シラカンはどこがおもしろいのか(派手にネタバレします)あと、それといっしょに考えた美大出身劇団のこととか思い出とか

東京学生演劇祭Cプログラムのシラカン「永遠とわ」がとんでもなくおもしろくて、んで、何がおもしろかったのかを書きます。

おもしろかった点は3つ。「構造」「人物造形」「雰囲気」(文中のセリフは「こんなこといってた」という意味のもので実際のセリフではありません)

1 「構造」がおもしろかった

登場人物は3人と謎の鳥

女1 (机が好き。今日から同棲をはじめる)

女2 (女1の幼稚園からの幼馴染。男1が好き)

男  (女1が好き)

謎の鳥 

30分の短編なわけだけど、冒頭ちょっとみた段階で「あー、机を好きになった女の子の異種恋愛譚なのね」と思ったわけ。それに実在の人物がからんだ四角関係(女2→男→女1→机)と。んで、あたし、演劇をたくさんみてて異種恋愛譚も結構みたけど、異種恋愛譚って「異種恋愛が異種のまま成就する」「どちらかが種族を変わって恋愛が成就する」「恋愛は成就せず、人間側の『それでも僕はいつまでもきみを愛し続けるよ』みたいな宣言で終わる」のバリエーションしかみたことなかったの(他みたことある?演劇に限らず)

んで、中盤、それまでは光ることでしか意思表示ができなかった机がしゃべれるようになって(!)、女1が思いを告げると「いや、俺お前ムリ。女2が好きなんだよね」と、『異種恋愛譚で人間がふられる』んだよ! んで、話はそれで終わらず、「女1→机→女2→男」という四角関係の反転が起こる。「n角関係の反転のおもしろさ」ってのはシェイクスピアのころからあるわけだけど、そこに道具として異種恋愛が入っている(!)と。

つまり、構造的に

「三角関係、四角関係の一角に異種が入る」

「異種恋愛で人間がふられる」

「『異種恋愛譚』という大きなモチーフを『n角関係の反転の物語』の道具に組み込んだ」

「異種恋愛譚だと思わせておいてからの『実はn角関係の反転劇』」

というのがおもしろかったです。

ただ、構造でいうと、物語って「対立の解決」なわけですけど、ラストで「n角関係の反転」に決着がつくわけではないんだよね。おもしろいからどうでもいいけど。

2「人物造形」がおもしろかった

そもそも「机が好き」ってのがおかしいんだけど、女1の「今日から机と同棲はじめるけどふたりっきりになると緊張しちゃうから(女2に)いっしょにいて」(!)とか女2の「あたしと女1は幼稚園の庭のトーテムポールにポールって名前をつけて毎日儀式をしてたの」『(男)いつまで?』「最近(大学入学後も)まで」とか、後半机が「じゅせーい」という叫びとともに触られた相手の子供(机と人間のハーフ)を次々生み出せるとか、造形やエピソードが逐一おかしいんだよね。

3「雰囲気」がおもしろかった

シーンがいくつかあって、日付が変わると人物が衣装を変えて出てくるんだけど、それがどれも可愛かったりおかしかったりするんだよね。机の造形も舞台中央のソファも可愛い。舞台にちょっと介入する謎の鳥も変でいい。



んで、シラカンみたあといくつかツイートしたんだけど、美大を母体にした劇団の持つ自由さ、囚われのなさ、みたいなものは演劇プロパーの人にはなくてうらやましいな、と思いました。あたしは快快(当時小指値)と長くつきあって、いまらぶ・まん激押しなんだけど、美大系の劇団って「演劇はただの手段で、もっとおもしろいことあったらそれやったらいいし、やりたくなくなったらやめてもいい」ってスタンスで演劇といっしょにいる。劇団の人は目的が「おもしろい演劇やりたい」だからいつも演劇『だけ』やるんだけど、美大の人の目的は「おもしろいことやりたい」で演劇が手段だから、おもしろければ演劇『じゃなくても』いい。演劇しかできない人と、演劇もできる人。「劇場でどんなことやろう」と発想するひとと「やりたいことがあってそれを劇場のサイズまで縮小するにはどうすればいいか」と発想するひと。らぶ・まんなんて劇場公演やってライブハウスやって野外デコトラ公演やってキャバレーやってフリーマーケットやってだからな。演劇じゃなくてもいいんだよね。

ただ、現在の東京で劇団の規模を維持するためには劇場の公演を続ける劇団が有利だろうね。

昔、前の職場に小指値呼んだとき、小屋入りしたらリーダーの北川がいなくて、「よんちゃんどうしたの」っていったら『あー、リーダーは今ショッピングとかしてます』っていわれたときの驚き。「かわいい服買うのが楽しくなっちゃってバイトが忙しいから公演を休む主宰」。これ、演劇プロパーからみると驚くんだよね。(当時の小指値は主宰北川、多くの場合演出が篠田、公演ごとに変わる責任者がいて、週1回(?)のメンバーのネタだしで出たおもしろいアイデアを篠田がまとめるって作品が多かった、と思う)

あたしの知ってる当時の快快のメンバーも今は役者やったり農業やったりマンガ描いたり拠点をバンコク移したり母親兼振付家だったりいろいろだけど、やりたいことが優先で演劇やり続けることにこだわりがないんだよね。

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