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「なぜ若手を育てるのは今、こんなに難しいのか」は採用に苦しむ経営者のヒント満載

NHKで取り上げられるくらい弊社も人財募集、人財育成に苦労しています。採用をしているとつい数年前までは効果的だった活動が、「今」の20代前半「若手」には全く伝わらないことが多々あります。そんな苦悩の中で出会ったリクルートワークス研究所の古屋星斗氏の本書は、なぜ「伝わらない」かをよく解説してくれています。

なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか 〝ゆるい職場〟時代の人材育成の科学

本書をよくよく理解するために各章毎のメモを作りました。本noteも気合いを入れて網羅的に書こうかとも考えました。しかし、リクルート社が持つ豊富なデータを縦横無尽に分析し、分かりやすい図表で説明されている古屋氏の文章以上解説はとてもできないので、採用に苦労している一経営者として「感想」を述べます。
本書では、前述の通り統計的分析に基づく若手の状況が説明されています。そもそも「Z世代」は存在するのか?、という問いから本書は始まります。「Z世代」には一定のイメージが持たれています。採用する側は、人手不足の中、Z世代の採用の難しさを日々痛感させられています。私自身、つい数年前まで平山建設の街づくり、地元貢献の話しをすると学生達が目を輝かせて聞いてくれていた成功体験があります。しかし、いまは全く興味を持ってもらえていません。
「Z世代」とは?という問いの答えとして、最初の章から第六章、七章まで、「今」の「若手」がいかに多極化しているかが詳述されます。レッテルを貼っては実像に迫れないと。例えば、「ガクチカ」(学生時代に力を入れてきた活動)の経験のあるなしひとつとっても同学年の学生でも二極化しているそうです。他の指標も含めて、中間層が減っているというのもこの世代の特徴だと。しかし、恐ろしいことに、統計分析によればガクチカを豊富に持ち、入社しても優秀な成績を収める人財こそ転職を常に考えているのだそうです。なぜでしょうか?
「今」の「若手」は、目先の就職活動では売り手市場であったとしても、将来のキャリアを真剣に考えれば状況に甘えてはいられないという認識があるようです。確かに隆々とやっていらっしゃる上場のお会社の方のお話しを聞いても、かなり若い世代までを対象にした早期退職を募っていたり、給与を決める等級制度の変更をしたりしています。制度が変わり、実際のマネジメント職なのか「部下なし課長、部長」なのかで同期でも百万単位で年収が変わるなど、世代交代をテーマに厳しい競争にされされていることが分かります。「窓際族」は名実ともに死語となっています。
そういう職場の現実を様々な情報ソースから認識している「若手」世代は、職場の心理学的安全性だけでは若手は職を選びません。「選べない」といっても過言ではないようです。将来に渡って自分が職業人としての価値を増やせるのか、継続的に社内で昇給していけるのか、転職せざるを得なくなった時の自分の転職価値は?等、時間軸、空間軸、人間関係軸で常に自分の「価値」が不安にされされています。こうした状況では、自分の価値の安心、「キャリア安全性」が必要だと古屋氏は主張しています。キャリア安全性を担保するには、常に転職市場を意識し、資格取得はもちろん、各種の転職価値テストや、場合によっては転職エージェントと接触してでも自分の「転職価値」を確認せざるを得ないのでしょう。
こうしたタイトル通りの「難しさ」の根本原因の解説だけでなく、本書には「今」の「若手」を育てるためのヒントが満載です。褒めるだけでなくフィードバックも行う、職場を超えた交流の機会(越境)を作る、若手は若手の管理者に育てさせるなどなど。大変蒙を啓かれました。人手不足に困窮し、採用に苦労している経営者は必読です。平山建設としても、キャリアコンサルティングの導入など、本書を教科書として「今の若手」が育てられるように努力していきます。
実は平行してリクルート社の創業メンバー、大沢武志氏の「心理学的経営」を読んでいます。「心理学的経営」を読むと、創業の頃からリクルート社は本気でデータをしっかりと取り、最新の心理学測定法、統計手法を実地で試してきた歴史が伝わります。日本のどの会社よりも早く人事・採用データのコンピューター処理をリクルート社はやっていました。古屋氏の「若手」本はまさにこの伝統の最新バージョンなのだと実感します。なぜいまリクルート社関連の本を読んでいるかはまたnoteを改めて書きます。

心理学的経営 個をあるがままに生かす

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