その22範馬刃牙サムネ_LI

ドキッ!男だらけの最凶プリズン 囚われの美少年は甘露に濡れて 乙女の聖典~女子こそ読みたい「刃牙」シリーズ その22

 私が「刃牙」シリーズ(※注1)に感染し、脳内からおじやが分泌されはじめ、この連載を始めてからはや10ケ月が経過した。もはや「刃牙」シリーズに出てくるたいていの技や、人間の治癒能力についてそれほど疑問を覚えなくなってきた。私の脳の神経細胞が、順調に筋肉に置きかわってきている証拠だろう。今回からは『範馬刃牙』編の感想を開始(はじ)め、この記事では1~10巻について熱論(かた)る。

 ここで少し昔話をさせてもらいたい。何回、その話してるんだよという感じだが、「刃牙」シリーズを最初に読んだとき、私は盛大に順番を間違えた。というのも、『グラップラー刃牙』1~3巻、『バキ』1~3巻、『範馬刃牙』1~3巻が、ウェブコミックサイトで同時に無料になっていたのだが、シリーズの順番について一切、ヒントが無かったのだ。ウェブコミックサイトでは、全般的にそういうトラップが仕掛けられている。

 私はまず、『NANA』『NARUTO』『トリコ』のように、主人公の名前を簡潔に押し出している『バキ』に目を付けた。覚えやすく明快なタイトル、これが最初に違いないと思った。いきなり「クラス全員が震えているが、刃牙さんだけは震えていない」という話で始まったが、変化球ながら、「ものすごく強い主人公」の表現としてこれはこれで「アリ」だろう。斬新な第1話だなと思った。とはいえ、徳川光成がおなじみ感を出しつつ訪れてシンクロニシティとか言い出し、次々に死刑囚が出てきた時点で、「なんか違う」と気付いた。
 次に私が目を付けたのが『範馬刃牙』だ。やはり主人公のフルネームをビシッと押し出していて、覚えやすい。初発から、未読の私でも知っていた有名キャラ・範馬勇次郎の規格外の戦闘力を物語るエピソード、そして鮎川ルミナと、範馬刃牙の出会い。これはこれで、第1巻として「アリ」だなと思った。しかし長々とリアルシャドーが行われるに至り、「さすがに違う」と気付いた。
 最後にやっと『グラップラー刃牙』を開き、絵柄を見て一瞬で「あ、これが最初だ」と確信したのだった。いまから考えると、『バキ』はともかく『範馬刃牙』を読んで、新作マンガの第1話として「アリ」だと判断したときの私は、どうかしていた。きっと脳内からすでにおじやが出ていたのだ。
 その後もけっこう長い間、『グラップラー刃牙』の後の順番について『範馬刃牙』→『バキ』だと誤解していた。受験生時、センター試験に「刃牙」という科目があったら、かなり苦戦したと思う。危なかった。

 それはいいけど、『範馬刃牙』のわりと早い段階で、小学生に見せつけるようにして刃牙さんがリアルシャドーを始めてしまったのが、自分のことのように恥ずかしく、最大トーナメントの時と同じく「家でやれ」と思った。それがよくなかったのか、本当に家でやる流れになった。

 ルミナを家に連れて行き、リアルシャドーするシーンなのだが、これはたぶん歴戦のグラップラーの間ではもう終わった話題なのだろうが、「刃牙死ねハウス」にいつの間にか地下室ができている。地下室があるのは松本邸(梢江さんの家)の離れだったのでは? 実は両方に地下室があったのかな? 板垣先生の脳内で、この二つの家が融合してるのかな?(有力説) 
 まあ「刃牙」の世界では、首に視神経があったり、重量の関係ない空中で加速をつけたり、掌中の空気の組成をコントロールできたりするので、急に地下室が出てきたぐらいのことで驚いていたら、命がいくつあっても足りない。ここで語り部系の新キャラ・ルミナが、片平恒夫ばりのノリのよさを見せ、『テラフォーマーズ』感のある戦闘になっていた。いいけど刃牙さん、用事が終わったら、カマキリ逃がしてあげて。

 そして白昼堂々のアメリカ大統領強襲。『バキ』の段階で、超高校級の格闘家だという情報がけっこう周囲にバレていたので、刃牙さんもいっそグローバルにバレていいやという気持ちになったのだろうか。それにしても「ストライダムに手を回してもらうとか、他にやり方あるのでは?」「大統領、素直すぎでは?」「刃牙さん、英語うまいな?」という流れで、刃牙さんプリズンブレイク編が始まった。

 私は刑務所ものに詳しくないのだが、超有名ブロマンス映画『ショーシャンクの空に』は見ているし、著名なマンガ『BANANA FISH』でもアッシュが刑務所に入るくだりがある。あとなんとなく読んでみた『軍鶏』の冒頭で少年院のエピソードがあった。BL小説でも、たまに少年院や刑務所が舞台になる。これら豊富な文献から学んだことだが、男性しかいない刑務所では、性欲や、支配・嗜虐欲を満たす意味で、新入りのアナルが狙われがちであるという。
 一方で、私は花輪和一のノンフィクションマンガ『刑務所の中』を愛読しているので、少なくとも日本の軽犯罪者の雑居房では、フィクション内で描かれるほどは、アナルが狙われていないような気もする。
 しかし幸運にも『範馬刃牙』はフィクションであり、かつ、刃牙さんは皆さんご存知の通り神をも欺くような美少年。さらに18歳を迎えたということで、私の期待がむくむくと高まってきた。具体的に何を期待しているかは、倫理的にアレなので言えないが、読者の皆には言葉ではなく、心で理解できていると思う。

 さっそく、ヤベえ感じの受刑者が刃牙さんに「オイラの彼氏にならねッ?」とか言ってきたし、い~~~~い風が吹いてる。もう期待感がぐんぐんにMAXだ。
 しかしなぜか、アイアン・マイケルをはじめ、同室のやつらがすごい淡泊なんですよ。
 いや待て、みんな落ち着け。ここは、ヤベえやつだという噂の「ナンバー2(セカン)」に期待しよう……「おまえさんにとっては今夜が最後の安息になるでな……」とか言われたしな……。こうして、まんじりともせず朝を迎えた私ですが、用具入れから出てきた「2(セカン)」ことゲバルが、非の打ち所がないさわやかな男なんですよ。なんでだよ。
 いや……暴動を起こすのはまだ早い、この広い刑務所内、絶対に刃牙さんの美貌と、着やせして一見華奢にみえるが、脱ぐとスゴい肉体に目を付けるやつがいる。と、思ってガン見しておりましたところ、ようやく刃牙さんが反省房に入れられるという事件が起こる。フィクション内の反省房といえば、世間的には反省棒とも言われている。これは来るぜ……身動きできない状態の刃牙さんを狙う、看守のいやらしい反省棒が……。


★お知らせッッ★
 このシリーズを加筆修正し、『「グラップラー刃牙」はBLではないかと1日30時間300日考え続けた乙女の記録ッッ』として、河出書房新社から2019年11月に書籍が発売されました! 電子書籍もあるよ! もちろん秋田書店さんの許可をバッチリと取っております!!
書籍に収録されている範囲は、その1〜その16まで(『グラップラー刃牙』『バキ』までの感想全部)です! ぜひ一家に一冊、いや百冊!!

 さらにこの奇書を原案として、松本穂香さん主演の実写ドラマ『「グラップラー刃牙」はBLではないかと考え続けた乙女の記録ッッ』が制作されました!!(WOWOWさんが制作幹事) 2020年8月20日〜10月1日まで、全7回放映! 現在、いろんなサブスクで配信中ッッ! お一人で、またご家族で、そしてご友人とぜひお楽しみください!!


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