利益誘導型政治の華麗なるリバイバル?

 日本若者協議会という日本の若い世代の政治参加に関する活動をしている団体がある。ウェブサイトの団体紹介を見るたびにいつも悲しい思いをする。

http://youthconference.jp/日本若者協議会について/

 かつて、若年者の政治参加は、市民社会における「普遍的な正義」であったはずだ。「普遍的な正義」というのは、どのような利益や被害をもたらすかに関係なく正しいとされるということ。

 しかし、日本若者協議会の団体紹介を見る限り、市民社会全体の正義としてではなく、少子高齢化という稀有な環境下での特定年齢層の利益の保護のために、若年者の政治参加の拡充が唱えられている。市民社会の「市」の字もない(保守的な政治家に配慮したとしても、「国民」「有権者」「公民」といった代替可能な言葉はある)。

 わかりにくいので簡単な例を出そう。もし、この理屈が通るのならば、若い世代が圧倒的に多く高齢者が圧倒的に少ない国においては、高齢者の発言権を強化し、若者の発言権を制限(参政権年齢の引き上げ)しなければならなくなる。

 もし、永遠の若者がいるならば、この理屈が正しい可能性も1ミリグラムぐらいあるだろう。しかし、大抵の人間は産まれ、学習を通して成長し、市民社会の構成員としてのメンバーシップを獲得していくという一連の流れを生きているはずだ。若者もいつかは老人になる。民主主義への参加というのは、このプロセスそのものであるから「普遍的な正義」なのであって、それ以外の何物でもない。

 最近、イデオロギーの時代の終焉や、課題解決型政治の時代の登場が一部で唱えられている。しかし、それが真新しいのは西欧においてであって、日本においては、既に起こった事象でしかない。特定の人々によって特定の課題を解決するために団体が結社されロビー活動が活発に行われる。これは今に始まった話じゃない。

 例えば、保健・医療の世界においては、医師・歯科医師・看護師・薬剤師などなどが政治結社をつくり時の政権(大抵は自由民主党を中心とした政権)に働きかけてきた。時の政権は、各結社の忠誠心=集票力を競わせ、貢献した団体が代表する業界の課題の解決を優先してきた。各職は医療・福祉の問題を解決するために協力し社会をよくしていかなければならなかったのにも関わらず、むしろ、対立し、結果として狭い領域の課題解決しか生まず、問題は先送りされただろう。身内の利益を重視する利権集団だと疎まれ、社会とも隔絶した。

 医療系職業者が政治結社を作ったのが間違っていたのではない。自分達の業界の狭い利益のみを代弁し、他の医療系職業者や他の市民と繋がって普遍的な幸福を追求しようとしなかったから、このような悲しい帰結を迎えた。

 医師や看護師だけがいる社会がないように、若い世代だけの社会もない。異なる職業・世代・性別・年齢etcの人間がいる社会がある。若い世代を代弁するのも構わないが、他者とのコミュニケーションを開いていく存在を目指すことがなければ、既存の政治運動と変わらない、利益誘導型政治を実現する存在になるだけだ。

 地域での政治家との対話イベントは、世代でくくらないことが多いであろう。しかし、日本の中央・東京・永田町に行った途端、変な集団わけに押し込められ、対立関係が挿入される。属性による分断に抗い、知恵を出し合ってより良い社会を作っていこう。

P.S. 日本若者協議会が参考にしたであろうイギリスの若者議会はミッションの一つとして以下のことを挙げている。

To be, as the national youth council of the United Kingdom, committed to ensuring that those aged 25 and under are represented and participate fully and actively as citizens.(25歳以下の人々が、完全かつ積極的に、市民の一員として代表し、市民社会に参画することを、イギリス若者議会は保障する。)

http://www.byc.org.uk/about-us/our-vision,-mission-and-values.aspx

 彼らの活動をよく知っているわけではないが、少なくともイギリス若者議会の「Our vision, mission and values」というページに世代間の不均衡の是正ということを意味するフレーズはない。

また、公開討論会の運営などを行っている日本青年会議所の理念を見ても、「青年」に特化した文言どころか、「青年」「若者」の単語が出てこない。

http://www.jaycee.or.jp/junior_chamber/idea

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?