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STAGE

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42歳のごく平凡なサラリーマン蓮野純。 不惑の40代にして平穏無事なマンネリ生活に疑問を覚えてしまう。 そんなある日、高校の同窓会で高校時代の悪友であり、当時のバンド仲間だっ… もっと読む
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記事一覧

44. Stage 2013 Part3

さて、古ぼけた、いやいや由緒ある教会で行われている、美空の結婚式は終盤へとさしかかっていた。
参列者は美空の両親と、新郎のお母さんと娘さんと俺達だけの質素な式だ。
式の前に紹介された新郎の番秀人さんは元IT会社の社長って事で、やせ形で弁が立つスーツの似合う、浅黒い顔はしているがよほどガテン系には見えない男性だった。
美空と娘さんに話しかけるその言葉には、ある種の熱と優しさが籠もっているように感じた

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43. Stage 2013 Part2

後日、祥二に電話で美空の結婚の報告と、結婚式での演奏の件を相談すると
「へー、良いんじゃない。俺達も佐川さんにはいつも世話になってるし。」
と、賛成してくれた。
「でも、考えてみると、俺達のレパートリーに結婚式に相応しいような曲が無いんだよな。」
そう、そこが一番の問題。
俺がそう言うと祥二がちょっと考えてから
「・・・そうだねえ、折角だから純ちゃんと陽子ちゃんで曲を作ってプレゼントしてあげたら?

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42. Stage 2013 Part1

「ねえ、ここはこんな感じでどうかしら?」陽子がキーボードで何小節か奏でる。「うん、良いんじゃないか。」俺が頷くと陽子が嬉しそうに「じゃあ、次はこんな感じかしら?」調子づいてキーボードを叩く。「・・・いや、俺そんな急に高い声出せねえよ。機械じゃ無いんだから。」「アハハ、そうよね。・・・もうちょっと低いところね。」ある何でも無い休日、俺と陽子は初めて夫婦での合作の曲を作ろうと部屋にこもっている。何故こ

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41. Spring Power Since 1945 Part2

その数年後、春男は高校に入学しました。

入学式の朝、春男が一人で校門をくぐり、校舎の方へ歩いていると「おい、春男!」後ろから呼ぶ野太い声。

春男が振り返ると一人の巨漢が立ちはだかっていました。

「お前、力太郎かよ?・・・お前もこの学校に入学してたのか?」

「ああ、久しぶりだな。」力太郎はにやりと笑って拳を構え「そう言えばよ、小学校の時の決着がまだついてねえな。どっちが強いか今のうち決めとく

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40. Spring Power Since 1945 Part1

時は変わって、第二次世界大戦終戦後。

敗戦と言う暗闇の中で、人々が焼け野原になった日本を一筋の光に向かって逞しく生きていた、そんな熱い時代のお話です。

ある町の境の空き地で、二つの小学生のグループがにらみ合い、対峙しています。

「おい!!春男はいるか!?」一方の少年グループの中の、一際体の大きな一人の少年が進み出て、野太い大きな声で怒鳴りました。

彼の名は須田力太郎、大人顔負けの怪力自慢の

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39. Welcome to the Festival 2013

さて、あっという間に半年が経ってとうとう祥二の商店街と隣町の商店街の合同フェス開催日となった。
俺が10代の頃、親父が歳を取ると時間が経つのが早くなると言っていたのを聞いて、そんな馬鹿なことがあるか、小学校の6年間なんて滅茶苦茶永かったし、歳を取ったって1秒の長さが変わるわけでもあるまいしと思ってたが、40を過ぎて実感している。
歳を取ると時間が経つのは早くなる!!マジで。
実行委員である祥二は準

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38. Piano Woman 2013

さて、変哲も無いとある日、家に帰ると陽子が難しい顔をして腕を組んでリビングに座っていた。

俺が帰ったことに気づかないようだ。

「・・・ただいま。」

俺が声を掛けると、ハッと顔をこちらに向けて

「あ、おかえりなさい。・・・ごめんなさい、気がつかなくて。」

その手には封筒と便せんのような物が。

「いや、それは良いけど。・・・どうした?」

すると、手にした封筒の中からチケットのような物を取

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37.  Rest in peace 2013

何でも無いド平日に、その訃報は舞い込んだ。

亡くなったのは同業他社の、俺より3歳年上の営業マン。

年は俺より上だが、中途で車のディーラーから転職して来たってんで、年下の俺にも腰の低い物腰の柔らかな人だった。

仕事の話以外では、よく車の話なんかしたりしてたよな。

確か一昨年癌で入院したって話は聞いてその後復帰はしていたが、完治にまでは到らなかったんだろうな。

世間的にはまだまだ死ぬには早い

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36. Girl Friends 1990

「・・・ねえ?」

ある休日、リビングでくつろぎつつ雑誌を読んでいると、テレビを観ていた陽子が振り返り、俺に声を掛ける。

「・・・ん?」

漫画から目を離し陽子の方を見やると、陽子がテレビを指さしニンマリしながら

「また今年も、成人式でおバカちゃん達が暴れたらしくて、ニュースになってるわよ。」

テレビを見ると派手な格好をした新成人達が大騒ぎして、式を滅茶苦茶にしてる様子が映し出されてる。

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35. Jumble Jungle 2013

さて、祥二の自宅兼店舗がある商店街と、その隣町の商店街との合同フェスが半年後開催される事になった。

まあ、そこまでの話なら俺なんかは全く関わりにならない別世界の話だったんだが、その場でバンドのライブを開催しようって案を祥二がつい口走り、俺達The Namelessが演奏するハメになった。

ただ、俺達だけじゃ全くもって心許ないので、顔見知りになったバンドとかSTUDIO AIRのオーナーの知り合

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34. Nxt Live 2013

商店街の会合が終わり、俺と蕪島君、田穴さんの三人が並んで家路に着いた。

田穴さんが

「ねえ針須君、良かったの?勝手にあんな事言っちゃって?」

それは隣町との合同フェスでの催し物の提案を求められて、返答したことについての問いだろう。

俺が頭をかきながら

「ハハハ・・・、まあ一応活動内容については、みんなから任されてるから、大丈夫だと思うよ。・・・多分ね。」

蕪島君が、笑いながら

「でも

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33. Blazing Transfer Student 1984 Part2

今日から、僕のクラスにやって来た転校生。

僕はその転校生の顔を見た瞬間

「・・・!!!」

・・・彼は昨日の!?公園で倒れた彼!?

彼はくるっと黒板の方を向き、おもむろにチョークを掴むと黒板に

「松ヶ谷 徹」

と大きな下手くそな字で書き殴り、僕らの方に再度振り返り親指を立て

「おうっ!!お前らよろしくなっ!!」

と、言い放ちました。

クラス中がヤバい奴が転校して来たと思ったのか、水

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32. Blazing Transfer Student 1984 Part1

僕の名前は針須祥二、13歳の中学1年生です。

家はパン屋を営んでます、僕も将来継ぐ事になるのかな?

僕はクラスのみんなより体が小さくて、気が小さい事が悩みの種です。

僕のお父さんは背が高いんですけど、お母さんがとっても小さいんです。

それに、お父さんは昔この町内のガキ大将だったらしいんですよね。

きっと僕はお父さんの身体的な特徴は全然受け継がずに、お母さんに似ちゃったんですね。

小学生

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31. Before After 2013

俺達が満場の拍手を背に、あふれる高揚感を必死に抑えながらステージを下りると、控え室にDEATH BOYSが待機していた。

確か俺達の次の次ぐらいの順番だったな。

汗を拭きながら祥二が心配そうにたずねる。

「ベースの菱安君は来たのかい?」

アカレンジャーの雷堂が

「まだ来ないんです。連絡も無いし・・・クソ、あいつ一体どうしちまったんだよ!」

他のメンバーも狼狽する。

普段は生意気な態度

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