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Metallica “72 Tours - Amsterdam, Netherlands April 27 & 29, 2023”

今年デビュー40周年を迎えたバンドの道のりへの祝福とその過程でどれだけの影響を世界へ与えてきたか、そんなことに思いを馳せるライヴ音源だと思う。Metallica、アルバム”72 Seasons”を携えたワールド・ツアー初日となるアムステルダム公演の公式ライヴ音源がようやく届いた!今回のツアーは各都市週末に2公演を行いその2公演で演奏する楽曲のダブりは一切なしということを明確に打ち出したライヴ形式で、アムステルダムでは各日16曲づつ計32曲を披露している。
 
新作”72 Seasons”からは各日3曲、計 6曲をプレイ。2夜あるからこそ新曲も(過去曲もだけど)多くプレイできるのがとても良い。ちょうど今ヨーロッパ・ツアー第1節が終わったところでその6曲は全公演固定されていたけど、むしろこれ以外に聴きたい曲があると思えたのが今回のアルバムの素晴らしさ、ということなんだと思う。”Shadows Follow”、”Too Far Gone?”や最後の”Inamarata”、なんなら今回やっていない6曲はどれも聴いてみたいかも!
 
伊藤政則さんのインタビューの中でラーズが”We enjoy being in Metallica, we love Metallica and we cherish Metallica”ということを話していたのがとても印象的で、アルバム”72 Seasons”が何か吹っ切れたようなバンドの本能的な快楽に包まれていてそれが素晴らしいのはこのためなんだろうなあと思った。歳を重ねるからこそ、気にしなくてよくなることって沢山あるはずで、そんなことを実際に見せてくれている彼らは、歳を取ることも悪くないと思わせてくていて、それは少し下の世代としては感謝でしかないね(自分はちょうど10歳位下なので)。
 
その他に演奏されている過去曲はある1枚のアルバムを除いて全作から選曲されている。逆に、これらの曲は"MetallicaがMetallicaでない"ことを意図した闘争の証でもあるようで、ヴァリエーションに富んでいて、それらをまさに慈しむようにプレイしているのがとても印象的。そしてそれをライヴという空間で披露するというのは、この40年間への祝福ということになるんだろうなあ。そこに向かう人全ての人にとってその時間とMetallicaの時間を重ねるということもあるんだろう。
 
アルバム毎にそれぞれの作風があまりに違って、やはり興味深い変化を、クオリティを落とすことなくやってきたバンドなんだなと実感できるというのもこの2夜分の音源を聴いて改めて思った。それぞれの時代の空気を吸い、それを自分たちなりに解釈して吐き出したものがまた世界に影響を与え続けてきた、その連鎖を40年続けてきたというのは超人的と評しても言い過ぎではないと思う。
 
2023年にMetallicaを聴く理由。まさにこういうことなんだと思う。
 
ただ、今年ちょうどリリースから20年を迎えた”St. Anger”というアルバムの曲だけが演奏されていないのは悲しい…涙。個人的にはめちゃくちゃ好きなアルバムなのになあ。逆にそのアルバムからの曲を演奏したくない理由というのがあるとしか思えない…あの時期も最近もジェイムズが精神的に不安定だったことも何かリンクするのだろうか…あのアルバムがあったからこそその後の20年があった超重要作だと思うので、来月からのアメリカ・ツアーでは1曲位はセットに組み込まれますように。
 
ちょうど6月末に発売になった「ヘドバン・スピンオフ」のMetallica特集が素晴らしいのでこれは必読かと!伊藤さんのラーズへのインタビュー、谷原章介さんインタビューとか最高だったし、新作や過去作のクロスレビューも改めてデビュー40周年にはジャストだと思う。ラーズが表紙というのがポイントだよね。
 
しかし、既にヨーロッパ・ツアーからの映像は20曲も公式映像としてyoutubeにアップされているし、ライヴ音源もこうやって自身のサイトで販売している。1985年リリースの2ndアルバムから自ら原盤を持ち、自分達の活動に自分達で責任を追うスタイルは相当リスキーだったと思うんだけど、自分たちを信じてずっとやり続けてきたというのは本当に尊敬しかない。年が経つことにこのバンドのことが好きになっていると思うんだけど、運営方法もクリエイティヴィティもこれだけのことを続けているわけでそれも納得なんです。

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