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数値計算の境界条件について

コンピュータの進歩に伴って、有限要素法や有限差分法を使った数値シミュレーションが、比較的簡単にできるようになりました。私が学生の頃は、2次元のシミュレーションを”大型計算機センター”でやっていました。たぶん、この頃の大型計算機よりも、今のパソコンの方がメモリも多いし、計算速度もかなり速いと思います。

数値シミュレーションも、複雑な3次元形状が扱えるようになり、昔は一部の人しかできなかった計算が、パソコン上でもできるようになりました。いまでも、有限要素法(FEM) や有限差分法(FDM)は、シミュレーションの主要な手法です。どちらの方法も、連続体を離散的な格子やブロックに分割するため、モデル作りに一長一短があります。

有限差分法の格子分割は、基本的には直交軸が基本なので、複雑な形状のモデルは苦手です。それに対して、有限要素法は様々な形の要素が利用できるので、複雑な形状にも対応できます。物理探査の分野でも、山岳地形などを考慮しないといけない場合は、有限要素法が威力を発揮します。

前置きが長くなりましたが、数値シミュレーションを実施する場合に、とても重要なのが”境界条件”です。シミュレーションでは、モデル領域とその外側の関係が必要になります。それが、境界条件です。

最も単純は境界条件は、境界を一定の値に固定する方法です。これはディリクレ型境界条件と呼ばれています。また、電気探査などでは地下と空気の境界が重要になります。電流は、地下には流れますが、その上部の空気中には流れません。このような場合は、境界の電位勾配をゼロに設定することで、電流が流れない条件に設定できます。このような境界条件は、ノイマン型境界条件と言います。

その他にも、ディリクレ型とノイマン型の折衷であるロバン型境界条件や、波動場の計算などの場合に使われる周期境界条件などがあります。境界条件が少し変わるだけで、計算結果が大きく変わる場合もあるので、境界条件は本当に重要です。

学会などでシミュレーション結果の質問をする時に、「ところで、この場合の境界条件は?」と聞けば、シミュレーションに詳しい人のような印象を発表者に植え付けることができます。ただし、知ったかぶりには注意して下さい。

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