレベーターや飛行機は乗れるので、軽度なんだろうと思う。駄目なのは、よく映画などで、車のトランクに閉じ込められたりするシーン。あれは苦手。だから俳優にはならなかった。 今日のこの日に備えて、ずっと鍛練を積み重ねてきた。 例えば風呂場では浴槽に深く浸かり蓋を閉めて中で耐えた。かなり、のぼせたけど。 リビングでは昔使っていた「ちゃぶ台」を引っ張り出してきて、その下に頭を突っ込んで音楽を聴いた。狭いリビング

          あなたの過去を知る女(最終回)

          時計は既に0時を回っていた。 緊迫した相撲の立会い前のように、睨み合いが続いた。相互に相手の出方を窺っていた。

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          あなたの過去を知る女(最終回)

          あなたの過去を知る女

          この話は、既婚の男性でないと理解しにくいかもしれない。 「今日ね、あなたのこと知ってるっていう女性(ひと)に話しかけられたの。」 夕食の最中、嫁から言われた一言に私は一瞬、凍りついてしまった。 ついさっきまで、最寄り駅から自宅までの間、流行りのテレビ番組のことを考えていた。会社同僚の間でも話題になっているドラマだ。主人公の決め台詞が、会社でも流行っている。録画してあり、夕飯を食べながら観るのを楽しみにしていた。 帰宅後すぐ、夕食を食べ始めた。子供達は既に眠りに付いてい

          あなたの過去を知る女