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「意味がわからない」という人のために。ポプテピピック2話のテーマとネタを解説

アニメ「ポプテピピック」については、ブログで全12話について考察を行っています。しかし、「1話ごとにテーマが存在する」ということに気がついたのが途中からだったため、特に前半のエピソードについては十分に考察できていなかった部分があることに後から気がつきました。

今回は第2話「#2  異次元遊戯 ヴァンヴー」について、どんなテーマが存在していたのか考えてみたいと思います。


2話のテーマは「メタフィクション」

今回は先にその回のテーマはなにか仮設を立ててから、それに基づいて個々のネタを振り勝ってみることにしましょう。私は2話のテーマを「メタフィクション」だと考えています。

メタフィクションとは、アニメなどのフィクション作品中で、「現実世界の事物や視点を巻き込んだストーリーを展開する表現方法」のことです。

ポプテピピックも、原作漫画中ではメタフィクションの技法を多用しています。代表的なものとしては、販売元である「竹書房」とポプ子・ピピ美の関係が挙げられるでしょう。ポプ子とピピ美は自分たちやポプテピピックという作品自体が竹書房から不当な評価を受けていると感じており、そのことに恨みを持っていることを示す描写が散見されます。

まず、すでに解説した第1話について、メタフィクションの要素を含んだネタがないか振り返ってみましょう。アニメオリジナルのパートである「#1 出会い」は、「アニメ版の製作元であるキングレコードが敵として登場する」という、竹書房ネタに近い構成ですが、それが正確に判明するのはもっと後の話です。

また、冒頭の「星色ガールドロップ」のネタは「視聴者に対する偽の新作告知」であるため、メタフィクションのネタであるともいえますが、そこからポプテピピック本編がスタートするので、捉えようによっては「本編スタート前のちょっとしたお遊び」と見ることもできます。

そうした意味で、単品のネタの中に明確にメタフィクションの要素を含むものが出始めるのは、今回取り上げる2話からだと言えるのです。


2話の各パートに仕込まれていたメタフィクションの要素

それでは、以上のような仮説を前提として2話のネタを振り返っていきましょう。

#2  異次元遊戯 ヴァンヴー

2話はOPのあと、アニメオリジナルパート「#2  異次元遊戯 ヴァンヴー」からスタートします。このパートは「ファンタジーアニメのキャラクターボイス収録現場」を部隊としているため、メタフィクションの要素を含んでいるのは明白でしょう。

後半、勇者と魔法使いを演じる声優の小芝居が見られる実写パートでは、楽屋の隅に潜むポプ子とピピ美の姿が描かれ、2人が現実世界に進出することでフィクションと現実との虚構を曖昧にしています。


POP TEAM 8BIT

2番目の「第四次スーパーロボット大戦」と「星のカービィスーパーデラックス」は単なるゲームのパロディと思われがちです。しかし、「第四次」のほうは、「異なるロボットアニメを一つの世界観の中にまとめたゲーム」であり、「カービィ」のほうも、「異なる7つのアクションゲームとその他のミニゲームを詰め込んだ、カービィのオムニバス的作品」であり、ある意味ではポプテピピックと同じパロディを束ねた作品であるともいえます。


ボブネミミッミ「動物園」

シュールさが強いボブネミミッミの「動物園」のネタは、一見意図するところがわかりにくいかもしれません。冒頭、動物園を訪れるボブ子が「パンダ楽しみ」と言ってるところがポイントです。登場するパンダ以外の動物は皆オーストラリア大陸の固有種で、最終的にボブ子とミミ美が訪れていた動物園はオーストラリアにあることが判明します。これは、「パンダが見たかったなら上野動物園で十分なのに!」という視聴者からのメタ視点のツッコミを含めて成立するネタになっているわけです。


日本のマチュピチュ行こ!

「日本のマチュピチュ」のネタでは、ピピ美が「背景を発注していない場所にはいけない」とメタ視点からオチを直球で語っています。


木琴スキージャンプ

「木琴スキージャンプ」のネタは、木琴という楽器についての思考実験だと考えてみるといいでしょう。木琴は、理論上、木の音盤をいくらでも横に並べ、それを適切なタイミングで叩いて鳴らせば演奏できるはずです。しかし、実際にそれをやろうとするとジャンプ台のようにすばやく左右に移動する仕組みが必要になるため、現実ではまずそんなことはしません。ですが、フィクションの世界の住人であるピピ美はそんな「ありえない木琴」があってもその不自然さに気がつくことができないのです。


笑顔なら誰にも負けません!

「笑顔なら誰にも負けません」という言葉は、自己PRのためによく使われるますが、ピピ美がしたように相手が張り合ってきた場合、適切な返しをするのは極めて難しくなります。これもある意味、哲学的な問いかけだといえます。


POP TEAM DANCE

「恋してポプテピピック」は、フェルト人形をストップモーションの技法で動かすパートです。先に早回しで制作過程を紹介していますが、ダンスシーンと合わせて「撮影に大きな手間がかかっている」というメタ的な事実が視聴者に伝わらなければ本当の感動は生まれません。


ポプテピクソみくじ

「ポプテピクソみくじ」のパートは、高速で切り替わる画面をスマートフォンで撮影し、くじを引くというもの。現実世界での視聴者のアクションを促しているので、当然メタフィクションに当たります。


針吹き出し

「針吹き出しを見ると死んでしまう」と語るポプ子が、ピピ美のセリフによって表示された針吹き出しで死んでしまうパートは、「針吹き出しは本来、作中の人物には見えないはず」という前提を逆手に取ったギャグです。CVがつくアニメではそもそも針吹き出しも必要ありませんが、それをあえて描写することでネタの意図するところが漫画版よりわかりやすくなっています。


インスタ

ピピ美のインスタ写真撮影をポプ子がしつこく妨害するパートは、「そういうやついるよね」と視聴者の共感を呼ぶあるあるネタです。「現実にそうした人が存在する」という事実を視聴者が認知していなければ成立しません。


ボブネミミッミ「かくれんぼ」

ボブネミミッミの「かくれんぼ」も基本的な構造は「針吹き出し」と同じ。作中のポプ子からはL字型画面に隠れたピピ美の存在が見えなくなってしまうというネタです。


小鳥の餌やり

「小鳥に餌をやるポプ子の手がヌルヌル動く」というネタは、「視聴者には動きがスローに見えているが、ポプ子は普通にときの流れを感じているはずなので何も意識していないはず」という点に面白さがあります。


輪唱

童謡「静かな湖畔」を輪唱されてポプ子が激怒するネタは、1話を見た後で見ると意味がわかります。「ポプ子がそういったくだらないことにキレる性格である」ということを視聴者が理解している、という前提で初めて成り立つネタだからです。


私のほうが先に大人になっちゃったら・・・

ピピ美から「私のほうが先に大人になっちゃったらどうするか考えておいて」と言われたポプ子が茫然自失になるネタは、本作がいわゆる「サザエさん時空(回をまたいでも時間が経過しない世界観)」だという点が前提にあります。視聴者は「(作中では時間経過しないし、してもリセットされるから)ポプ子よりピピ美が先におとなになることはありえない」とわかりますが、作中の人物であるポプ子はそれが理解できず、ありえない可能性に怯えて苦悩することになります。


視聴者に「この作品の見方」を準備させた

2話以降も、メタフィクションの要素を含んだネタは各回に登場していくので、今回ご紹介したポイントは「2話独自の特徴」というわけではありません。しかし、2話目にこうしたネタを固めてきたという点には意味があります。

1話でポプ子とピピ美のキャラクター性を明らかにしたように、2話ではポプテピピックという作品がどのようなものか、特に重要なポイントを繰り返すことによって、3話以降をどのように見ればいいのか、視聴者に「作品の見方を提示する」という意味があったのではないでしょうか?

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