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MODは誰がなんのために作るのか?

CREATIONSは突然に。

本日、何の前触れもなくいきなり始まった「Bethesda Game Studios Creations」。以前より、MODクリエイターが参加する「Creation Club」があったわけですが、今回はより条件を緩和し、Bethesdaが公認するModderが正式に「自作MODに価格を設定」する事ができるようです。

Bethesdaとしては、今回が三度目の「MODによる収益化」の挑戦になるわけです。

一度目「Steam Workshop」

最初の挑戦は2012年のSteam Workshop。
CKの配布と同時にサービスが開始され、SteamからMODを直接ダウンロードしてゲームに適用し、有料化を望むクリエイターは価格を設定し、MODを販売できるようになる。はずでした。
MODを直接ダウンロードして使用する仕組みはできたものの、有料化の流れはユーザーの大反対に遭って頓挫します。ユーザーとしてMODが有料化していく懸念もあったものの、そもそも「MOD盗用」「他ゲームからのデータ流用」「著作権侵害」に対する対策が不十分であったため、それらが氾濫し、同時にコメントも大荒れで無法地帯もいいところでした。
頓挫もやむなし。

二度目「Creation Club」

その次は2017年のCreation Club。
Bethesda公認のMODクリエイターを募集し、同時にコンテンツ制作をBethesdaが監修・サポートを行うサービスです。こちらは一定の成果があったものの、公認されたのはごく一握りのModderに限られ、特にアジア圏のModderはほとんどが蚊帳の外でした。
制作されたMODも内容に一定のリリースの要件があり、クリエイターの表現が充分に発揮されたかというと、少々物足りなく。さらに監修があるためリリースまで時間がかかり、制作されたCC MODもユーザーが期待したほどのクオリティやボリューム、MOD数はリリースされませんでした。そのためCC参加クリエイターが以前と変わらず、個人で「自由に」MODをリリースすることも多かったようです。

三度目「Creations」

そして2023年12月。Creationsの登場です。
まだ発表されたばかりなので、今度どうなるか大注目のサービスですが、リリースノートをみているとCreation Clubの門戸を大きく開き、同時にクリエイターの独自性を尊重する内容になっているようです。クリエイターは登録の際に実際に作った「自信作MOD」を三件提示し、Bethesda側の審査を待つことになります。この審査を通してMODのクリーン性と、一定のクオリティを担保するシステムになっているようです。

なぜModを作るのか

私はTES4:OblivionのMOD制作からはじまり、もう15年も無償でMODを作り続けています。以前インタビューでも語ったとおり、MOD制作が私にとって遊びのひとつであり、報酬は誰かがそのMODを使ってくれる事だからです。この姿勢は今も変わりません。

とはいえ

自分の時間と労力を、無償で注ぎ続けるのは大変です。
仕事の傍ら、MODが完成するまでは多くの時間を注ぎ込む必要があります。そしてMOD制作に使うツール類の多くは有償であり、さらにはPCの機材代などなど…それらをカバーできる機会があれば。と強く願わずにはいられません。

今回のCREATIONSが、MODを作り続けるための希望になってくれることを期待して、Bethesdaの審査に応募しました。
いまは返事待ちの状態です。

MOD環境の変化

元来少々怠惰な性格もあり、MOD制作においても「こんなもんでいいか」とか「あとは使う人が自分でなんとかしてくれ」という状態でリリースすることも少なくありませんでした。そういった状態でリリースしても、多くの場合は問題になりません。MODは、作る側も使う側も、一定の知識と技術が求められるからです。とはいえ、大きな問題が出た場合はちゃんと修正しましたし、事前の動作確認は入念にしています。

その状況が大きく変わったのが、Bethesda.netの登場です。これにより、ゲームから直接MODのダウンロードと、同時にコンシューマ機によるMODの利用が可能になりました。そしてコンシューマユーザーがMODを利用できるようになった事で、MOD利用者が一気に数十倍に増えたのです。
同時に、知識・技術が無くてもMODの世界に飛び込めるようになりました(そもそもコンシューマ機ではコンソールコマンドやツールでMODの不具合に対処する事ができないですしね)。

MOD利用者が大幅に増えたことはたいへん喜ばしいのですが、同時にMODによる不具合が致命傷になってしまう場面も増えてしまいました。制作者が気軽にMODをアップデートしてしまうと、不具合に遭遇したユーザーからの苦情が殺到してくるのです(殺到しました)。

これらに対応するために、MOD制作はより慎重に、不具合がでないように常に気を配る必要がでてきました。(コンシューマ向けにリリースしなければいいのですが、使えるのならば多くの人に使ってほしいのが私の性分なので…)

正直、けっこう大変です。

VRChatと有料アセット

話は変わりますが、私は2023年4月からVRChatをプレイしはじめ、BoothやVket StoreでVRChat向けの有料アセットを販売開始しました。まだこの世界は駆け出しのペーペーもいいところですが、ありがたいことにアセットを購入いただき、まだ収入とまでは呼べないものの、一定の利益を得ることができています。

この事が大きな原動力となりました。

モチベーションと、クオリティアップ

対価を得ることでモチベーションがあがるのと同時に「お金を頂くのだから半端な事はできない」と、制作物のクオリティに気を配るようになりました。ここをもうちょっとがんばろう、ミスは無いかもう一度チェックしよう、もうちょっと制作物を増やそう。そういった姿勢の変化がありました。販売アセット制作は、気軽にネタMODを作るのとは違った、程よい緊張感があります。

MODにならなかった制作物たち

私のハードディスクの中には、ほぼ完成まで出来ているのに、MODとしてリリースされなかったデータが実はそこそこ転がっていたりします。制作に時間がかかるゆえの、モチベーションの断絶です。
そういったデータがまた息を吹き返すか、まったく作り直された状態でリリースされる日が来るかもしれません。これは私の姿勢の問題ではありますが、そういった機会がCreationsで増えてくれることを期待しています。

今後の自作MODについて

私が仮にCreationsに公認され、MODの販売が可能になったからと言って、すぐに何かが変わるわけではありません。今現在リリースしているMOD群は、そのまま変わらず無償で利用できるようにしていきます。
また、なにか突発的に作ったネタMOD系も有償化する予定はありません。

まだサービスが開始されたばかりですし、今のところ何か計画があるわけでもありません。ただ、MODを作り続けていく上で有償化を見据えてMODを作っていく事も想定できるようになると、いろいろ選択肢が増えるので良いな。といった感じです。

MODは誰がなんのために作るのか?

これまでは私が私のために作ってました。
これからも、相変わらず私が私のために作っていくつもりです。

Creationsで、MOD文化が健全な発展をすることを願っています。


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