Inked乙女の聖典バキ編その10_LI

俺の克巳が敗北を知って病院送りにさゥワアーーッッ 乙女の聖典~女子こそ読みたい「刃牙」シリーズ~その10

 皆さんは、推しがようやく登場したと思ったら、乱入してきた人物にボコボコにされ、救急車を呼ばれるのを見たことがありますか。
 私はあります。
 身も世も焦がす恋情に、今宵も背中の鬼が哭(な)く。
 今回から「刃牙」シリーズ(※注1)の第二部『バキ』に突入し、1~3巻までを熱論(かた)ります。

 この連載の「その1」(無料記事)でも触れたが、私は『グラップラー刃牙』1~3巻、『バキ』1~3巻、『範馬刃牙』1~3巻を、7月か8月の時点で読み、後遺症でしだいに脳からおじや(※注2)があふれ、シリーズ全巻を自動的にポチることになった。
 当時は、愚地克巳(おろち・かつみ)についても初見で、特に思い入れがなかったので、『バキ』2巻のドリアン道場破りの場面で「なんか病院送りにされた奴がいるな」「かませキャラだな」とか思った。
 いま、『グラップラー刃牙』42冊を読み終え、克巳の身長(186.5㎝)・体重(うっすら脂肪を残し116㎏)、履いているパンツの形(ビキニ)・柄(ヒョウ)について、他人から見たら気持ち悪いほど反芻(はんすう)し、アナベル・ガトーばりの勢いで、この場に私は戻ってきた。

 つらい。
 別に私も、克巳に最強であってほしいとか思ってはいないのだが、ドリアンに手も足も出ない感じで敗北(まけ)て、救急車を呼ばれたのはかなりつらい。
 あれっ? 克巳ってこういう位置づけでしたっけ? なんかほら……昔はもっと、強キャラ感がオーラとして見えそうになってたよね?(見えるとは言ってない) 確かに烈さんにワンパンで負けたときに霊圧が消えて、刃牙さんわっしょいロードでもすごい後列に並んでたけど、ついさっき、烈さんと仲良くセッ……セッション?をして、「中国4000年をパクりまくる」(※注3)とか、さわやかに宣言してたじゃない。

(やだ……強そう……)

 その直後に救急車を呼ばれる流れは、さすがに可哀相じゃない? 克巳の持ち技・正中線連撃が、敵に効果的なダメージを与えた場面を見たことがないのもつらい。私も克巳ファンとしてもう少し成長したら、一周して「おいしい」とか思いはじめるのかもしれないが、まだそこまで達観できない。
 あとドリアンが、克巳の黒帯をすごい速さでほどいた場面で、読者にエッチなことを期待させておいて、別にエッチなことをしなかったのも許せない。お前はここに何をしに来てるんだ。つまらぬ勝利をもたらされてる場合か。

 ドリアン討つべし。ドリアン討つべし。
 名曲『董卓(とうたく)討つべし』(※注4)になぞらえて、強く誓う私だった。

 いきなり本題に挿入(はい)ってしまったが、『バキ』、最初からクライマックスでシンクロニシティ。矢継ぎ早に死刑囚が出てきて、それぞれ工夫は凝らしてあるものの似たような脱獄シーンが続くので、正直、最初に読んだときはキャラクターが全く覚えられず、「もうだめかもしれん」と思った。ちなみに、作品の順番を知らなかったので、『グラップラー刃牙』ではなく、いきなり『バキ』から読んだのも地味に敗北ポイントだった。
 
 だめかもしれん、と思いつつ、しかし死刑囚たちがそれぞれ、意中の男に対して激しい求愛ダンスを始めたのを、私の体内の高感度BLセンサーは見逃さなかった。

 スペックa.k.a.「そのコートどこで買ったの」がまず、刃牙さんをあからさまに狙っていく。自分の顔面に拳銃を連射してからの、切りとってきた誰かの手をプレゼントしてアピール。これまで「刃牙」に出てきたキャラの中でも、ダントツにパスみ(サイコパスぶり)がやばい。このプレゼント、吉良吉影(きら・よしかげ)(※注5)だったら、品質によっては喜んでくれるかもしれないが、刃牙さん普通に引いてるから。
 刃牙さん、これまで高校で正体がバレないように気を遣ってたのに、さすがに広域指定不良チームに目をつけられはじめたし、なんか変なコートを着たスキンヘッドの大男が求愛してくるし、体力測定でも「俺TUEEEEE」エピソードになるどころか、特殊な訓練をしすぎておかしな結果を叩き出してしまって可哀相。いいけど、刃牙さんが助走なしで砂場を飛び越えたり、ムキムキの筋肉を見せたりしたときに、クラスメートが「スゲェんじゃねェか?」「クスリやってるとか?」ぐらいで流していくノリもすごい。無関心か。デントラニー・シットパイカー(※注6)に対する私の気持ちと同じぐらい無関心か。

 一方その頃、ドイル、シコルスキー、柳龍光(やなぎ・りゅうこう)は、どの男とセッ……セッションをしていたのか。

★お知らせッッ★
 このシリーズを加筆修正し、『「グラップラー刃牙」はBLではないかと1日30時間300日考え続けた乙女の記録ッッ』として、河出書房新社から2019年11月に書籍が発売されました! 電子書籍もあるよ! もちろん秋田書店さんの許可をバッチリと取っております!!
書籍に収録されている範囲は、その1〜その16まで(『グラップラー刃牙』『バキ』までの感想全部)です! ぜひ一家に一冊、いや百冊!! 

 さらにこの奇書を原案として、松本穂香さん主演の実写ドラマ『「グラップラー刃牙」はBLではないかと考え続けた乙女の記録ッッ』が制作されました!!(WOWOWさんが制作幹事) 2020年8月20日〜10月1日まで、全7回放映! 現在、いろんなサブスクで配信中ッッ! お一人で、またご家族で、そしてご友人とぜひお楽しみください!!

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