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太陽光発電によるオーディオの音質改善

はじめに 

「ステレオ」などのオーディオ専門誌には、「アンプとコンセントの間のケーブルを太くて剛性の高いものにしたら音質が格段に改善した」というような記事をよく見かける。ケーブルの太さや剛性について最初期に声を上げたのは私の知っている限りでは長岡鉄男氏ではないかと思う。筆者も、ケーブルの質がある程度音質に影響を与える可能性については否定しないし、むしろ結構こだわってもいる。実は筆者も長岡式のバックロードホーンスピーカーの愛用者なのである。

 しかし、コンセントとオーディオ装置の間のケーブルだけいくら太く強いものを使っても、コンセントの向こう側はどうなっているのか、という話をオーディオ評論家なる人が論じているのをあまり見たことがない。選挙で票にならないことに代議士が熱心に取り組まないのと同じで、コンセントの向こう側は普通の人には触れない領域だから、オーディオ評論家にとってもゼニにならない領域なのが理由なのだろうと言うのは下衆の勘ぐりだろうか。

太陽光発電の思わぬ効果

 筆者は10年程前から太陽電池を屋根の上に設置し発電してきた。昨今、ニュースで良く取り上げられる今年の暮れに定額買取制度の期限が終了するいわゆる「卒FIT」組にあたる。実は、10年前、太陽光発電を設置した時から、家の中で「証明するのは難しいが、なんとなく改善したような気がする」という点が2点ある。

 1点目は、太陽光発電を入れて以来、パソコンのハードディスクの内容が壊れることを経験しなくなった。最近はSSDも使用しているので、そちらのおかげもあるだろうが、とにかくパソコンが安定に動作するようになった。太陽光発電を入れる前は無停電電源装置がないと怖くてパソコンを動かせなかったが、実は無停電電源装置が寿命が来たのにここ数年更新していない。リスキーなのだが、何事も無いように安定しているので手を付けていない。

 2点目は、太陽光発電装置の導入後、我が家のオーディオ装置の音質が改善したような気がすることだ。「気がする」というのは、太陽光発電の使用/不使用を切り替えて比較してみたことがないから、「気がする」以上のことは言えないのだが、もうじきオーディオ歴50年になる自分の耳を信じて良いのであれば、確実に音質に厚みのようなものが増したと感じている。

太陽光発電による改善の理由

 果たして、太陽光発電にこのような効果が期待できるのだろうか。考えてみると、それなりに納得のいく理由付けができそうだと思われるので紹介しておく。
 我が家の発電設備はパワーコンディショナーの出力の段階で定格4.5kWの発電能力がある。冬の日中で2.5kWくらい、最も効率的に発電する5月には定格目いっぱい発電している。ところが、曇りの日で3kW弱しか発電していないような時間帯なのに瞬間的に定格の4.5kWを上回って発電することがある。その例を示す。

 私の住んでいる地域の太陽南中時刻はだいたい11時30分で、定格の4.5kWの発電は通常はその時間帯にしかできない。しかし、ここに示したように、それよりも1時間も早い時間帯、しかも当日の天気は曇りで平均的には2kWしか発電していない時間帯になぜか最大発電電力として4.73kWが記録されている。
 これは、電力会社からの供給側に瞬間的な電圧降下が発生し、我が家の太陽光発電のパワーコンディショナーが補助電源的な役割を果たして瞬間的に電圧を維持するための電力供給をしたと解釈するのが妥当な理解の仕方ではないかと思われる。

 どうやら太陽光発電システムが電力会社側と自宅内の総合的な電力供給システムのスタビライザー的な役割を果たしていると考えて良さそうである。上に示したのは、我が家から外向きの効果であるが、自宅内の電力供給にも当然同じ効果が期待できるはずである。もしそうならば、PCにとっても瞬間的な電圧降下の防止効果が期待できるし、オーディオにとっては電力供給側のインピーダンスの低下が期待でき、供給電力のレギュレーションの向上が期待できるということを意味している。しかも電源が近くにあるからレスポンスは良いはずである。
 これらのことから、太陽光発電の導入により我が家で生起した「電気代節約」以外の効果の理由は説明できるのではないかと考えている。

むすび

 近頃は、太陽光発電だけでなく、電気自動車から宅内への電力供給、蓄電池による電力の貯蔵など、宅内のAC電源のレギュレーションに関係しそうな話題はイッパイあると思うのだが、あまりオーディオ評論家の先生方の話題には上っているのをいたことがない。
 コンセントからアンプまでのケーブルの音質に及ぼす影響について眉間にしわを寄せて論じるのであれば、電力供給の大元に近いこれらの電源が音質に大きな影響を及ぼさないはずはない。先生方の頭が固い(古い)とは思いたくないが、デジタルとアナログの本質的な意味が分っていないのではないかと思われる笑止なコメントも中には見受けられる。なんと言っても人から金をとるビジネスとしてコメントしておられるプロなのだから、もう少し電力系統全体をシステム的に勉強して立派なオーディオ評論をして下さると良いと思う。


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