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全話完走してから見えてくるポプテピピック1話のテーマ

アニメ「ポプテピピック」は、2018年1月から3月にかけて放送されました。ブログでは1話から12話まで、全話について考察を行いましたが、そのときには触れられなかった部分について紹介し直したいと思います。

ブログの考察記事はこちらです。

ポプテピピック第1話「#1 出会い」を考察

今回取り上げるのは1話「#1 出会い」です。ブログでのポプテピピック考察では、主に3話以降は各話にひとつずつテーマが存在するはずだ、と仮定して行っていました。

ですが、1話に関しては放映当時、最初の回であるということもあって、「1話の中身がどうか」ということよりも、ポプテピピックという作品がどのようなものであるか、という点にフォーカスを寄せた考察・感想になっていました。

今回は3話以降の考察と同じように、1話に秘められたテーマ性に迫ってみたいと思います。


ポプ子とピピ美のキャラクター像

1話は登場キャラにとっては、視聴者に対する顔見せにも当たる回です。ポプテピピックは主人公のポプ子とピピ美以外に継続して登場するまともなサブキャラは存在しません。したがって、1話には主人公の2人がどんなキャラクターなのか、視聴者に伝わりやすいネタが選ばれていたと考えられます。

OPの星色ガールドロップが終わった後、最初に始まるのは「怒った?怒ってないよ」と「ビーフオアチキン」のネタです。どちらも基本的な構造としてはポプ子がボケ、ピピ美がツッコミの立ち位置になるので、2人の役割を視聴者に伝えるにはうってつけだったでしょう。


ボケ、話をリードする役回りのポプ子

ポプ子は作中において、調子に乗ってやりすぎてしまったり、見当違いのことに怒ったりする役回りです。普通の作品であれば、「元気いっぱいだけどちょっぴりドジな女の子」として描かれたことでしょうが、本作のようにシュールなギャグアニメの中では、「サブカルクソ女を憎悪し、ちょっとしたことでキレる」、「平気で他作品のパロディに手を出す」といった極端なキャラ付けがなされています。

ポプ子の特徴としてもう一つあげられるのは、「ピピ美に執着していて、彼女には頭が上がらない」という点でしょう。ポプ子とピピ美の役回りはネタによって変わりますが、この立ち位置だけは基本的に毎回共通しています。


ツッコミ、常に冷静でポプ子を守るピピ美

一方のピピ美は、簡単に言うとツッコミ役です。調子に乗ったポプ子の態度にも落ち着いて対応し、ときには彼女をたしなめる役割を果たします。ポプ子同様、普通の漫画ならもっとわかりやすい主人公のサポート役になっていたのでしょうが、ポプテピピックの場合、ときには自身がボケ役を務めることもあります。

ピピ美について特筆すべきは執着とも言える「ポプ子への愛情」です。何をされても「怒ってないよ」と応えるところや、「いっぱいちゅき」というセリフからもわかる通り、ポプ子への友情・愛情はネタにかかわらず一貫して高い水準を保っています。本来冷静なピピ美が、ポプ子に対してだけは極端な執着を持っている、という点がこの作品の非常に面白いところです。


キャラ設定の統一感と天丼の関係

ポプテピピックは元々4コマ漫画なので、本来はひとつひとつのネタが独立したストーリーをもっています。従って、もしやろうとするなら毎回ネタごとにキャラ設定を変えても問題ないはずなのですが、ポプ子とピピ美のキャラ設定には統一感が見られます。

これはおそらく、ポプテピピックが「同じネタの繰り返す」ことによって、より笑いの効果を高めようとするテクニックを用いているからでしょう。お笑いのジャンルでは「天丼」と呼ばれる手法です。

天丼

お笑い用語として天丼と言えば、同じギャグやボケを二度、三度と繰り返して笑いをとる手法のことを指す。余り間を置かずに畳み掛けるように使ったり、他者のボケに乗っかる形で重ねる場合は、かぶせ(る)と称することもある。


テレビなどで活躍するお笑い芸人はさまざまな方法で天丼を活用していますが、そうした方法のひとつに「あえて相手が忘れた頃に繰り返す」というやり方があります。

たとえば「怒った?怒ってないよ」は、1話で一番最初に使われたネタでしたが、1話のラストであるボブネミミッミで最初の天丼が行われました。さらに最終話で合体したポプ子とピピ美が敵を撃破するクライマックスシーンでも、再びこのセリフが繰り返されています。このように、本編最初のネタを1話と12話、それぞれのラストで繰り返すという印象的な手法を用いているのです。


ポプ子とピピ美のキャラ設定は作品の軸になっている

天丼は、「最もシンプルなセルフパロディ」と言い換えることもできます。「自分でやった面白いネタを反芻して笑いをとる」ことを狙っているからです。

このとき重要なのは、「天丼を行う者のキャラが立っている」ことです。たとえば、お笑い芸人や「笑点」に登場する落語家などをイメージして見てください。面白い芸人には必ずと行っていいほど、その人の代名詞とも言える「持ちネタ」があります。

ポプテピピックはふんだんに他作品のパロディを取り入れていますが、それだけでは作品に一貫性が保てません。そこでポプ子とピピ美のキャラ設定だけは「ぶれない軸」として用意しておき、それを元に天丼を繰り返すことによって徐々に笑いの効果を増していくことを狙っているのだと思います。

ポプテピピックの原作には、ポプ子が他作品のギャグについて「私が言ったことにならねぇかな」と愚痴をこぼすシーンがあります。これは「ポプテピピックはパロディばかりで独自のギャグがない」という自虐を含んだ発言ですが、実際にはそれはただの謙遜であり、ちょっとしたギャグを反芻することによって大きな笑いにつなげていく手法によって、しっかりとした「持ちネタ」をたくさん持っていると言えるでしょう。

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