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エピソードトークができない症候群

エピソードトークが苦手だ。

「分かる〜」とノリで言われると、ちょっとイラッとしてしまうくらいには、深刻に苦手意識を持っている。臨場感もなければ、ユーモアもない。比喩なんて使えたらカッコいいけど、僕にとっては上級呪文だ。

人と話すことは好きだし、飲み会でも盛り上げるのが下手だとは思わない。でも、それは会話のボールを回すことに慣れただけで、自分に2-3分渡されたら最後。会話のボールは途端に、爆弾へと生まれ変わる。

怖いのだ。早く、その注目を逸らしたくてたまらない。オチなんてない、落とし所が分からなすぎて、気づいた時には自分が底なし穴に落ちている。

とにもかくにも、エピソードトークが苦手だ。

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最近友人のススメで、永井玲衣さんの「水中の哲学者たち」を読んでいる。

哲学者である永井さんが行う「哲学対話」という取り組みを中心に、エッセイチックに、日々の疑問や悩みへの考察が展開される。

すべてが5,6ページの短編で読みやすい。そして、取り上げられるエピソードはどれも臨場感があって、オチもついていて、知的におもしろい。

「おクーポンはございますか?」

おクーポン。わたしは感動で目を開く。ネット上で「おデバイス」や「ごPDF化」という言葉を見たことはあるが、おクーポンは初体験だ。響きも抜群にいい。群を抜いている。声に出して読みたい日本語だ。

『水中の哲学者たち / 永井玲衣』

僕は28年間、生きてきた。でも、永井さんのように人に伝えられるエピソードトークは両手で数えられるほどもない。なんなら片手あるかないかだ。

そのことに気づくと「何を記憶して、生きてんだろう。」と思う。だからといって、悪い人生じゃない、むしろ幸せだ。

◆◆◆

エピソードトークが苦手だ。

それで終わらせることもできるけど、日々エピソードを残せたら。
きっと毎日が濃くなり楽しくなるだろう、永井さんの本を読んで感じてしまった。だから、noteを書いている。

カメラを持って出かけると、いつもの景色がいつにも増して美しく見えるのと同じように。

そんな期待を胸に、少しずつエッセイを書き綴ってみよう。

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