マガジンのカバー画像

案山子とラケット譚

8
映画『案山子とラケット』譚 http://www.kakarake.com/ 2015年4月4日 全国ロードショウ!
運営しているクリエイター

記事一覧

青々

青々

この記事は、月刊『シナリオ』7月号(2016年)に掲載されたものです。

 最近、特に青臭い。シナリオ講座生時代、「人間を描け」と、口煩く言われた。僕は、人を開腹して、臓物を曝き出す様な真似の、何処が面白いのかと、聞き流していた。しかし、脚本でメシを喰うようになって、ようやく最近、その意味を肌で判り始めた気がする。要は、「興味深い人物」を描かなければ、作品が面白くならないのだ。曝き出せれば上出来で

もっとみる
故郷と案山子

故郷と案山子

この記事は、月刊『ドラマ』6月号(2016年)に掲載されたものです。

 現在、昼ドラ『サギ師リリ子』以来、お世話になっている、児玉宜久監督と、福井県を舞台にした映画の脚本を創っている。

 福井には豊かな自然があり、長い歴史と文化がある。何より、人が良く、第二の故郷にしたい程の思い入れを抱いている。

 脚本は、緻密にハコを精査し、ようやく初稿を上げた所である。今後の取材や打ち合わせで、作品をど

もっとみる
亜季と珠子と青空と

亜季と珠子と青空と

 映画『案山子とラケット ~亜季と珠子の夏休み~』の魅力は、佐渡島で撮影された雄大な自然。田圃と森の緑のコントラスト。そして、主演を務めた平祐奈と大友花恋の功績が大きい。彼女たちは初主演という大役を背負って、明るく前向きに役に挑み、カメラの前で常に亜季と珠子であり続けた。

 主人公、小田切亜季は東京からトラウマを抱えて、島を訪ねた中学三年生。それは若さ故の現実逃避と云える。閉塞した都会の生活に耐

もっとみる
村の仙人

村の仙人

鏡八重という女性は、とてもチャーミングな女性だ。島で生まれ育ち、その土地に根を張って今まで暮らして来た。夫を亡くしてからは一人暮らしだが、山菜を採ったり、宅配の惣菜を注文したり、挙句は災害時の広報スピーカーまで設置して、人生を楽しんでいる。

八重婆から見れば、島を襲う高齢化、過疎化への対応に、手をこまねいている若者たちを、焦れったい思いで見ていたに違いない。しかし、村人たちも日々の生活に精一杯で

もっとみる
魂の鼓動

魂の鼓動

「これが、ソフトテニス選手の魂の鼓動だ!」

西園寺馨にソフトテニス・プレイヤーの達観したセリフを言わせたい。そんな意見が出て、監督とプロデユーサーと三人で新宿の喫茶店に集まった。

柳葉敏郎さん扮する西園寺は、実業団のコーチを務めるソフトテニスを極めた存在。そんな人が語る座右の銘は、どんなモノだろう。プロデューサーは、ソフトテニスの醍醐味はボールの音ではないかと言った。コートで弾むボールの音は、

もっとみる
やるしかないよね?

やるしかないよね?

ソフトテニスにトラウマを抱えていた亜季は、家庭の問題もあって傷心し、父が住む島へと移り住んだ。学校で出逢った珠子に巻き込まれる格好で、ずるずるとラケットを握る破目になる。

やがて、亜季はトラウマと向き合う覚悟をする。

「やるしかないよね?」人生からも逃げていた亜希は、ソフトテニスを始めることで新たな一歩を踏み出した。

経験者に話を訊くと、コートの上では対戦相手ではなく、自分との戦いだという事

もっとみる
泥だらけの青春

泥だらけの青春

「作っちゃおう、コート!」珠子が突拍子もない事を言い出した。

珠子は東京に行きたいが為に、亜季を誘ってインターハイを観戦に行き、その魅力にノックアウトされる。最初は亜希からソフトテニスを教えて貰うだけの約束だったが、練習場がないためコートを作ろうと珠子が提案した。

亜季と珠子は、真夏の陽射し照りつける校庭のグランド整備を始める。汗にまみれ、泥だらけになって、草を毟る中で、亜季のソフトテニスへの

もっとみる
一生の宝物

一生の宝物

亜季と珠子は、廃校のグランドをソフトテニスのコートにしようと、草毟りを始めた。体育館に有った万国旗をネット代わりにして、コートもどきを作り練習を始める。

それを見守っていた村の仙人こと八重婆が声を上げ、村長にまで談判する。やがて、亜季と珠子の情熱に突き動かされた大人たちが、コート作りを手伝うようになる。そして、少女たちだけでは決して成し得なかった、本格的なソフトテニスのコートが完成した。

「努

もっとみる