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ライブのようなフィルムを観て~坂本慎太郎LIVE2022atキャバレーニュー白馬 フィルム上映会 at味園ユニバース~

観てきましたよ。坂本慎太郎のフィルム上映会。
せっかくライブハウスに行くのに映像を観るだけってどうなん?と思っていたのだが、とんでもない。あれは限りなく“ライブ”に近く、ライブでは絶対に味わえない体験だった。

そもそも、味園ユニバースで坂本慎太郎を観られるというだけで十分価値がある。昨年の秋ごろにあった味園ユニバース公演に落選したことをずっと悔やんでいただけに、今回の上映会は願ってもない機会だ。

元々はキャバレーだったという本会場。両側がキラキラと光る階段や、色とりどりのネオンとミラーボールが吊るされた天井など、平成生まれの僕にも分かるくらい昭和感たっぷりな空間だった。
整番が良かったこともあり運よく最前列中央付近のソファを確保できたので、ジンジャーエールを注文し、DJがプレイするレコードに耳を傾けながら上映開始を待つ。これから観る映像への期待と会場の雰囲気も相まってテンションが上がってしまい、一丁前に脚を組んだりなんかしていた。お酒がすこぶる弱いのにウイスキーが飲みたくなったし、吸ったこともない煙草が恋しくなった。僕は普段から居酒屋の雰囲気だけで酔っぱらえる男なのだ。


閉演後のスクリーン
会場後方


会場の話はこの辺にして本編の話をしよう。
開演前の影アナはなんと坂本慎太郎本人。丁寧かつ澱みないアナウンスで微笑んでしまった。こういう何気ないサービス精神がすごく好きだ。

最初に書いた通り、この上映会は限りなく“ライブ”だった。三面スクリーンにはそれぞれ違う視点の映像が流れ、音は当然ライブハウス仕様の爆音。すぐに映像ということを忘れて没入してしまった。

これまで観たライブと明らかに違ったことといえば、坂本慎太郎並びにバンドメンバーの表情や仕草の細やかな動きがよく見えたことだろう。
過去に参加したライブは座席がステージから遠かったこともあり、坂本慎太郎の全身の動きを見るのがやっとだった。しかし今回はスクリーンが三枚もあり、あらゆる視点から撮られた映像がかわるがわる写されていく。曲が終わるたびに観客へお辞儀をし、時折満足そうにうなずく坂本慎太郎。ツンと顎を突き出し、不敵に微笑みながらコーラスをするAYA。人間味を感じないほど正確な身のこなしでリズムを刻む菅沼さん。フルートとサックス以外にもなんかいろいろやってて楽しそうな西内さん。これまではあくまで坂本慎太郎だけを目当てにしていた節があったけれど、今後ライブを観る機会があったらもう少しバンドメンバーにも注目してみたくなった。

演奏については今更言うまでもないのだけれどやはり素晴らしい。上述した通り音響はライブハウス仕様なので、全身を骨ごと揺さぶり、脳に直接突き刺ささるような、ライブならではの音がそこにあった。一方で16ミリフィルムで撮られた映像は味のあるざらつきがあって、まるで物語のような非現実感を演出していた。この年のツアーはZepp Nambaの公演を観に行ったし、その後も彼のライブには足を運んでいるはずなのだけれど、こうしてスクリーンでギターを弾いている姿を眺めていると、「あの姿はやはり幻だったのでは……?」と思わずにはいられない。

とにかく隙のないライブだったのでどの曲も印象深いのだが、書き始めたらきりがないので何曲分かだけ触れようと思う。

『死者より』にて、「いきものってめんどくさい いきものめ いきものどもめ」と歌う坂本慎太郎の顔が三画面すべてに大写しにされた。曲調こそ穏やかだけれど、ゆらゆら帝国時代、あたかも妖怪のような風貌でパフォーマンスをしていたあの狂気的な坂本慎太郎が一瞬顔を覗かせたようで迫力満点だ。

それから『愛のふとさ』のギタープレイ。めちゃくちゃサイケデリックでカッコよかった。歪んだ轟音で脳みそを揺すられているあの感じがたまらない。坂本慎太郎はいくつになっても尖ったロックミュージシャン何だと改めて感じさせられる。

一番の見どころはどこかと言われたらやはり『仮面をはずさないで』だろう。ギターソロがとてつもなく良いのは言うまでもないとして、西内さんのサックスがトびそうなくらいカッコよくて、最高にロックだった。ベースとドラムもリズムを崩さずに主張を強めていって、そこにボーカルとコーラスも乗っかった時の、様々な音が洪水みたいになだれ込んでくる感覚はまさにライブそのものだ。原曲の軽やかさからは想像もできないほどに観客も盛り上がっていて、その歓声が演奏にさらなる厚みを与えている。
三枚もスクリーンがあったからだろうか、音と一緒に自分が飲み込まれてしまうような気がして、実際ライブを観に行った時よりも鳥肌が立っていたかもしれない。

『まともがわからない』『あなたもロボットになれる』『君はそう決めた』『ディスコって』といった人気曲(個人的見解)が続いた場面は観客のボルテージがどんどん高まっていって、思わずその場で踊り出す人や、コップを高く掲げる姿もちらちら映っていたのが印象的だ。照れなんて微塵もなく自然体で身体を揺らす彼らの姿には、上手く言い表せないけれどとにかく“良さ”があるよね。
とくに『あなたもロボットになれる』のギターソロの前あたりからは、ゆったりくつろぎながら観ているのに耐えられなくて、その場で踊りだしたくなる衝動を抑え込むのに必死だった。やっぱこの曲、めちゃくちゃダンサブルだわ。
それはそうと、いろいろな楽器を次々と出してきて、終いには踊り出す西内さんにすごく癒されたことも追記しておこう。

そうそう。驚いたのはダブルアンコールで『ツバメの季節に』をやったことだ。僕の記憶違いでなければいいのだけれど、大阪の公演ではやっていなかったと思うので、おそらくこの公演限定なのかな?スタッフロールも流れた後だったので思わぬサプライズに声がでそうだった。

まだまだ語り足りないのだけど、明日は仕事なのでこの辺で切り上げようと思う。本当に新鮮で最高の時間だった。でもやっぱり、次は生で観たいな。


味園ユニバースの外観(夜)

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