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【コラム】もはや令和の「魔女狩り」と化した「統一教会叩き」

安倍晋三さん殺害事件から、政府与党と統一教会との関係に批判的な報道が相次いでいます。

確かに、統一教会による過去の霊感商法ほか消費者問題や、強引な集金の実態は許されません。その被害は早急に救済されるべきです。しかし、昨今の統一教会を巡る世論は「令和の魔女狩り」になりつつあるのではないか、と感じつつあります。もしくは「赤狩り・マッカーシズム」です。

まず、統一教会の職員や信者も有権者。かつ、献金やパーティ券購入は広義の「政治参加」の一環。彼らが政治(家)との関わりを持つのも自然というか、当然の権利(なんなら、もちろん出馬しても良い)。むしろ、政治(家)が「統一教会だから」と付き合いを拒んだら差別そのもの。憲法で保障された「信教の自由」を侵害しかねません。だから、たとえば献金やパーティ券購入、もしくはイベントへの祝電は「何が問題なのか」と思うし、まさか「統一教会(関係者)お断り」にするべきだった、とでも言うのでしょうか。

次に、暴力団やオウム真理教とは異なり、統一教会は暴力団対策法や団体規制法の適用対象でもありません。たとえば破壊活動防止法に基づく調査対象団体の政党(日本共産党)すらあるというのに、統一教会との関係を問題とできる(法的な)根拠は何でしょうか。

確かに、統一教会による過去の犯罪行為は問題です。しかし、だからといって統一教会関係者の政治参加を拒むなら、まさか「前科者に公民権はない」とでも言うのでしょうか。刑期を終えたら参政権は復活するわけで、前科は政治参加を拒む十分な理由ではありません。中村喜四郎さん、鈴木宗男さんや辻元清美さんのように、過去に有罪判決を受けた政治家も多くいます。
また、いまも統一教会による被害が続いているとしても、やはり教団による不法行為は教団職員や信者の政治参加を否定する根拠たり得ません。もちろん、統一教会は「組織犯罪集団(だった)」とは形容できるので、一部議員の「脇が甘かった」との指摘は免れないかもしれません。でも、たとえばオウム真理教の信者でも投票できます。少なくとも建前において、教団と個人は別ですよね。だから、選挙や政治活動を支援する人たちの一部に統一教会の関係者が含まれていたとして、それが少なくとも自発的なものである限り、問題視するべきではないはず。

さらに、いま報道されているのは一部議員や派閥との関係であって、たとえば「党組織として統一教会に乗っ取られていた」話ではありません。レイヤーが違う。党そのものの問題と捉えるのは「針小棒大」との指摘を免れません。だから、福田達夫総務会長が「何が問題なのか分からない」と発言したのは当然と言えます。
(そもそも「党組織と関係がない」証明は「悪魔の証明」にならざるを得ません。)

そもそも「政教分離」は【政治が宗教に関わるな】、つまり政治が特定の宗教団体を優遇・忌避するのを禁じるものであって、宗教団体が政治・政党に関与するのは否定されません。だから、連立与党には宗教団体を母体にしている政党もあります。もし【宗教は政治に関わるな】なら、政治家が近所の寺社や教会とのお付き合いもできないし、おちおち交通安全の御守りすら持ち歩けませんよね。もし突き詰めて「信者や檀家とも関わりを持つべきではない」としたら、もはや誰が政治参加できるというのか。
(文化大革命でも目指しているんですかね?)

むしろ、いまの世論は統一教会への「魔女狩り」に等しいと感じます。この風潮は統一教会への怨恨から安倍さんを殺害した犯人の思惑通りです。これでは「話を聞いて貰うには有名人を狙って派手な強行を起こすと効果てきめん」との姿勢を内外に示してしまっています。そういう意味で、本邦は「テロに屈した」構図であり、非常に危うい。

以下報道で総務会長の発言を「世間とズレている」と評する意見も目立つものの、その「世間」がいたずらに加熱して、いま危険な方向に向かっていると感じます。少し立ち止まって、冷静に考えるべきです。

なお、末筆ながら付言しておくと、私は自らの経験に起因して新興宗教を嫌悪しています。それでも、「信教の自由その他に基づいて(たとえ「カルト教団」であったとしても)新興宗教を信じる自由・権利がある」と断言します。

「非科学的なものを信じ、非論理的に考える自由を尊重するのも、また日本国憲法の精神」のはず。正直、この風潮は令和を生きている気がしません。

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