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1.お金は太古の時代から存在した お金の歴史


太古のお金


皆さんのご年齢が分からないので何とも言えないのですが、私がまだ幼い子供時代だった1970年代に「はじめ人間ギャートルズ」という、古代に生きる人間たちを面白おかしく描いたギャグアニメ番組が放映されていました。
ボクはこのアニメを夢中になって観ていました。

このアニメによく出てきたのが、石でできた、真ん中に穴の開いたドーナツ型の大きな物体です。
今考えてみると、まさしくあれがお金だったのです。

あの頃の時代のお金が、現在私が住んでいる、福岡県にもあるのを知っていますか?
場所は、福岡市早良区にある、百道中央公園内に設置されています。
なんでもこのお金は、ミクロネシア連邦のヤップ島で実際にお金として使われていた、世界最大・最古の貨幣だとされる本物のお金です。

中央に穴が開いているのは丸太を差しこんで運ぶためで、大きなものは不動産の売買や祝い事などで使われました。
手をいっぱいに広げても、抱えることはできないほど大きなお金を、木の棒を複数人で持ち合いながら、草原や荒野の中を運んでいたという風景があちこちで見られていたと言うイメージが湧いてきます。

翻って現在の日本の硬貨でも、五円玉や五十円玉の真ん中に穴が空いているのは、太古の名残だったのかもしれません。
もっとも、大きさも比べ物にならないぐらい小さくなり、穴には木の棒ではなく、ひもを通して持ち歩くようになったと言う変化はあります。(今時、硬貨にひもを通して持ち歩いている人はほとんどいないとは思いますが)

お金は、物々交換からできたのか


ところで、お金はなぜできたのか考えたことはあるでしょうか。
物々交換を便利にするものとして「お金」が使われるようになったと一般的には言われています。
太古の昔では当たり前だったとされる物々交換。
魚と肉、または肉と果物といったように、お互いに欲しいものや必要なものを交換し合うのです。

しかし、どうもボクは以前からこの物々交換には疑問に思っていました。
魚も肉も果物も、欲しければ自分でとることができたのではないでしょうか。
とり方も、分からなければ教えてもらうことができたでしょうし、家族で何をとってくるか、得意不得意で分担だってしていたはずです。

また、塩や貝殻をお金の代わりに使った、という説も根強く残っているのですが、塩も貝殻も自分で作ろうと思えばいくらでも作れます。
貝殻にいたっては、浜辺に行けばいくらでも拾うことができたのではないかと思うのです。

そんなものが果たして、物々交換の際に「お金」として役に立つのでしょうか。
そうやって、お金の起源についてモヤモヤとした感情を抱いていた時、「これだ!」と言う解説に巡り合うことができました。

お金は貸し借りの記録


その新説とは、フェリックス・マーティン著「21世紀の貨幣論」に述べられていました。
マーティン氏は、オックスフォード大学卒の経済学者です。

マーティン氏は、今までの物々交換(物品交換)からお金=貨幣という制度ができたという、今までの定説を否定し、
「『人々の取引は債権(請求)と債務(支払い)から成り立つ』という考え方が、貨幣制度ができる以前からあった」
と、いう新しい貨幣論を説いたのです。
つまり、貸し・借りの記録が、お金=貨幣の起源なのだというものです。

バビロニアで発見された粘土板には、金銭の貸し借りや売買の記録といったものが書かれています。
ちなみにバビロニアとは、紀元前1792年、今から約4000年前にハンムラビが 初代王となったバビロニア帝国(メソポタミア統一)のことです。

そんな昔、昔、大昔から、金銭の貸し借りの記録があったなどと誰が想像したでしょうか。
でも、実際にあったのです。
物々交換などといった、和やかな世界ではなく、借用書そのものです。

また、時代は一気に7世紀まで進み、ところはリディア王国。
「リディア人は金銀の貨幣を作り最初に使用した民族である」
と記しているのは、ヘロドトス著作の歴史の名著「歴史(ヒストリエ:historiai)」です。
ヘロドトスは、アナトリアのハリカルナッソス(現在のトルコのボドルム)で生誕の、古代ギリシャ時代の歴史家・作家です。

7世紀といえば、日本では歴史上では奈良時代前。
その時代に、世界ではすでに、金銀で作られたお金が流通していたというわけです。

お金は貸して作られるという本質


少し、難しいお話になってしまいました。
お子様にお話する時はこのまま伝えても、なかなか理解ができないかもしれません。

そこで、貸し借りの記録を言い表すのに、とても簡単で分かりやすい事例が三橋貴明著の「知識ゼロから分かるMMT入門」に掲載されていたので、引用させていただくことにします。

登場人物は、リンゴ農家・バナナ農家・オレンジ農家の3人の農家の方です。
リンゴは秋、バナナは夏、オレンジは春にそれぞれ収穫されるとします。

となると、一つ問題が発生します。
収穫時期がバラバラなので、リアルタイムでの物々交換が成り立たないのです。
ではどうするか。
ここで登場するのが「借用証書」です。

つまり、春、オレンジ農家はオレンジを収穫しました。
と、オレンジ農家のところに、リンゴ農家がオレンジを買いにやって来ました。

しかし、リンゴ農家はリンゴを保有していません。
なぜなら、収穫時期が異なるので、今はまだ手元に無いのです。

そこで取り出したのが、「リンゴを渡す」と書かれた借用証書です。
この借用証書を、リンゴ農家はオレンジ農家に手渡し、リンゴ農家は代わりにオレンジを手に入れることができました。

この時点で、貸した人(つまり債権者)はオレンジ農家、借りた人(つまり債務者)はリンゴ農家となります。

さらに同じようなことが別のところで起こります。
夏になり、今度はオレンジ農家が、バナナを買いにバナナ農家を訪ねます。
しかし、オレンジ農家の手元にはオレンジはありません。オレンジの収穫は春で、もうとっくに在庫は無くなってしまっているからです。

その時、オレンジ農家は春にもらった「リンゴを渡す」と書かれた借用証書をバナナ農家に手渡すことで、賃貸契約が成立します。

やがてバナナ農家がリンゴ農家からリンゴを手に入れる時は、この「リンゴを渡す」という借用証書を使うことができます。

この借用証書そのものが「お金」です。
この「お金」の発行者はそれぞれの農家の名前が記されています。

少し考えてみてください。
何かに酷似していませんか。

そうです、私たちのお財布の中に入っていたりATMから引き出す、お札です。
このお札にも発行者が書かれています。
「日本銀行」券と。
つまり日本銀行が発行している借用証書が、ボクたちが普段使っているお金なのです。

このように、貸す人と借りる人の記録が人々の間を行き交うことで、必要なものを手に入れることができます。
これこそがお金の本質だと、著者の三橋貴明氏は述べています。
ボクもその通りだと深く納得しました。
皆さんはどう思われますか?

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