フェリーズの良さ、ある。

フェリーズ:
尾道で2013年春に誕生した渡船を愛する女性ユニット。
尾道在住のヨーコとマチルダの二人組。(フェリーズfacebookページより)

知り合いから何気なく渡された一枚のCDには、青いマリンルック風のコスチュームを纏った2人の女性がジャケットに。それがフェリーズ。

ここ最近、そんなフェリーズのCDを何度も聴いています。
アルバムの楽曲タイトルを記しておくと、
 1.[soundscape]尾道渡船
 2.渡船フェリー
 3.やっぱり渡船
 4.[soundscape]尾道駅前渡船
 5.アナタハミナト
 6.海からの手紙
 7.ブルーラインGOGO
 8.[soundscape]福本渡船
 9.尾道クルージング
10.アイランドロック
11.尾道クルージング[vivahiro REMIX]
12.尾道クルージング[Tatsu Mihara REMIX]

見事までに一貫した「渡船フェリー」「海(瀬戸内海)」にまつわるタイトル。そして歌詞もぶれずにそのことのみを歌う。
ローカルアイドルが濫出する中、フェリーズは「渡船フェリー」を紹介するために存在し、事実このCDアルバムを聞くとフェリーズを好きになるだけでなく、単純に「尾道行きてぇ!」と旅情誘う気持ちになります。
「アイドルを作り、ローカル情報を発信する」。手段が目的化してきている現ローカルアイドルシーンにおいて、はっきりと「尾道・渡船フェリー」をプレゼンできているフェリーズは偉い!


さて、そんなブレないフェリーズのコンセプトもさることながら、何よりその楽曲群が粒ぞろいで良いのでアルバムレビュー的に勝手に紹介します。

尚、上記の楽曲群のうち「soundscape」と冒頭にあるものは渡船場の波の音のみを録音したものなので、楽曲解説は省きます(が、このフィールドレコーディングをアルバムに収録するセンス、最高です)

<2.渡船フェリー>
ゆるく跳ねたベースラインとドラムマシーン。潮風を感じるシンセパッド。「今日も渡船に乗って行こう」とフェリーズの存在意義を冒頭から示す名曲。フィーチャリングのラッパーもスキルが高く「あり続ける尾道オリジナル」はラップ至上でもかなりヤバいパンチラインなのでは。

<3.やっぱり渡船>
チープなリズムとカシオトーン(CASIOの廉価キーボード)ライクなオルガンの音。young marble giantsを下敷きにしたとおぼしき楽曲、「渡船 渡船 ドドドドドー」「未来の乗り物 やっぱり渡船」と歌詞とメロディへの乗り方も素晴らしい。聞き終わるころには「3つの航路」を覚えてしまう名曲。

 <5.アナタハミナト>
プリセットされたリズムパターンとしか思えないイントロ(褒めてます)から始まるチープバレリアックチューン。90'sアシッドハウス風味をまぶしたピンクレディー風歌謡なフェリープレゼンソング。「フェリー」という単語をこんなにクールに歌う楽曲は世界中どこ探してもない名曲。

<6.海からの手紙>
全編ゆったりとしたピアノと少なめなパーカッションで構成されたチルアウトソング。このチル感と海・フェリーが不可分なく結びつけて表現されているのがこの曲の魅力。70'sシンガーソングライター〜ノラジョーンズに連なる「レイドバックソウルミュージック」と吉田美奈子〜荒井由美路線も感じさせる、シティポップならぬ「シーポップ」な名曲。

<7.ブルーラインGOGO>
アルバムを通して聴くと、「海からの手紙」までがA面、そしてこの「ブルーラインGOGO」からB面始まったという感じの曲順、よくできてます。
「ブルーライン」とは「瀬戸内しまなみ海道と安芸灘とびしま海道をつなぐ海の架橋」とのことです(検索しました…)。
後ろに鳴るカウベルの音がここでもプリセットっぽいチープさ(褒めてます)で好感。渋谷系と同じ鳴りをするドラムサンプルが心地よいミッドテンポの名曲。

<9.尾道クルージング>
ファンキーなドラムパターン(スネアの音がまた良い!サンプリングかな)と弦楽器音色のシンセ、カッティングギターのBPMゆるめのディスコソング。ここまで、フェリーズの声の魅力を語るのをすっかり忘れていたけど、低いけど太すぎないしっとりしつついい意味で男らしいマチルダと、海風の湿気を帯びつつも揺れる細さが魅力のヨーコの歌の掛け合いがたまらない。ミラーボールより波の景色が似合う名曲。ちなみに私的ベストソングはこれです。

<10.アイランドロック>
ピロレーターとか初期デアプランのような(わからない例えスミマセン)、ロックンロールのコード進行をチープな(やっぱり褒めてます)打ち込みとシンセ音に差し替えた佳曲。歌詞は島の名前をひたすら歌うのみ!これは現地に住まう二人だからこそ歌える(覚えられる)歌詞でしょうね。

11、12曲目はリミックス。これがまたセンスがいい!歌メロを生かしつつも4つ打ちを強めてよりテクノポップ感を高めた11曲目、ボイスチョップしてミニマルテクノアレンジを施した12曲目と、元曲の違う魅力を引っ張りだしていますね。

そんなわけで、これを書きながらフェリーズを何度も聴いてしまい、尾道に旅行したい欲が高まる一方です。お手軽なナイトクルージングしたい!

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