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まず知ることから

僕は、小さい頃「そこにいなさい」と言われても、どこかに行ってしまうので、よく叱られていました。

今から考えると、自分では、叱られる理由がわかっていなかったのだと思います。高齢者が「ちょっと、そこまで」と言いながら、遠くに行ってしまい、帰れなくなるのと似ているような気がします。

成長するにつれて「そこにいなさい」が、その場所から動いてはいけないことを指すのだと気づきました。

そこがどこだか、わかったところで、僕はじっとしていられなかったと思います。それでも、自分がどうして注意されるのか、その理由がわかって良かったです。

理由がわかっても、わからなくても、出来なければ、どっちにしろ怒られるのだから同じではないかと思われるかもしれませんが、訳が分からず叱られれば、僕は理不尽だと感じてしまうからです。

この体の持ち主は僕なので、全部僕の意思でやったことだと、みんなは考えているに違いありません。

どうして自分が怒られなければいけなかったのか。

行動のコントロールが上手く出来ない自分のことを、壊れたロボットを操縦しているようだと思っていた僕は、叱られる理由がわかることで、どうやったら、みんなみたいに行動できるのかを、もっと自分でも考えなければいけないと思うようになりました。

考えたからといって、出来るようになるかどうかはわかりませんが、取り組むべき課題は、はっきりします。

僕は自分が、どう他の人と違うのか知りたかったのです。

自閉症の啓発では、「まず、知ることから始めよう」とよく言われます。
僕が自分を好きになるために最初にしなければいけなかったことは、まさにそれでした。自分がどんな人間かを理解することだったのです。

自分と他の人との違いを知る。そして、自分という人間の存在を自分が認める。
そうすれば、生きていく覚悟が生まれます。自分を否定する必要も肯定する必要もありません。
この世に生まれた人間のひとりとして、精一杯生きていけばいいだけなのです。


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