購入と所有に縛られない、新しい農業の世界を目指して

前回の記事に多くの方からコメントを頂いたことで「スマート農業」というワードの魔力を実感しつつ、言える範囲とはいえ業界からアウトプットをしっかり出していくことの重要性を学びました。

はじめて農機具が家に来た日の「ありがたみ」

農業機械を農家の方に販売していて、やはり一番嬉しいのはトラクター・コンバイン・田植機を新車でお客様に買って頂いた瞬間です。自動車以上に高額なものを買って頂くわけなので「納品は大安吉日」など縁起物としての価値観、めったに見ないものの「ありがたみ」を感じるような風習もまだまだ根強いのではないでしょうか。

一方、中古機械の買取りに出向くと、離農した方が「30年前の機械だけど、殆ど使っていないからまだまだ綺麗だよ!値段はいくらになるんだい?」という事を仰るのです。

実際見た目は非常に綺麗で動作状態も良好、使用については何の問題もありません。しかし、思うような価格にはなりません。なぜなら、30年落ちの部品供給がストップした機械は再販してもメンテナンスができないので、殆ど0に近い値段なんですね。

「すみませんが、この機械は値段がつかないんです・・・」と僕が言うと、お客様はとても悲しそうな顔をされます。そしてその後、その機械の思い出を聞いたり、一緒に語ったりもします。

メーカー自体が既に存在しない場合もあり、中古車のようにオールドカー需要があれば話は別なのですが、特殊な機械が多い農機具の世界はこのような会話が日常的に繰り広げられているのです。

車のように買い替え・下取りであれば話は別ですが、一度所有したものを「失ってしまう」という感覚を一番近くで体感するのは、とても悲しい気持ちになります。

実は農家の方は、必要でないものを所有している

思いの外エピソードが長くなってしまいましたが、このお客様、「30年間、買った機械を殆ど使っていない」んですよね。これはかなり重要なポイントです。

お客様の思い出をよくよく聞いてみると、「当時の○○の営業さんが来てねぇ・・・無理して買っちゃったんだよねぇ・・・」というエピソードが出てくるわけです。

共同購入という考え方は昔からあるものの、農機具の世界は「1農家につき1つの機械」という考え方が主流で、よそから道具を「毎回借りる」という行為に抵抗を感じる方も少なくありません。

世界の農業機械レンタル市場を見ると、3割以上がアメリカ市場での取引となっており、これはアジア全体の市場とほぼ近しい数字なのですが、これはシェアリングエコノミーの考え方が普及してきたことも理由のひとつだと考えます。

ホームデポという大手ホームセンターが農機具レンタルを手がけていることも市況に関係していますが、かつてアメリカンドリームの対極とされた「借りる」という行為ではなく、「必要なものだけを所持する」という考え方へのアップデートが進んでいるからこその数字でしょう。

「農機具の所有」という過剰投資を続ける市場

農業機械の市場は約4,000億円と言われており、その殆どが「販売」によって成り立っている市場です。
本来、農機具を「買う」ということは消費ではなく投資活動であって、所有することで生産性の向上よりも維持コストが余分にかかってしまったのであれば、それは過剰投資であったと言わざるを得ません。

最近はコスト削減の観点から中古農機が人気ですが、僕はこの風潮にも少し疑問を持っています。
新品に比べて大きくなりがちな維持コストを計算して購入されているのであれば良いのですが、「安いから」という理由で廉価品や中古品を購入した結果、満足な投資効果が得られないということがあり、安さからは相応の価値しか生まれないことが理由のひとつです。

売上を上げたいメーカーとコストを下げたい消費者という構図に対してシェアリングエコノミーの考えを取り入れることで、投資の最適化に繋がるのではないかとも考えています。

また、投資を最適化できたとき、所有することの本当の「ありがたみ」が、また感じられるようになるのかもしれませんね。

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higashinaoto

農機具レンタルが「自由」を生むまでのプロセス

「農機具屋」店員の僕が、レンタル事業の担当として農業に「自由」を生み出すためのプロセスに辿り着くまでの過程
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