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観光業界に「稼ぐ力」を!DMOとDMCの役割について。

DMO・・・Destination Marketing Organization
DMC・・・Destination Management Company
このような違いがあります。2つの組織についてこのnoteでは触れます。

「地域にはDMOが!」「インバウンドに対応するためにDMOを!」そんな声が全国から聞こえます。現在、日本には登録DMOと候補DMOを合わせると300以上もの組織が存在します。

観光庁によると、DMOとは下記のような法人を指すようです。

観光地域づくり法人は、地域の「稼ぐ力」を引き出すとともに地域への誇りと愛着を醸成する地域経営の視点に立った観光地域づくりの司令塔として、多様な関係者と協同しながら、明確なコンセプトに基づいた観光地域づくりを実現するための戦略を策定するとともに、戦略を着実に実施するための調整機能を備えた法人

特に注目したいのが「稼ぐ力」という部分。この稼ぐ力という点において、私はDMOだけでは不十分であると考えています。DMOが悪いというわけではありません。DMOという組織を増やすことだけてなく、その地域の特性や強み、状況等を加味しながら「DMC」を作っていくべきだと感じています。


●DMOとDMCの違い

日々、観光業に従事しているとよくこの2つの組織の違いを聞かれます。簡単にお伝えすると、DMOはその地域をPRしたり、ステイクホルダーと合意形成をしてより良いデステネーションを作っていくことが目的であり、旅行会社の機能は持ちません。一方、DMCとは旅行会社機能を持ちます。実際にその観光地を訪れる観光客の皆様にコンテンツを販売したり、ホテル・車両・ガイドなどを手配します。

DMCの設立には、旅行業免許が必要であり、旅行会社として公的に認められる必要があります。DMOの中でもDMC機能(旅行業免許を取得し、旅行会社として認められている)組織もあります。

このような状況の中で、つい先日の日経新聞の記事でDMOの現状がまとめられた記事がありました。私の身の回りにいる観光事業者界隈でもかなり話題になっており、観光立国・日本を作っていく上で解決しなければいけない重要な課題だと感じております。

●DMOの課題

DMOが増えること、存在することは全く悪いことではありません。観光庁の定義通り、観光地の司令塔としてコンセプトメイキングや横の繋がりを作理、国内外へPRしていくことは絶対に必要なことです。

しかしながら、当初の目論みであった「稼ぐ力」というものが不足しているように感じています。

・地域の素晴らしい商品を販売できない

先に述べたように、日本では旅行商品を販売する際に法律で「旅行業免許」を取得しないといけないと定められています。現状のDMOの多くは、旅行業免許を取得することができず、地域に魅力的な資源がありながら、自分たちで販売できません。(一部DMOでは、旅行業免許を保持し、独自で販売しています。)

では、どうやって販売しているかというと、国内外の旅行業を持っている旅行会社にセールス活動を行い、自地域のコンテンツや魅力をPRして、旅程に組み込んでもらったり、コンテンツを販売してもらっているのです。

・自主財源が確保できず、補助金頼り

となると、企業の原理原則通り利益が生まれないことになるので、経済的体力が疲弊します。自主財源が確保できず、DMOの多くが公的な補助金頼りのビジネスモデルになってしまうのです。

これも悪いことでなく、地域の観光地や観光公害対策等を行い、地域に住む人々の暮らしを守ることがDMOの大きな役目でもあります。

しかしながら、経済的メリットを享受できないと新たな投資機会が生まれず、観光地としてステップアップしていくことが難しくなってきてしまいます。

・人材不足、専門的知識を持った人材をアサインできない

観光地づくりとして素晴らしい活動をしている組織にも関わらず、経済的に事業グロースできないため、人材不足に陥ります。現在、登録されている多くのDMOは行政の観光振興課やコンベンション協会などが形を少し変えたもの。彼らと知見のある外部専門家が混ざると地域にとって、さらにより良いシナジーが生まれると思いますが、専門家などに経済的メリットを享受することが難しく、悪循環に陥ってしまいます。

観光庁「観光地域づくり法人の現状及び課題 ~観光を巡る動向を踏まえて~」より抜粋
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●「DMC」はこれらの問題を解決する一手となるか

ここで登場するのが、冒頭に触れた「DMC」の存在です。DMCは旅行会社ですから、地域の旅行商品を販売することが可能です。DMOが地域をマネジメントして、魅力を引き出す、そして引き出された魅力をコンテンツ化し、しっかりとした経営やマーケティングを行い、旅行商品を販売し、地域にさらなる経済効果を生み出す。

このモデルが今の日本観光に必要なのでは?と感じています。

実際にDMOでありながら、DMC機能を持ち自主財源を確保しながら運営を行っている地域の事例もあります。

長野県の「信州いいやま観光局」では財源の7割以上を自主財源で賄っているそうです。こういったDMOやDMCが全国各地にできてくると、より地方消費が活性化し観光への再投資も期待できます。

観光庁「観光地域づくり法人(DMO)における自主財源開発手法ガイドブック」より抜粋
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DMOはDMOなりの強みを、DMCはDMCなりの強みを活かしながら、観光地づくりを行っていくバランスが重要です。そして、何より、地域のことは地域が一番理解しています。

私のように全国各地の観光地を訪れさせていただく人材もいますが、自地域のコネクションや関係性においては地域の方に比べると、当然の如く頼らせていただきっぱなしです。

我々は我々の強みを活かして、お客様を地域に送客すること。そして、それらの観光客を万全の体制で受け入れていただける地域があると、観光客から見た日本としてのプレゼンス・満足度がどんどんと上がってくると思います。

●最後に

観光庁もこの問題を解決するべく、2027年度までにDMO全てに予約機能を持ったWebサイトを構築するような動きを見せています。しかしながら、それだけでは根本的な問題の解決になりません。

業界全体として、他業界に負けない魅力を作り人材をどんどんと引き込んでいくこと。そして、業界内部としては、まさに「稼ぐ力」をつけていくことが必要だと感じています。

私も観光業界に微力ながら貢献できるよう、これからも頑張っていきたいと思います。

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