「お肉券」じゃダメ? コロナショックを乗り切るための経済対策とは!
なぜ「お肉券」「お魚券」が批判されているのか・コロナショックに対する経済政策はどうあるべきかについて書きました。
はじめに
こんにちは。Vtuberリコピンめぐみを運営する合同会社西岡めぐみソフトウェア代表のひでシスです。
新型コロナウイルスに端を発する経済活動の落ち込みがヤバいです。ぼくの全米インデックス投信も30%ぐらい価値が目減りしちゃいましたし、向こう半年のお仕事も160万円ぐらい売上が減ってて飢えています。業界によっては夏の商戦がまるごと吹っ飛んじゃったりとかしてますからね。新型コロナに罹って死ななくても、お金がないとご飯が食べられなくて死んでしまいます。
そんな中で自民党の部会ではコロナショックの経済対策が話し合われました。
国産の牛肉や魚などの購入を促進するため、「お肉券」や「お魚券」を発行すること
いわゆる「お肉券」「お魚券」です。ぼくも友達に「お前ら新型コロナ対策で配られる商品券で肉魚食べろよ」って言われました。
とういうのは冗談にしておいて、なぜ「お肉券」「お魚券」が批判されているのか・コロナショックに対する経済政策はどうあるべきかをこのnoteでは書いていきたいと思います。
コロナショックとは
まず新型コロナウイルスによる経済不況、コロナショックとは何なのか・影響を受ける人たちとは誰なんでしょうか。
コロナショックとは、労働者が新型コロナウイルスに感染して死んで労働力人口が減る……とかではなくて、基本的には「コロナウイルスの蔓延を防ぐために不要不急の外出を控えることによる経済活動の落ち込み」のことです。
外出を減らせばウィンドウショッピングを楽しめなくなりますし旅行も行かなくなりますよね。不要不急の購買――衣類とかバッグとかの売上は落ちますし、旅行代理店・航空旅客サービスも夏の商戦自体が消え失せました。ギリギリの状態で生き残っているミニシアターなんかも潰れかねません。外出を控えるから外食の頻度も落ちます。ぼくの知り合いの居酒屋では、せっかくの歓送会シーズンなのに飲み会の予約が1件を除いて全てキャンセルされたと聞いています。また日本では牛肉の約63%が外食等に仕向けられています(農林水産省『平成29年次 食肉の消費構成割合』)。だから畜産農家もヤバいですよね。
1. 不要不急の外出を控える→2. 外食産業が落ち込む→3. 食肉の消費が落ち込む→4. 腐るという性質を持った牛肉の価格が下落する→5. 肉牛生産農家の売上が落ち込む→6. 銀行から借り入れを行って作った牛舎のローンを返せない→7. 廃業してしまい、和牛の品種も潰えてしまう……。みたいな負のピタゴラスイッチが全国で起きようとしています。
コロナショックの経済対策の目的
でも安心してください。新型コロナウイルスは2年後には消え去っています。新型コロナなんてマクロ経済的には外生的な一時的ショックにしか過ぎなくて、ちゃんと処方箋通りに経済に軟膏を塗ればコロナが終息する2年後には経済は元通りなんです。
今回の経済対策の目的は「2年後に経済が元通りになること」「それまで事業と雇用を維持すること」です。
手をこまねいている間に、小売・旅行代理店・ミニシアター・外食業・畜産農家などが廃業してしまえば、新型コロナウイルスが過ぎ去ってももう元には戻りません。失われてしまった和牛の品種、解雇してしまった熟練労働者、売り飛ばしてしまった生産設備などは元には戻らないのです。
なぜ「お肉券」「お魚券」じゃダメなのか
「消費が落ち込んでいるんだからクーポン券で刺激すればいいじゃん」っていうのはやりがちな間違いです。↑で挙げた畜産農家の廃業を「お肉券」で防げるか考えてみましょう。
牛肉の産業構造は上の通りになります。「お肉券」は最終消費者に配られます。そうすればスーパー、屠畜解体・パッカー、畜産農家へと川上へお金が登っていくか……と思いますがそうはなりません。
小規模事業者が多い外食産業とは対照的に、スーパー等の小売業者は大きな販売力を背景として強い仕入れ力があり、卸売業者に対して大きな優位性を持っています(これをバイイング・パワーといいます)。ヨドバシカメラで家電メーカーから派遣されてきた説明員が棚卸し作業とかを違法に手伝わされていましたよね。食料品小売でも同じで、イオンやセブンアンドアイなどがメーカーや卸に対して優越的です。価格決定についても支配力があるのです。
よって川下に商品券を配っても畜産農家までお金は登っていきませんので、川上の事業者は苦しいままです。
また川下に不自然なインセンティブを付与することで市場を歪めてしまうという問題もあります。基本的に需要サイドをいじるような市場介入は悪手です。例えばコメ農家の所得維持政策については、政府がコメ市場に介入して価格を釣り上げて維持していたのを→市場を歪めるのは良くないからと生産者に直接お金を渡す所得補償制度に転換したという過去があります。この反省を活かせていません。
さて、同時に問題になるのは「最終消費者」は同時に事業者に雇用されている「被雇用者」であるということです。
現在急ピッチで進められている現金給付についても同じことです。事業者にとっては焼け石に水でしかありません。たった10万円ポッチをもらったところで、売り上げが数割も落ち込んで、牛舎のローンを返せない現状を解決できるでしょうか。消費サイドへの10万円バラマキは簡単で短期的にできる気付け薬程度でしかありません。
行うべきは事業者補助と貸付
ではどうすればいいのか。何を行えば、新型コロナウイルスが終息する2年後までに事業を維持し、2年後に元の経済状態へ復活することができるのか。それは事業者に対する補助と貸付を行うことです。
事業者に補助や貸付を行えば、当面のあいだ事業を続行でき雇用を維持することができます。重要なのは族議員によるレントシーキングで産業同士で補助金を取り合って時間を消耗することではなく、「昨年度同一月と比較したときの売上の落ち込み」など統一的な基準で補助を行うことです。
2020年3月28日時点の事業者補助・融資一覧
さて、現在行われている事業者補助と貸付について調べてみました。
1. 【東京都】新型コロナウイルス感染症対応緊急融資 2億8000万円・4億8000万円まで。10・15年以内
2. 【東京都】事業継続緊急対策(テレワーク)助成金 250万円バラマキ
3. 【厚労省】雇用調整助成金 休業手当2/3 一日一人8,330円年間100日まで
4. 【厚労省】小学校休業等対応助成金 有給休暇全額助成一日一人8,330円
5. 【経産省】信用保証・融資、生産性革命推進補助等多数。良資料
6. 【国税庁】納税猶予 最大1年間
「5. 経産省」のパンフレットがかなりまとまっていて読みやすいです。現在でもかなりたくさんの補助・融資・猶予等を行っているんですね。現場レベルの頑張りを感じる良い資料でした。
ちょうど昨日にぼくにも年金事務所から電話が掛かってきまして、「社会保険料と厚生年金保険料払えるか?」って聞かれたんですが、あれもコロナショックで厳しかったら相談に乗るで電話だったんだと思います。これも現場レベルの頑張りを感じます。
国の財政状況の厳しさもあるので、基本的には融資と猶予で事業者を延命して、コロナショックを乗り切ったあとにゆっくりとお金を返してもらうのがいいかなと思っています。
2年乗り越えれば元通りになるものを指を加えてボロボロになってすべてが死んでいくのはオカシイので、みなさんも目先の「お肉券」なんかに惑わされず、お金を借りてこのショックを乗り切りましょう!
それでは、みなさん、さよなら〜〜〜〜。(^_^)/~
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