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映画感想:ハッチング -孵化-

娘がもうすぐ小学生になります。

入学式の為に注文してた晴れ着が届いたところ、それを着て嬉しそうに私に見せに来る娘をみて、まだまだ残る幼さを感じるとともに、確実な成長を感じ、いずれは私の手を離れていくんだなぁ…と寂しい気持ちになりました。

そーーーーーーんな子育てしてる皆さんに見てほしいのが

今日の映画。


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ハッチング -孵化-

ハンナ・ベルイホルム(2022)

簡単なあらすじ
12歳の少女ティンヤは、森の中で卵を拾い、それを自室へ持って帰った。枕の下で卵を暖めていたところ、卵が日に日に大きく、巨大化していることに気づく。

あらすじとか、写真を見る限り

「なんか、不気味な感じのモンスターホラーなのかな?」

と予想されると思いますが

実際には

思春期 × 毒親 × モンスター

最悪のケミストリーを起こすレシピで出来上がった反面教師映画ですう!

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主人公ティンヤは一見幸せそうに見える4人家族の一員なのですが、この家族の中心人物である母親が、毒親って奴なんです。

この母親が「第三者の評価をもって幸福を感じる」性質なんです。

だから幸せそうな理想の家族像を演じた動画投稿をしたり、娘にバレエの練習を無理強いして大会で勝たせようとしたり、男性に求められるのが嬉しくて平気で不倫したりします。

そんな母親はティンヤを完全に支配していて

「お母さんが喜ぶことをしないと…」
「大好きなお母さんに愛してもらえない…」

っていう強迫観念のような心理状態に陥っています。

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ギリギリの綱渡りの精神状態のティンヤの前に現れるのが、卵から生まれた謎のモンスター・アリ。

母親とティンヤの関係性と対照的に描かれるティンヤとアリ。

ティンヤは無償の、見返りを求めない愛をアリに注ぎ、醜いモンスターの様相のアリに「可愛い」と言葉をかけて頭を撫でます。ティンヤはそういった愛情表現を、母親に求めてたのかな、とか思うと泣ける。

アリは、ティンヤの精神状態とリンクしているのか、ティンヤが「邪魔だ」と強く思った対象を襲うようになっていくんですが

このティンヤが「邪魔だ!」と強く思う感情のきっかけが

すべて母親がティンヤに寄せる期待に応えるため、なんですよ…普通思春期の娘が、理不尽に母親に怒られたり無茶させられたりしたら、その感情の矛先は母親だろって思うじゃないですか。

でもティンヤの世界で母親は絶対的な存在で、母親に嫌われたら終わりなんですよね、不幸せなんですよ。だから矛先は向かない、最後まで。

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ホラー要素はボチボチあるんですが

正直ぬるいっす。
怖くないっす。

ただひとつめちゃくちゃ怖いシーンがあって

不倫相手の男性にフラれた母親が、ティンヤの目の前で怒りの叫びをあげるってやつ…

それを見てるティンヤの不安や悲しみで困惑した表情が辛くて、辛くて、

子どもにとって、精神的な支柱である、親が崩れてしまうのってこんなにも怖いことなんだと、骨身に染みました。父親として、子どもの前ではしゃんとしないとなぁ。

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モンスターが観たい!ホラーが観たい!グロ描写が観たい!

みたいなスナック感覚で本作を手に取ったのなら、退屈な気持ちになるかもしれませんが、もしあなたが子をもつ親で、人並に育児に悩んだりしてるなら

超オススメです。

どこまでも悲しいお話ではありますが、作品を通して

自分はどのように子どもの前で振る舞っているだろうか

子どもにとっての幸せを考えて、行動できているだろうか

みたいなことを考えるいいきかっけになると思いますし

何より、自分の子どもに、より一層優しく接することができると思います。



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