雅也の家_切り返し_

青々

この記事は、月刊『シナリオ』7月号(2016年)に掲載されたものです。

 最近、特に青臭い。シナリオ講座生時代、「人間を描け」と、口煩く言われた。僕は、人を開腹して、臓物を曝き出す様な真似の、何処が面白いのかと、聞き流していた。しかし、脚本でメシを喰うようになって、ようやく最近、その意味を肌で判り始めた気がする。要は、「興味深い人物」を描かなければ、作品が面白くならないのだ。曝き出せれば上出来で、魅力的な人物を、どう描くか。今更、青臭く考えている。まるで、講座生の頃の様だ。

 先日、講座時代の恩師と会った。食事を御馳走になって、還暦の記念品を渡した。やはり、教鞭を受けた恩師は、親と同じく、何時までも「先生」である。特に先生は、相撲のぶつかり稽古の様に、身を持って脚本の何たるかを教えようとしてくれた。その時の擦過痕が今でも疼く。きっと、二言三言のセリフでは、決して語り切れない情念こそが、一遍の脚本で描くべき事ではないか。この期に及んで苦悶するとは、呆れる程に青い。行うは難しで益々、青い。

 最近は、時間を作って、オリジナル脚本を書いている。原作偏重、ヒット作の焼き直しが、劇場を埋め尽くしている。それらを掻き分けて、拙作が映画になるなど、望むことすら愚かに思える。しかし、青くて何が悪い。匙を投げてしまって、何がシナリオ作家かと、自分を鼓舞する、青い青い日々を送っている。

 最後に。昨年、公開された映画『案山子とラケット ~亜季と珠子の夏休み~』が、非劇場上映の全国行脚を始めた。皆様に、お目に掛かる機会があれば、幸いである。

公式HP:http://www.kakarake.com

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