お世話になっております。

（↓はこの記事を書き始めた当時の導入になります。いかに自分が怠惰かを実感できるので、あえて消さずに残しておきます。）

先週のマイルチャンピオンシップでは後方に控えた4歳牝馬ナミュールが最終コーナーを回ったところで一気に進出開始。馬群を割って先頭に踊り出ると、最後は内で粘るソウルラッシュをクビ差凌いで悲願のG1制覇を果たしました。

私はこれまで散々ナミュール本命ベタ買いしてきたのに今回に限って所用のせいで馬券すら買っておりませんので払い戻しゼロですが、みなさんはいかがお過ごしでしょうか。

さて、今回のピッチデザイン企画ではD-backsが誇るタフネスサウスポーKyle Nelson（カイル・ネルソン）を取り上げます。

特にめちゃくちゃ優秀というわけではなく、すごく勝ちパターンで使えるというわけでもないNelsonですが、状況を問わずあらゆるシチュエーションで登板しチームを支えてきました。

ただ、そんな彼がこの立場にたどり着くまでには色々配球を試行錯誤していたようで、その点について簡単に触れられればと思います。では。

年度別成績と所感

ガーディアンズ傘下で高い奪三振能力を発揮するもMLBでは結果を出せず、2021年オフにDFAされていたところをD-backsが拾って現在に至ります。

2022年はなんやかんやで43試合を投げて頭角を現すと2023年は68試合に登板（チーム2位）。ホームランを打たれまくったのでfWARは伸びませんでしたが、特筆すべきはK/9が10.77、BB/9が2.25というところでしょう。安定して三振を取り、かつ四球を出さない投球でチームを支えました。

ここまで大きく躍進できた要因はボール球を振らせる能力、そしてそれに起因する空振りの多さ。今季のNelsonはChase%（ボール球スイング率）34.7%をマークしましたが、これはMLBの上位5％に入るレベル。すごいボールを持ち合わせているわけではないのですが、いったいどうやっているのでしょうか、わかりません。

配球や球質の変化

スライダーの変遷

　では、過去3年間でNelsonの配球や球質がどう変化しているかだいたいで見ていきましょう。

　まず着目したいのがスライダーの変化になります。もともと80マイル前半の横方向への変化が大きい「スイーパー」を投げていたNelsonですが、最近になって高速化を進めています。これにともなって変化量は減っているようです。過去3年間の変化をピックアップして見ていきましょう。

　横変化量を減少させた一方球速は向上させました。また、2022年には少し斜めに変化していた変化方向を、2023年にはスイーパーに近い形（沈まず横に曲がる）ように調整したようです。結果として、2023年はxwOBA、Whiff%ともに最高の値を記録。ピッチデザインが功を奏する形になりました。

対右打者でのカッター

　投球スタイルからもなんとなく想像がつくと思いますが、元々Nelsonは右打者を苦手としていました。2022年の対左打者のxwOBAが.294なのに対して対右打者は.324。

　この対策のためか、2023年に入ってNelsonは右打者限定でカッターを投げ始めました。スライダーとストレートを減らし、その分カッターを増やしています。

Kyle Nelsonの対右打者投球割合（％）

2022年
ストレート　34.5
スライダー　65
カッター　　0.5

2023年
ストレート　27.9
スライダー　56.2
カッター　　16

　左打者の割合はほとんど変化していないので、明らかに対右打者を意識した変更に思われます。

　この変更、意図としてはストライクゾーンに投げ込む割合を増やす狙いがあったものと見られます。一般的に、投球はストライクゾーンに投げ込む方が価値が高くなる傾向にあります。ただ、ストライクカウントを増やせば打者には不利になる一方投手としては威力の低いボールを投げ込めば痛打される不安もあります。Nelsonのような球速の早くない投手であればなおさらのこと。

　そこで、フォーシームよりも打たれにくく、かつ変化するためジャストミートされにくいカットボールを右打者相手に投げることでゾーンへの投球割合を増やせるようにしたものと見られます。実際、対右打者のゾーン投球割合は42.2%から49.8%に向上したようで、成功と言えそうです。

感想

　カッターやツーシームをフォーシームの代わりにカウント球に使う発想は🐍ちゃんズだと割と目につきますね。誰が考えているのやら。