つばめ理念

無料塾が人をつくる|第3章-5|皐月秀起

岡本さんとの出会い

2014年になり、私にとって2回目の新入生がアザレア43に入居してくれました。興味がありそうな子に声がけはしたものの、日経読む会の参加は相変わらず、武田君と早川君のみ。2人と週に1回、細々ながら続けていました。

その年の秋頃から、日経読む会に参加するメンバーが1人増えました。それが岡本真佐樹さん(現、NPO法人リーダーズカフェ監事)です。

岡本さんは、山口県岩国市生まれで私より17歳も年上の大先輩、大学生ではありません。岡本さんとは、下宿探しのアルバイト先である、関学の大学生協の住宅部で出会いました。私よりも5年以上も前から、同じく期間限定で手伝いをしていました。岡本さんも、私と同じく学生マンション「一樹(いつき)」の大家さんをしており、自身の管理物件の仲介をお願いしている縁でアルバイトをしている、私と立場的には全く同じでした。

岡本さんは、ある会社でサラリーマンを続けたあと、阪神大震災をきっかけに退職をし、兵庫県の仁川という場所に、関学生が20人住む学生マンションを建て、管理・運営を始めました。よくよく話を聞くと、岡本さんも入居者の学生さんととても距離が近く、運動部やサークル活動の応援に行ったり、岡本さんの奥様が女子学生に着物の着付けを教えたり、私とはアプローチの仕方は違うものの、「入居者の学生さんと距離が近い大家さんは私だけ!」と思っていましたが、上には上がいました(笑)。

大学生協の住宅部で一緒に働きながら、下宿探しの業務だけでなく、大家さんとしての仕事についてのヒントをたくさん教えてもらいました。アルバイトを始めた年は大家さん1年目で、大家さんとしての経験がほとんどなかったので、岡本さんには感謝しています。

勘の鋭い人は既にピンときているかもしれませんが、例のアザレア43での「新入生歓迎会」のアイディアは岡本さんから教えてもらいました。「最初に子どもたちを把握しておくことが、それからの4年間を決める」と言われました。岡本さんは毎年焼鳥屋でやっているということなので、私はそれに対抗して焼肉屋にしましたが(笑)。

2014年になり、下宿紹介のアルバイトの2シーズン目が3月末で終了してからも、岡本さんとはたまに会って話をしていました。話の中で日経読む会の話になり、「私も参加します」と言われ、「どうぞ」となり、その年の秋頃から参加するようになりました。これで、たまに参加者が寝坊で来なかったとしても、1人でポツンと座っているということがなくなりました(笑)。

日経読む会の限界

翌2015年になり、下宿紹介のアルバイトの3シーズン目が終了しました。新入生の受け入れも3度目。この頃から、新入生歓迎会には武田君や早川君など、先輩入居者さんをゲストスピーカーに招き、大学生活全般のこと、履修登録のこと、近隣のことなどを新入生にレクチャーしてもらったあと、例の焼き肉レストランに連れて行っていました。その際に、日経読む会のことも紹介し、参加を促しましたが、継続参加者はこの学年からも生まれませんでした。

たまには読書会をしたり、職業興味テストをやったり、目先を変えたりもしましたが取り立てて効果はなし。それでも秋に、私が駐在していたインドネシアのジャカルタに赴き、現地の日系企業で活躍するみなさんに直に話を聞くことを目的に、海外研修旅行(現、海外スタディ・ツアー)と称して武田君(写真右)と早川君(写真左)を連れて行ったりもしました。

この頃から少しずつ、日経読む会の限界を感じていました。武田君と早川君は変わらず熱心に参加してくれて、最初に比べると見違えるように知識や気づきのバリエーションが増えてきました。彼らも自身の成長を実感していました。就活を控えた4回生が1人加わり、学生さんの参加は合わせて3人になりましたが、彼らが卒業してしまうと参加者がいなくなります。彼らの成長やモチベーションを見ていると、日経読む会に意味がないことはないと思うものの、参加者が一向に増えないのは事実。どうしたものか...と考えていました。

日経読む会をやっている場所はアザレア43で、関学のキャンパスまで自転車で25分と、関学生が住む下宿の中では一番北の端っこになります。アザレア43の入居者の子たちは住んでいるので参加しやすいですが、それ以外の子がわざわざ来るにはかなりめんどうな場所です。もっと大学のキャンパスに近いところでできれば、参加者は増えるのではないか?学校の行き帰りや授業の合間に参加してくれるのではないか?そんなことを岡本さんとも話をし、「大学近くに所を借りてできないか検討しよう」ということになりました。

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