巷

僕が港区的な人々を好きではない理由 - 絵を描けない人々のことを信用してはいけない -

港区や渋谷区、目黒区にある日本とマイルド化していく日本。それはまさにリベラルと米国的に言うところのプア・ホワイトの相容れない価値観同士のすれ違いであり軋轢です。

モノとして儚く存在し消えていく、日本と名付けられた土地に住まう人々にとって、欧米からもたらされたリベラル的価値観に対する揺り戻しがマイルド化していく社会です。

博報堂ブランドデザイン若者研究所の原田曜平氏が提唱した”マイルドヤンキー”というセグメントの定義は下記のようなものです。

地元大好き(東京には行きたくない)
小中学校からの友達との友人関係が大切
ITへの関心やスキルが低い
できちゃった結婚の割合が高い
子供にはキラキラネームをつける
車はみんなで乗っていけるミニバン
持ち家志向が高い
週末は、家族でイオンモールを楽しむ
喫煙率・飲酒率とも高め

確たる統計の存在を確認した訳ではありませんが、20歳台の5人に1人、もしくは3人に1人が上記の属性に当てはまるとするインターネットメディア上での記事があります。

地方に住む女子にとって「東京に出ることは負け」

という考え方があるそうで、東京は欲望が多い割には物価が高く、競争が激しいため、結婚・出産適齢期に仕事に打ち込まざるを得ず、結果的に晩婚化、高齢出産の道に入り、少なくない人々はそのどちらも諦めることになります。

一方で、地方はその真反対であり、20歳台早期で結婚し子どもを産み、30歳台では子どもは中学生に入り、手が離れ、自らも適度に仕事をしながら、家族や友人たちとそれなりに暮らしていくことを望む考え方です。

マイルドヤンキー層は実家と同居、もしくは近居しており、両親からの生活面での支援を受けることになります。そうすることで家事・育児の負担が減り、かつ実務を通じた実質的で意味をもたせやすい世代間でのコミュニケーションを円滑に行うことができます。

また、友人同士の繋がりも非常に大事にしていることから、ここから先は推測になりますが、家事・育児に関する用品などの融通も、”絆”という信頼関係の中で自然と行われているのではないでしょうか。

港区とは異なる(相対的に低い)絶対値としての生活水準の中、世代間・友人間、すなわち縦・横のある程度強いネットワークによってリスクを分散するために物理的なシェアリングが行われ、必要があれば港区的な世界からAmazonを通じて越境的に財を獲得することもできまし、Youtubeでそういった世界にリアルに足を運ぶ必要なく疑似体験することもできます。

これ以上何を望むのでしょう。

自分にはこれに似た世界があります。それは自分の妻の世界であり、中国人の大多数が、それが港区的、例えば上海市で働いているエリートであったとしても、未だに個人の中でオルタナティブとして持っている世界観です。

エリートたちは上海市でガムシャラに働きつつも、縦・横の大家族的ネットワークを活用しています。両親に子どもを預けたり、両親が都心に出てきて面倒を見たり、友人同士の信頼関係の中で財、場合によってはお金を融通しあったりしています。中国人が伝統的であると言われる所以です。

Facebookを見ていると港区側にいる人々は言います。

日本人にはグローバルで戦う力が必要であり、そのためには海外の人々とのコミュニケーションが大事だ、だからこそ英語が必要だ、故に海外の質の高い留学先を準備しよう、ダイバーシティでインクルージョンで、インタラクティブにイノベーションだ、と。それが「正しい」と言わんばかりの勢いです。

イノベーションって何でしょうか。なぜ英語であって中国語ではないのでしょう。そうやって作っていった未来にどのような世界が描けているのでしょう。そして、その方法論は日本人、いや日本と名付けられた地域に住む人々や東洋の人々に適しているのでしょうか。

港区的な人々が間違っているとか、悪いとかそういうことを言っているのではありませんが、一部そういうことも言っています。彼・彼女たちは、その先にある未来の姿を、説得しようとする対象に対してしっかりと絵として描けているのでしょうか、ということに対して疑わしさがあるということです。一方で、マイルド化していく人々には、彼・彼女たちにとっての幸せな世界が極めて具体的に描けているはずです。

僕が、やれシリコンバレーだ、深センだ、エストニアだと浮かれ騒いでいる人々が嫌いな理由はここにあります。

日本という地域に根ざした価値を視ることなく、そしてそこには厳しい日本の自然に裏付けられた、強い方法論があるにも関わらず、そこに目をつぶったまま、借りてきた論理で相対的に優位な言論を振りかざすところ、もっと言えば、薄っぺらい人間的な要素、すなわち戦後日本の様相を、嫌っているはずの彼・彼女たちの中に逆説的に見てしまうからです。

もっと絵を描いて僕に見せて下さい。

https://note.mu/hideoteramura/m/m092a9ea94305
(マガジン登録はこちら)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?