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AIで働くクラウド型コンタクトセンターのすごさとは?

新型コロナで変わったのは働き方だけではありません。社内リソースを効率化させる為に業務の一部を外注する傾向が出ており、BPOはコロナ禍において増収増益を果たしている数少ない業界の一つです。

一方、そんなBPOの中でコロナの打撃を受けたジャンルがあります。それはコールセンター等に代表されるお問い合わせ窓口、いわゆるコンタクトセンターの代行です。思いっきり“三密”の環境なので感染リスクも高く、2021年6月現在でも全国でクラスターが発生しているようです。

さてそんな中、クラウド型のコンタクトセンターサービスが近年注目を集めています。従来の一箇所にオペレーターを集め、自社サーバー上で構築されたシステムを使って稼働させるオンプレミス型に対し、オペレーターのリモートワークが実現できたり、クラウドだから運用コストを抑えられたりする特徴から、Withコロナにおいて益々注目を集めている業界と言えます。会社名で言うとZendeskなんかが有名ですね。

しかし世界最高のクラウド型コンタクトセンターサービスには、日本で主流のそれと大きく異なる特徴があります。AIがサービスの根幹にあるかどうか、です。もちろん既知のサービスでもチャットボット等でAIは活用されてるんですが、システムを統括する形では使われていません。本稿では、日本ではまだあまりメジャーではないAIドリブンのクラウド型コンタクトセンター、その特徴と強みについて紹介。そして後半では実際に利用イメージを見ていただこうと思います。

ちなみにクラウド型~…て長いので、以降クラウド型コンタクトセンターサービスは英語圏で使われるCCaaS(”Contact Center as a Service”)で統一させていただきます(・ω・)ノ。ちなみに読み方は『シーキャース』です。

世界最先端のCCaaSはAIをどう使っているのか?

今回参考にしたのは、CCaaS業界の大手であるNICE inContact(アメリカ)、同じく大手で日本語版もリリースされているジェネシス(イギリス)、そして先月日本語版リリースが発表されたKore.ai(アメリカ)の三社。これらはAIに強みがある点で一致しているので、各サービスに共通して見られる仕様を紹介します。

AIドリブンの着信呼自動分配装置(ACD)

いきなり聞き慣れない言葉が出て来ましたが、ACDとはコンタクトセンター内部の管理に関わるテクノロジーのこと。具体的にはオペレーターへの問い合わせの適切なアサイン(難しい問い合わせをベテランオペレーターに割り振る、着信電話番号に応じてオペレーターをグループ化する、など)や人員に応じた着信数の調整などを行うシステムです。後述のIVRと組み合わせることで、コンタクトセンターのオペレーションを最適化すると共に顧客がストレス無く課題解決できる仕組みが構築されます。

さて最先端のCCaaSのACDはAIによって最適化されています。例えば電話口でAIオペレーターが顧客の要望を聞き出すと、その課題解決にマッチしたオペレーターへ自動接続。更に後述するオムニチャネル化により、顧客データや過去のやり取り(電話以外を含む)の履歴、解決のための情報までオペレーターのダッシュボードにリアルタイム表示されます。もちろん、表示される情報は機械学習によって各顧客毎にパーソナライズされています。

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▲ACDのフローチャート(出典:NICE inContact公式動画よりキャプチャ)

例えば業界最大手の一つ、NICE inContactではこのACDのフローをドラッグ&ドロップで設計することができます(上画像)。文字小さくて見えねーよ!と言いたくなるくらい細かく指定できます。顧客の最初のエンゲージメント(各チャンネルへのコンタクト開始)からセグメントに応じた対応を事前に設定でき、各オペレーターへの導線設定から『待機中のアナウンスでは何を喋らせるか?』みたいな細かい部分まで決められる仕様です。音声およびテキストベース両方が可能です。いずれもクラウド上で同じAIを基に運用されている故、実現できる機能ですね。

ちなみにドラッグ&ドロップと書きましたが、CCaaSはこれほど複雑なCXの自動化をノーコードで達成できるのも魅力の一つ(・。・)!もちろんAPIも使えるんですが十分過ぎますね。

自動音声認識(ASR)によるIVR

IVR(自動音声電話)は『ナビダイヤルに接続します。ガイダンスに従って番号を〜…』でお馴染みのアレです。目的は言うまでもなく問い合わせの目的を分解し、適切なオペレーター(もしくは窓口)に案内して効率的なCXを提供すること。各目的に特化したオペレーターの育成も出来ます。

皆さんご存知の通り、ゆっくり喋るガイダンスを全て聞いてから番号を押すことになる、そもそも目的の窓口の番号が設定されてない、場合によっては通話代を取られるなど顧客にとってはストレスの多い手法ですが、AIドリブンのCCaaSはそんなCXから開放してくれます。

CCaaSではナビダイヤルの代わりに自然言語処理(NLP)を備えたAIが顧客の音声を認識・分析、番号をいちいち押さなくても口頭のやり取りだけで希望する窓口まで繋いでくれるんです。これにより大幅な通話時間の削減が見込まれ、顧客にとってもストレス(と無駄な通話代)なく問い合わせできる訳ですね。

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▲AIベースのCCaaS導入でIVRの稼働時間が半減(出典:ジェネシス公式動画よりキャプチャ)

例えばジェネシスを導入したあるフードデリバリーサービスでは、IVRの稼働時間が半減+顧客の待ち時間が平均15-20分→30秒未満まで激減したというデータが出ています。

『でも結局人間のオペレーターに繋ぐんでしょ?』と思うとこですが、人間オペレーターの稼働数も50%削減されたケースもあるそうです。というのも、ある程度の問合せや要望ならAIとの会話で解決しちゃうんですね。念のためですがテキストベースではなく電話も含めた話です。そのACDもAIで最適化されているから、コンタクトセンター運営側としても少ない人件費と通話代で高い効率性を達成できることになります。

このACDとIVRについては、後ほど紹介するKore.aiの事例でもご紹介します。

窓口のオムニチャネル化

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CCaaSでは電話やメールに限らず、SMSや各種メッセンジャーアプリ、チャットボットからの問い合わせまで受け付けることができます。クラウド型だから実装も楽、必要なくなったチャンネルの閉鎖も簡単に実現可能です。

しかもクラウド型なので、すべてのチャンネルがシームレスに繋がり、データも常時連携されています。例えば『SMSで問い合わせた内容について、電話で深く知りたい』『チャットボットで送った情報をSkypeで確認し、その内容をオペレーターと話したい』みたいに、チャンネル間でのやり取りの引継ぎ・再開が、時間を置かずできるようになります。一個人が一サービスに色んなチャンネルでコンタクトを取ることはあまり無いと思いますが、とはいえ状況によっては重宝しそうですね。

AIが実装されていると、このオムニチャネルそれぞれのエンゲージメントがパーソナライズされることになります。CCaaSのオリジナルボットは勿論、WhatsAppとかLineみたいなサードパーティー制も同様です。

観測されたデータの分析とパーソナライズ

オムニチャネル最大の長所かと思いますが、顧客があらゆるチャンネルで起こした様々なエンゲージメントの履歴すべてが残り、しかも一元化することができるがCCaaSの強み。利用チャンネルの頻度や傾向、通話時間と会話の内容、各オペレーターのパフォーマンス、顧客からのフィードバックなどコンタクトセンターのあらゆるフェイズがデータとして集計され、ダッシュボードで閲覧することが可能になります。加えてNLP搭載のCCaaSは音声ベースのデータまで定量化できること、分析した上での最適化やパーソナライズまで自動でやってくれちゃうのが凄いところです。

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(出典:NICE inContact公式動画より)

上画像はNICE inContactのデータインサイト。Google Analyticsぽいと思ってしまったんですが、GAやGTMがサイト上の全エンゲージメントを視覚化できるように、顧客-オペレーターそして自動化されたシステムのパフォーマンスをこんな感じで把握することが可能です。CXの改善もそうですが、顧客のナーチャリングやニーズの再確認にも繋がりそうですね。間接的にはMAツールとしても見れるかも知れません。

日本上陸のCCaaS『Kore.ai』

さて今年の5月中旬ごろ、アメリカのCCaaS企業Kore.aiが提供するサービス・SmartAssistの日本語版ローンチが発表されたので、最後に簡単に紹介しようと思います。

対話型AIが強みのサービス

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▲SmartAssistのイメージ画像(出典:公式HPより)

SmartAssistはとりわけ対話型AIを活用したCCaaSです。30以上のチャンネルが用意されており、いずれもデータや顧客とのやり取りがシームレスに繋がる典型的なAI×CCaaSとなっています。

具体的にどんな対話内容になるのか

以下はSmartAssistの公式動画にて紹介されている銀行の事例です。顧客が銀行に電話をかけ、残高の確認やその他のやり取りをするところが実際の音声付きで見ることが出来ます。左側の男性が顧客、右がAIオペレーターです(以下、本節の画像はすべてSmartAssistant公式動画のキャプチャ)。

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まず、通話の最初の段階で本人の認証コード入力を求められます。ここは直接番号を入力しますが、

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以降は『口座の残高はいくら?』という質問に対して即座に回答したり、

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更に『電気代を口座振替で支払いたい』みたいな高度な手続きもAIとの対話だけで出来ちゃいます。企業名など固有名詞もしっかり認識してくれるんですね。ここまでできると確かにオペレーターの業務が大幅に削減出来そうです。

一つ気になるのは認証のシンプルさでしょうか(;^ω^)4桁の番号を入力するだけで残高のやり取りまで出来てしまうのがセキュリティ的にちょっと心配ですね。ただこれはアメリカのケースなので、日本の銀行ではもう少し厳密な認証になるかも知れません(生体認証で出来ないかな…)

CCaaSの今後―AIの精度は?

いかがでしたか?日本どころか世界でもあまり浸透していないCCaaSという言葉、大体理解いただけたのではないでしょうか。人的コスト削減、データの一元化、顧客との接点拡大、マネジメントの効率化といいとこ尽くめですが、AIドリブンということで気になるのはAI(特に音声認識)の精度。IVRのところで出したフードデリバリーサービスでは、約90%程度の音声認識率が数値として出ています。しかしこれは英語圏のいち事例の話、日本語の精度はもう少し下がるかな…?

思えばAIボットに質問してもなかなか解決せず、結局電話して聞くみたいなこともありますよね。上陸したてのKore.ai、数カ月くらいしたら評判が出回るかも知れません。

とはいえ、サービスによっては電話もメールも受け付けずチャットボットしか置いていない企業もあるカスタマーセンター。様々なチャンネルでの問合せと迅速な解決を実現してくれるCCaaSは、日本でも導入されていくでしょう。

参照サイト

https://www.genesys.com/
https://www.niceincontact.com/
https://kore.ai/
https://link.medium.com/KLONmQO2ygb
https://mytechdecisions.com/latest-news/kore-ai-launches-smartassist-in-japanese-to-deliver-ai-powered-call-center-automation/
https://www.cloud-contactcenter.jp/blog/what-is-cloud-contact-center.html


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