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世界”物探”遺産の旅#15 海上自衛隊・えびの送信所

えびの送信所は、宮崎県えびの市に所在する海上自衛隊の超長波送信所です。無線通信は電波を使って行いますが、海中深くまでは電波は届きません。ただし、周波数の低い電波を使うと、海中の浅い深度(10~40m)までなら通信が可能です。えびの送信所は、海に潜る潜水艦向けの超長波送信施設として建設されました。当初は福岡県での建設が検討されましたが、最終的にはえびの市に建設されました。

稼働中の超長波通信施設としては国内唯一のもので、使用周波数は22.2kHzで、出力は200kWです。超長波(VLF:Very Low Frequency)とは、3 - 30kHzの周波数の電波で、波長は10 - 100kmです。このように波長がとても長いので、アンテナも巨大で高さ約160mから約270mの4基2列、計8基の鉄塔間にアンテナワイヤーをめぐらした構造になっています。これは日本で最大のアンテナとなっています。

オリジナルの用途は、海上自衛隊の潜水艦通信ですが、実は物理探査に使うことができます。地磁気地電流法(MT法)は、自然の電磁場を使う方法ですが、VLF送信所から十分離れたところであれば、自然の電磁波と同等に取り扱うことが可能です。また、自然由来の電磁波と異なり、VLF波の周波数は決まっているため、測定上のメリットもあります。このような探査法をVLF-MT法と呼びます。VLF-MT法は、比較的浅部のマッピング調査として使われます。


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