中古農業機械が日本市場で「銀の弾丸」と成り得ない理由
前回に引き続き第2回です。第1回は僕が展開する農機具の「レンタル」「シェア」などの市場についての話をしましたが、あえて前回あまり触れなかった「中古」農機具について触れてみたいと思います。
「中古」というマーケットの存在
第1回の記事で「経済的な制約」と「自由に対する制約」の観点からシェアビジネスとの関係性を紐解いてみたのですが、ここではあえて「中古」というマーケットの存在について触れませんでした。
▼経済的な制約
(安い)レンタル>中古>>>共同購入>>リース(高い)
※レンタルは期間による
▼自由に対する制約
(すぐ使える)中古=リース>>>>レンタル=共同購入(すぐ使えない)
実際に「中古」という概念を持ち込んでみると、上記の図式となります。見てお分かりの通り、両方の制約条件をクリアしていますね。
実際に農業機械の営業をしていると、「いい機械だから欲しいのだけど、高くて買えないから中古はありませんか?」という声を農家のお客様から聞くことが多く、「価格の面であれば、レンタルはどうですか?」と勧めてみると「う~ん・・・レンタルもいいけどなぁ・・・」という回答までが一連の流れとなります。
上記のやり取りを読み解いてみると、高いからちょっと買えない+レンタルは抵抗ある ということで「中古」がファーストチョイスとなっているようです。
借りるという行動に対するコストの問題も大きく関係しそうですが、ここはまた別の機会にお伝えできればと考えています。
中古農機の需要と供給バランスについて
ここからが本題となりますが、勘の良い方は「中古を売ってあげればいいじゃん」とお気づきのことでしょう。確かにその通りなのですが、できない(しづらい)理由があります。
それは、「中古農機の供給不足」です。いや、厳密に言えば、「中古農機はあるんだけど、日本で再販できない」理由があるのです。
確かに、離農者数の増加などにより中古農機の買取市場はまるでゴールドラッシュ時代のような隆盛を迎えているのですが、離農者と言っても様々で、その殆どは「何らかの理由で収益性を確保できず、後継者が現れなかった」農家の方なんです。
リセールバリューという観点から行くと、そういった離農者の方の家に「お宝」が眠っている確率は限りなく低く、中古車市場と同様に、状態が良くても30年以上前の型式であったり不人気の機種であれば、依頼者の期待に反して0円査定という案件も珍しくありません。
そのような背景のひとつには、エンジニアの人件費なども理由として上げられます。
アジアの国々には日本から買い取ったトラクターや大型機械をオーバーホールして・・・というエンジニアが多くいますが、日本市場ではそのような人材は「職人」として重宝されます。
近年では農業機械も部品のユニット化・低価格化が進み、サービス店レベルでは「修理するより部品交換した方が安い」という現象が発生しています。
また、業界の高齢化や日本市場の縮小(離農)などもあってエンジニアの総数も相対的に減っていき、日本市場に対して「中古農機を供給できない」という現象が発生します。
そんな状況から、人気機種に関しては「中古が出てくるのを待っている」人達がたくさんいて、需要に供給が全く追いつかないことが常態化しているのが実情です。
新車販売を前提として支えられている中古市場
中古車市場であれば、新車に買い替えた方の旧車が市場に出回りますが、農業機械の場合は「離農者」ですよね。元を辿ればこの「離農者」の方もどこかで新車を購入したはずです。
そして、中古機械の需要は国内でもたくさんあるのに、農業機械の新車マーケットは国内でどんどん縮小しています。
この状態が続くとどうなるか想像してみると・・・
やはり、中古市場というのは「新車販売」によって支えられているマーケットであって、日本の農業機械市場における「銀の弾丸」は、現在・未来のテクノロジーをしっかりお客様に提案すること。
また、魅力的な価格で、日本のお客様にとって魅力的な製品やサービスを提案し続けていく地道な努力だなということを痛感するのです。
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