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映画『案山子とラケット ~亜季と珠子の夏休み~』

※このnoteは、月刊『シナリオ』2015年5月号「シナリオ作家通信」に掲載されたものです。

『案山子とラケット ~亜季と珠子の夏休み~』が4月4日から全国公開される。

 映画は「ソフトテニスの映画を作りたい」と云う、戸島正浩Pの情熱から始まった。脚本の依頼は、東日本大震災の復興支援で交流のあった、井上春生監督から頂いた。

 最初の打ち合わせで、磯貝誠Pから「亜季と珠子を、映画『最強のふたり』にしたい」との提案があった。立場も環境も違う二人が、何かドでかい事を成し遂げる。構想が膨らんだ。

 実質的な脚本作業は、主人公・亜季に内的要求を配し、プロットポイントを打ち込みながら、超目標へ向けて道筋を敷く。そこに、既に在った古澤敏文氏の原案や、井上監督のカラフルなアイディアを圧着させることであった。本来、主人公たちが対峙すべき障壁はモンタージュで割愛し、原案の魂とも云うべき『地域振興』のサブストーリーに配分を割いた。

 主演の若い女優二人と読み合わせをした時、まだ改訂中の脚本を暗唱していて、意気込みを感じる共に、執筆への責任感が高まった。

 幾度かの打ち合わせを経て、決定稿が出た。しかし、そこからが脚本の本番だった。

 2014年7月、インターハイ会場で撮入し、佐渡島での地方ロケに移った。自然豊かな島での撮影では、監督と綿密に相談し、美しい景色を狙って、毎日の様に差し込みを入れた。

 撮了後もスニークプレビューに参加し、脚本として意見を述べ、アフレコでも加筆した。映画と共に脚本が育つ、特別な体験だった。

平祐奈と大友花恋と云う逸材に出逢えたのも幸運だった。彼女たちの溌剌とした演技が、最強のペアとして観客を魅了するだろう。

 井上監督が紡ぐ映像美や、キッチュな演出も素敵だ。劇伴、野崎美波氏の楽曲ともマッチしている。見所は日本で発祥し、今年130周年を迎えるソフトテニスの試合場面である。

 主題歌として流れる、さだまさし氏の新曲『青空背負って』は正に、青春の応援歌だ。

 心温まる作品を是非、劇場で観劇下さい。

公式HP:http://www.kakarake.com/


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