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留学相談サービスDiverseasをクローズします。プロダクト作り初心者だった僕が犯した7つの失敗

はじめに

今回、2016年の8月から趣味プロジェクトとして、開発を開始し11月より開発・運営してきた「Diverseas(旧名:留学code)」をクローズするという決定をしました。1年以上の期間にわたって少なくない数の方を巻き込み応援していただいた中、大変な迷惑をおかけしていることをお詫びいたします。

様々な方の支えがあってこそのサービス運営であったため、このような形でクローズまでの経緯などを文章化しておくことが、説明責任という意味でも僕たちの今後のための振り返りという意味においても大切だろうという事で今回この記事を書くことにしました。

留学相談サービス「Diverseas(旧名:留学code)」の沿革

僕は2016年8月の留学真っ最中に、留学中の自分への焦燥感と留学業界への課題意識から、「Diverseas(旧名:留学code)」のコンセプトを思いつきました。

"留学をオープンソース化する"
というスローガンのもと数人の留学生友達で留学相談サービスの企画・開発を趣味レベルで開始しました。当時は、一切起業は考えていませんでした。

全員がプロダクト創り初心者だったので、様々な苦労はありましたが、11月のボストンキャリアフォーラムにぶつけてプロダクトをローンチしたときに反響があった時のことは今でも忘れられません。 ボスキャリでは、就活ではなく、Diverseasのビラ配りをしていたことも、今となっていはいい思い出です。

実際にプロダクトをリリースをすると、いろんな良いことが起きました。自分たちがつくったサービスを使って実際に留学をした人が出てきたり、仲間ができました。なにより自分たちが趣味の延長で作りはじめたWebサービスが、インターネットを通じて100人、1000人へと広がっていくあの感覚にゾクゾクしました。趣味的なプロジェクトではありましたが、サービス作りの醍醐味をこのときに感じることができたんです。たくさん失敗しましたが、かけがえのない日々でした。

趣味レベルで開始したプロジェクトでしたが、やっていくうちにどんどん楽しくなっていきました。次第に、趣味ではなく本気でやりたいと思うようになり、2018の1月に株式会社ダイバーシーズを創業しました。

なぜクローズするのか

1.「Homii(ホーミー)」に全リソースを集中させるため

先日、株式会社ダイバーシーズは、「Homii」というホームシェアリングサービスをリリースしました。

現在、株式会社ダイバーシーズは、経営上、こちらのプロダクトに会社のリソースを集中させています。だから、どうしてもDiverseasを使ってくださってるお客様によりよいサービスを提供することが難しくなっていました。そんな状態で、お客様に接するのも不誠実だと思った点が1つです。

2.代替手段が増えてきたから

僕が留学する前は、正確で中立的な留学情報を手に入れるのは非常に苦労した印象があります。留学先の留学経験者にリーチできる手段もそれを享受できる人も限られていました。そういった現状を解決したいと考えて、僕は経験者にネットで相談できるサービスとして「Diverseas」をリリースしました。

面白いことに、同じ問題意識を抱えていた留学生が他に何人かいたことを後に知りました。それぞれがそれぞれの手段で解決策を考えて実行したことで留学希望者にとって代替となる手段が非常に増えたのが2つ目の理由です。

せめてもの償いとして、ここに「Diverseas」の代替となりそうなサービスをまとめておこうと思います。この領域で1年間近く模索していたので、その知識が少しでも留学関連者の皆様の参考になれば幸いです。

1.留学コンパス
2.留学知恵袋
3.ちか友留学生活
4.留学大図鑑

3.本来の目的とズレてしまい腹落ちしなくなったから

留学中の趣味ではじめた「Diverseas」というプロジェクトですが、法人化にあたりマネタイズや売上といった概念を真剣に考えるようになりました。留学でマネタイズしようとすると、どうしても留学エージェント業かエージェントへの紹介によってマネタイズするしか方法がないんじゃないかと思い、エージェント業をやるようになりました。

留学エージェント業をリプレイスしようとプロダクトを立ち上げたはずなのに、いつの間にか自分たちが留学エージェントをしていたというのは皮肉な話です。すると、自分がなぜこのプロダクトを創っているのかわからなくなる瞬間が何度も出てきました。これってそもそも目指していた形ではないよねということでクローズを決断しました。

プロダクト創り初心者だった僕がした7つの失敗と反省

まず僕個人としての反省としては、「無知すぎた」というのが経営上の最も大きな反省です。 無知すぎたが故に、経験者であれば以下のような事前に避けられたような失敗をしてしまったことが反省点としてあります。それでは、僕がしてしまった代表的な失敗を挙げていこうと思います。

1.仮説検証しなさすぎ問題
エンジニアリングがある程度できる人の陥りやすい罠は、最初からコードを書いて製品を作り込んでしまうことです。スタートアップが何よりも最初にやらなきゃいけないことは、大きな市場の大きな課題を見つけて、新しい解決策をぶつける事でした。

それはわざわざソースコードを1000行以上書かなくても既存のツールなどを使って検証することも容易な世の中になっています。課題と解決策を見つけるのにプロダクトがいるとは限らないんです。

ちなみに上記の教訓は、Ycombinatorのブログや動画や起業に関する本でも散々延べられていますし、自分もそれらを見たことがあったはずでしたが、実行できていませんでした。これから、起業を志される方は、起業の科学リーンスタートアップを何度も読みこむことをおすすめします。

2.早すぎる最適化は害悪だ問題

最も大きな失敗は、誰も使わないサービスを3ヶ月もかけて作り直していたことかもしれません。「Diverseas」は、趣味としてはよかったんですが、ビジネスとしては、事業としての課題が多々あり散々でした。

また、戦略と呼べる戦略もありませんでした。もちろん、PMFもしていません。それにも関わらず、僕はエンジニアの立場から長期的な視点に立って、技術的負債を回収することを優先してしまいました。

趣味時代に開発していたソースコードをフルスクラッチで3ヶ月間かけて書き直す、というマイナスな意思決定をしてしまったんです。

価値仮説を検証することではなく、より良いソースコードを書くことが目標になっていました。その上、ベータ版をテストユーザーに使ってもらうと反応がよくありませんでした。

3ヶ月後、僕たちは、誰も使わないサービスを3ヶ月間かけてつくりなおしていたことにようやく気づきました。まさに、早すぎる最適化でした。

心の中では、既に自分のプロダクトを信じられなくなっていましたが、当時は、まさか自分たちが3ヶ月間かけて作り直したのに、事業を変えるなんて…、というくだらないサンクコストがあり、事業が構造的に厳しい現実を直視できずにいました。まだ何か打ち手があるのではないかという気持ちもあり、意思決定を先延ばしにしていました。そうこうしている間に、時間がどんどん経っていきました。スタートアップにとっては、時間が命です。だから、PMFするまでは、保守性より仮説検証回数やスピードを何よりも重視するべきだと学びました。

3.マネタイズ考えなさすぎ問題
ソーシャルネットワークという映画に影響を受けていた当時の僕は、「Advertising is not cool」と考えており、マネタイズをすごく後回しにしていました。それよりも、ユーザーに安価(無料)で、良質な留学情報を提供する方が大切だと考えていました。

しかし、これがとんだ誤解であったことに後に気づきました。なぜなら、エコノミクスがうまく回るプロダクトでない限り、最終的にユーザーに良質なサービスを提供できない、という構造的な事実に気づいたからです。

これから起業を志される方は、類似サービスがどういうエコノミクスで回っているかを死ぬほど調べ尽くすことと自分のプロダクトのマネタイズアイデアを2〜3つ事前に考えておくことをおすすめします。

4.マクロを考えなさすぎ問題

プロダクト創りはマクロかミクロかのレイヤーでいうと、ミクロのレイヤーだと思います。プロダクト創りの上位概念には、事業という概念があるのだと後で知りました。いくらいいプロダクトを創れる力があったとしても、事業としてのタイミングを外していたり、一般的に市場と呼ばれる領域を外していたらうまくいかないのもうまくいかないのだと学びました。これから起業を志される方は、事業という抽象レイヤーとプロダクトという具体レイヤーを本当に何往復も何往復もして考えることをおすすめします。

5.マネジメント下手すぎ問題

僕は、Diverseasを創るまでリーダーシップをとってきた経験が1度もありませんでした。だから、周りを巻き込んだり、チームを創って一緒にプロジェクトを進めていくのもはじめての経験だったので、なんとなくやっていました。この”なんとなく”というのがトラブルやリソースの無駄遣いの原因となるので、本当によくなかったと思っています。

おまけに、無給+リモートだったのもよくなかったと思っています。今振り返ると、少額でもいいので、自分がオンキャンパスでバイトなりするにしてお金を払ったほうがプロジェクトとして推進力を持ってすすめたと思いますし、いくら留学の授業があって忙しかったとはいえリモートでやらないべきでした。今考えると、中学や高校のときのキャプテンは本当に偉大だったなと思います。

当時の右も左もわからなかった未熟な自分についてきてくれた仲間には本当に頭があがりません。ジンバさん、松屋さん、トシ、藤野くん、さくらさんありがとうございました!

これから起業を志される方は、実際に0→100の経験があるメンターを見つけることをおすすめします。

6.意見に振り回されすぎ問題
プロダクト創りをしていると、会いたい人に会いやすくなります。また、不安と興奮が入り混じっているので、いろんな人の意見を聞きたくなります。

しかし、面白いほどに本当に人によって言うことはバラバラです。その一つ一つは本当に目から鱗のアドバイスもありとても貴重で有意義です。だから、たまにそれに振り回されたり影響を受けすぎて、大切なことを見失っていたことがありました。これはとても良くなかったなと思います。

外部の人は、経験や知識によって、方法論はわかっているケースが多いのでそういったことを聞くのにアドバイスを伺うのは非常に有意義です。しかし、意思決定をするのに最も重要である一次情報を持っていないケースがほとんどです。

だから、いくらすごい人であってもそのアドバイスが必ずしも正しいとは限りません。いくら初心者だからといって一次情報を最もたくさん持っている自分のほうが正しいケースが往々にしてあるからです。

結局、この世界は、当事者たちが、行動と観察によって一次情報を徹底的に集めて、自分たちの頭で徹底的に考え抜いて決断し、そしてそれを振り返り、修正していく力を鍛え上げるほかないのだ思うようになりました。

7.競合に振り回されすぎ問題

実は、スタートアップが死ぬ理由は競争に負けたときではないのがほとんどだそうです。シリコンバレー随一の投資ファンド・Yコンビネーターの創業者である投資家・ポール・グレアムが、数多くの失敗したスタートアップ企業を分析すると、スタートアップが潰れた理由の多くは、(1)お客様のニーズに答えられなかったか、(2)役員の仲間割れだったそうです。つまり、自滅した会社が多数派で、競合のせいで失敗した会社はほとんど無かったというのです。彼は、「競争相手のことを心配しすぎてユーザーのことを考えないベンチャーは、アフリカの伝染病にかかる心配をしながらタバコを吸い続ける人と同じだ。」とさえ言っています。

にも関わらず、僕は、同じような問題意識に対して課題解決をしようとしていた人達の動きを必要以上に気にして振り回されていたように思います。きっと自信が欠如していたのでしょう。これから起業を志される方がいたら、データ・ネットワーク効果・ブランドなどの競合優位性は確かに大切だが、競合を気にしすぎることは本末転倒だとアドバイスします。

最後にスティーブ・ジョブズの名言をひとつ紹介したいと思います。

美しい女性を口説こうと思った時、ライバルの男がバラの花を10本贈ったら、君は15本贈るかい?? そう思った時点で君の負けだ。 ライバルが何をしようと関係ない。 その女性が本当に何を望んでいるのかを、見極めることが重要なんだ。

上記の反省を活かして、「Homii(ホーミー)」で勝負します

「Homii」では、Diverseas時代の反省点がふんだんに活かされています。フラミンゴやビザスクを使ってプロダクト開発前にヒアリングを通じて仮説を検証したり、LP+Google Formでリーンに開発を進めていました。

「Homii」はマッチングが起こればマネタイズできるので、ビジネスモデルも非常にわかりやすいです。他にも、「マクロの観点に立ち、タイミングや市場規模という観点から事業を見る」ということも欠かさずに何度も行いました。類似サービスも調べ尽くしています。

現在の仲間やまだ見ないが今後に仲間になるであろうメンバーを意識して、ドキュメントや意思決定の透明化もすごく意識しています。

そんなサービス初期の立ち上げは、キャリアハックさんにも取材いただきました。

プロダクトの形は違えど、自分が実現したい世界は昔から一切変わっていません。僕たちは、「おうち留学」や「人への留学」と呼んだりもしていますが、Homiiでは、短期滞在では味わえない「一緒に暮らす」からこその濃密な体験を届けることに、徹底的にこだわっていきます。

「新しい住む場所を手に入れる」
「縁のなかった人たちと交流をする」

突き詰めて考えると、僕の人生が一歩前に進む時、この2つの行動が、挑戦するための”足場”をつくってくれていました。今度は、僕が「住む場所」と「交流」の届け方を変えることで、世界中の人々の人生を変えよう。

Diverseasであろうが、Homiiであろうが、根幹にあるのはこの思いです。

僕は、しつこいくらいに諦めが悪い性格です。何度でも、目指す世界のためにプロダクトで勝負し、かならずや結果という形で示していきます。

最後に

僕がこの文章を通じて伝えたいことは、「このnoteがあなたの歩みを早めるものであって、止めるものであってほしくない」ということです。

もしあなたがプロダクト創り初心者であれば、このnoteを見て、「そうか、効率的にプロダクト創りを進めるには、仮説検証もしっかりやって、市場も分析して、マネタイズも考えないといけないのか。ああ、あれもこれもやらないといけないのか」と頭を悩ましたかもしれません。そして、その動かし始めた手を止めてしまうかもしれません。

でも、このnoteがそういうnoteであってほしくないと願います。誰も最初から完璧になんてやれはしないので。気負いすぎなくていいと思うんです。矛盾するようですが、歩みを止めるくらいなら、仮説検証も市場もマネタイズも一切考えずにとりあえずはじめて見るのもいいと思います。

なぜなら、「プロダクト創りを通して人生を一歩踏み出すことによるメリットは、非効率的なプロダクト創りがもたらすどんなデメリットをも遥かに上回る」と心の底から信じているからです。

例えば、僕のケースだったら、同じ問題意識を同じ時期に抱えていた留学生が他に何人かいたことを後に知りました。僕は留学サービス作りを通してそういった方々とはじめて知り合い、友達になりました。ちか友留学生活のマサシ君は、アメリカ1周中にUCLAを案内してくれました。


留学コンパスの野原くんは、一時期は犬猿の仲でしたが、今は同じシェオフィスで働いて、マブダチみたいな関係になっています。


留学知恵袋のTokumaくんは、なんと今Homiiを手伝ってもらっています笑。

「Diverseas」は、非効率的な進め方すぎてどれだけの時間をロスしたかはわかりませんし、そんな未熟の極みで失敗だらけのプロジェクトでしたが、「Diverseas」を創っていなければ、3人には出会えていなかったでしょう。3人だけじゃない。「Diverseas」を創っていなければ出会えていなかった人はたくさんいます。圭佑さんだってその1人です。

プロダクト創りというのは不思議なもので、原石にすぎないそのプロダクトでも、創り手の想いをのせれば乗せるほど、そのプロダクトは人の縁をつむぎます。そして、その縁は人生を前進させる追い風となるんです。

「プロダクトにはそんな力がある」と感じずにはいられない瞬間が今までに数えきれないほど、たくさんありました。だからこそ、僕がこのnoteを通じて伝えたいことは、「このnoteがあなたの歩みを早めるものであって、止めるものであってほしくない」ということです。

誰も最初から完璧になんてやれはしないので。気負いすぎなくていいと思うんです。矛盾するようですが、歩みを止めるくらいなら、仮説検証も市場もマネタイズも一切考えずにとりあえずはじめて見るのもいいと思います。どうかこのnoteがそんな創り手の追い風となりますように

謝辞

ここまで僕たちが頑張れたのも、今まで様々な形でご協力くださったメンバーやトビタテ留学Japanの事務局関係者やトビタテ生や株主、そして何よりもユーザーの皆様のおかげです。本当にありがとうございます。

「Diverseas」をリリースしてから今日まで、本当にたくさんの出会いがり、たくさんの方から応援やご協力をいただきました。「Diverseas」を通じて留学という冒険をはじめて、人生を変えていっているような方々を目にしたときは、本当に感動しました。

「Diverseas」はクローズしてしまいますが、僕たちはこれから「Homii(ホーミー)」という別のアプローチからプロダクトを創り続けます!

次は、学生の趣味レベルで終わるつもりは毛頭ありません。今度こそは、そのプロダクトが社会に溶け込み、確かに社会を変えていき、そして、その名が世界に轟くようなプロダクトを創ってみせます!

何者でもない僕たちを無条件に信じて応援してくれている方々には感謝しかありません。 ありがとうございます。 みなさま、どうか今後とも暖かく見守っていただけますと幸いです。

洪 英高
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