ラカン曰く「欲望とは他者の欲望である」らしい。では自分本来の、模倣でもなく羨望でもなく内から湧き上がるような欲望とは本当にあるのだろうか。

>>さて、いまから１０年くらい前、西武百貨店のポスターに、こんなコピーがあった。「ほしいものが、ほしいわ」糸井重里によるこの名コピーは、欲望の本質をとてもよく表している。高度成長期には、みんなが「欲しいもの」を持っていた。まるで車とかカラーテレビ、冷蔵庫といった、共通の欲望が実体として存在するかのようだった。でも、社会が成熟し、安定期に入って、僕たちは物質的には満たされてしまった。もう僕たちには、いますぐ切実に欲しいものなんか何もない。せいぜい「おいしい生活」をまったり楽しむことを、ささやかに願うくらいだ。でもそんな暮らしの中でも、僕たちはひそかに憧れている。そう「何かを切実に欲しがる心」に。

引用元は、斎藤環先生のネットコラムからである。

私はあまり物欲が無いというか、一般的な女性よりは服飾品やファッションを全く買わない方だと思う。理由は「こんな田舎でおしゃれしても虚しい」である。田園の畦道をヴィヴィアンウエストウッドで全身キメて歩くのも、それはそれでアヴァンギャルドでロックだからある意味セゾンの思想には合ってるのかも知れない。

やはりせっかく全身大好きなブランドでキメてオシャレして化粧したら、その価値が分かる人間が大勢居る街に出向いて思い切り見せつけたいという位の承認欲求はある。でも悲しいかな、もはや都会に出向くのすら億劫になってきてしまった。今の私には無印のシャツとユニクロのジーンズとコンバースハイカットに吉田カバンで十分オシャレで満足なのである。例え、今の私を過去の私が見たらボロクソに言おうとも、私は今の私に満足している。これ位がちょうど良い。しかし、人に良く思われたい見られたい羨ましいと思われたい。これは若い人なら誰しも通る道なのではないだろうか。特にうら若いお嬢さんなんかは特に。

ここ一年くらい用が無い日はほとんど家から出ず、必要なものはネットで頼んでいる生活をして分かったことがある。ネット注文は「洗剤が切れたから買おう」とか割と明確な目的があって使用している。

でも以前は買い物に出かける際は、なんとなく今欲しかったり必要そうなものを探すといったかなり曖昧だった。まさに「欲しいものが欲しいわ」状態だ。

これだけ豊かになっても便利になっても「何かを切実に欲しがる心」は欲望の根源として、心の中で静かに時に激しく鳴門海峡のように渦巻いているような気がする。例えば有名な配信者が商品を紹介すると一気に流行ったり売れたりして品薄になるらしい。これは好意的に思う相手と自分が同一化したいと言う願望の代償行為で、その配信者を中心としたコミュニティの一員として帰属意識の視覚化や行動理由が欲しいんじゃないかな〜と思う。あと皆んな持ってるから流行りに遅れる！買わなきゃ！っていう謎の強迫観念。いや単純に良い商品だから私も欲しい！ってフランクな人もいるんだろうけど。

私はどうもこういったこの手のコミュニティへの帰属がネットの内外で極めて薄く、相手と同一化したいと思うような人も居ない。簡単に言えば、捻くれた1匹狼で何に対しても陶酔出来ない。あまりに冷めてしまっていて、何にも酔っぱらえないのである。

この世は正気じゃシラフじゃ生きるにはあまりに辛すぎる。だから皆んな何かに酔っ払ってないと生きて行けないって、兵長のおじさんが言ってた。進撃の巨人は話が難しくて最後まで読んでもやっぱり良く分からなかったこど、兵長のおじさんが今際の際に言った言葉は私の中に深く深く刺さっている。

私も酔っ払いたい。でも結局はいつか酔いも綺麗さっぱり覚めるし、街やインターネットに溢れる欲望は果てしないし、結局自分は本当に何が好きで分からないまんま中年になってしまった。

最近分かったことは、片付いた部屋で猫と一緒くつろいで飲むお茶、熱々のお風呂と檜や金木犀の匂い、ふかふかの柔らかい布団と可愛いぬいぐるみに囲まれてぐっすり寝る。これは、誰の影響も模倣でもない、紛れもない私だけの欲望なんだと思う。

私にも欲望はある。例えば更に部屋を片付ける為にロボット掃除機を買うとか、冬は足が冷えるから足湯機を買うかとか、ニトリのCMの肩まで支える枕が欲しいとか、それはもうたくさんある。最後に至っては「あれだけ寝て未だ寝る気なの？？？」と家族に嫌味を言われるくらいだが、寝るのは身体に良いしタダだし安全だし健康に良いから良いんです。あとお風呂も身体に良いから一日何回入っても良いんです！なんやねん風呂キャンセル界隈て…。

でもね、やっぱり躁鬱気味で自分の欲望っていうかテンションに振り回されちゃうから。だからもうネット通販のアプリとかブクマとか全部消した。だって見たら欲しくなるし。買っても対して使わないのに。届く頃には何頼んだか忘れてる。無駄遣い辞めたい。でも欲望が無いと人は生きていかれない。あーもう世の中の仕組みって上手いよね。

昔から大中とか宇宙百貨店とか文化屋雑貨店とかスイマーとかが大好きだったから、アリエクで雑貨見てると無限に時間が溶けてしまう。なんか著作権とか怪しいものが多々あるから怖くて買えないけど、見てるだけで脳みそからキラキラユニコーンハッピーポッピンシャワー✨🦄🌈✨がダバダバダバーって出てるのが分かる。でも安すぎて買うのは何か怖いから見てるだけです。

そうね、だからキッチュでポップで安価なちょっと胡散臭い雑貨やキラキラチカチカするガジェットが好きみたいです。これも内側から湧く欲望なのかな。小学生かよってくらいシールやステッカー好きだし。そんなに貼る場所ないのにね。

最近長い文章を書いていなかったので、とりとめのない会話のような文章になってしまった。このとりとめのない会話のような文章ってやつは、決して衒学的にもならず飾り気もなく、洗いざらしのシャツにくたびれたジーンズとサンダルみたいで我ながらなんか好きだ。

唐突にノープランで海を見に行きたい。出来れば単車一人旅で。でも未だ免許もバイクも何も無くて。ただ海辺でアイス食べて景色見て帰りたい。帰りのSAで美味いうどんを食うのも良いだろう。喫煙所でもう二度と会わない知らない人と益体のない会話をしたい。旅、したいねぇ…。