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邦ロック民が行く!西新宿ナルゲキ

初手からお前正気か?という画質の写真で申し訳ないが、聞いて欲しい。

わたくし、人生初めてお笑いライブを観に行きました。

写真に現れている通り、私は動転に動転を重ね落ち着きのない2時間を過ごしたのだが、それでも生で観ることでお笑いの面白さ、楽しさをさらに深く知れたのでレポートさせていただきたい。

かねてより私が行きたかったトッパレ(A)#223は、まんじゅう大帝国の5連覇がかかったライブで、元五連覇制覇者のザ・ギースにM1決勝進出者の東京ホテイソンがゲストバトラーとして参加する”神回”だった。

トッパレ(A)のフライヤー
フライヤー誰が作っているのだろうか。センスがかっこいい。

(引用)https://twitter.com/kproa/status/1696723329678459318?s=20

人生初めてお笑いライブ見るのにザ・ギースと東京ホテイソンを観るの?他にも見たい芸人が山ほどいるのに?トッパレなんて、前売り2000円だぜ?こんなビギナーズラックを掴んだ人、他にいるのだろうか。周りを見渡すに小慣れた風の人ばかりで分からなかったが、もし居たら教えて欲しい。
アーカイブ期間を過ぎているため各ネタの内容には触れないが、感動をここに書き留めようと思う。ああ、もう少し早く書けば微力ながら今回分の宣伝になったのに。差し出がましい心配であるが、申し訳ない。


お笑いこわい

初のお笑いライブ、知らないライブハウスで全く作法がわからないため、とりあえずK-PROの規約を読み、なるほど入り待ちで待ちは禁止ね、撮影はMCから許可が出てからね、と確認に確認を重ねる。一つ目を疑ったのが”飲食禁止”だ。え?2時間あるのに”水分補給程度に抑え周囲にご配慮ください”じゃないんだ?かなりカルチャーショックだ。邦ロックのライブなんてワンドリンク制が基本で、ビールの一杯でもないと転換の間が持たない。

結果から言うと、水を飲む暇なんてなかった。
いや、配信でトッパレ!自体は予習してたじゃん、と言う話なのだが、本当にお笑いライブの転換は短い。流石にコントの場合は数分の時間を要していた。しかし、それでもとにかく、脳が忙しいのだ。昔、漫才や落語のオチはなぜ弱いのか?と言うスレが立っているのを見たことがあるが、寄席のスタイルで連続で笑わされている観客からすると、オチでのクールダウンがないと、多分、めちゃくちゃ困る。

(注)5ch固有の攻撃的な言葉が飛び交う上に、
   実在のお笑い芸人に言及しているので閲覧注意

笑いとは「え?どういうこと?」と言う緊張と「なるほどそういうことね」と言う緩和で生じる訳で、こんなもん乱暴に言えばセックスのオーガニズムと一緒だ。代わる代わる違うテンポとストーリーを持ってこられて緊張と緩和の連続を味わうなんてもう一大事、疲労困憊で、本来ならピロートークが必要だ。実際、TVではコマーシャルがあるし配信では一時停止があるが、ライブにあるのは終演時間、”ケツ”だけだ。暗転の中で、待って、私、大オチでまだツボってるんだけど、と思っているうちに照明が明るくなる。

音楽との根本的な違いもある。それは「自由度」だ。音楽はどんな態度で聞いても成立する形をとっている。地下のスタンディングの会場では、地蔵のように佇もうが、踊ろうが、酒を飲もうが自由。「私以外私じゃないのを笑ってるボケども、後半で当たり前だけどねってこっちから言ってるだろうが」などと過去に川谷絵音はアンチにキレていたが、基本的にこれはナンセンスで、歌詞もメロディーも受け取り手の自由がある。この場合のライブハウスは曲を自分事と捉えても他人事と捉えても、歌詞を受け取っても音として楽しんでも構わない場として提供されている。その自由度のために、音楽ライブは”熱量が高い”ライブとなる。
しかし、お笑いに受け取り方の自由度はない。先述の通り、観客の緊張させ緩和させることがゴールであり、演者はそのために声から表情から動きから間、あらゆるツールを使ってくる。かなり商業的と言える。漫才やコントを見る椅子が敷き詰められたライブハウスでは、観客側は息を潜めて演者の一挙一動を見守り、彼らのロジックを理解しようと努め、まんまと笑わされている。お前ら、学校の授業もそうやって聞けよ、というぐらいステージに意識を集中している。あんなにおちゃらけた体裁で、バンドマンよりも支配的なのがお笑い芸人の本質ではないか?ともかく、”一体感のある”ライブというのは、構造上、お笑いライブに軍配が上がるかもしれない。コールアンドレスポンスもないのに、あんなに声が揃うなんて恐ろしいことだ。我々は完全に芸人に操られている。

ナルゲキには芝生がある

初めての地に狼狽しながらも撮影した写真を掲載させていただく。本当にカメラを趣味にしている人間の写真か?という見苦しい写真で申し訳ない。いつかリベンジさせてください。

煙草と室外機の香りが染み付いた地下らしい階段を下ると目の前に飛び込んでくるのが芝生。これはかなり感動した。いや、それこそショート動画などで事前に見ていたわけなのだけど、生で見るとひとしおだ。なんだ、この構造。誰が考えたのだろう。おしゃれだ。

西新宿ナルゲキ入り口の芸人等身大ボード
ママタルトが病欠で見られなかったのだけは残念だった。回復したようで何よりです。

そこから受付を過ぎると細い廊下にはナルフェスソロライブに向けてリリースされた各コンビのポスター。あまりに手ブレしていたので掲載は控えさせていただく代わりに、個人的に最も好きなひつじねいりのポスター図柄を引用する。

その通りすぎる

(引用)https://twitter.com/kproa/status/1697874500002742581?s=20

最高じゃあないか、これ。彼らの漫才やトークを見るたび、漫画じゃん、と思う。どこまでがキャラで本性なのか知りたくなってしまうのがオタクの悪いところだが、劇場で生で見て漫画じゃん、と思ったのでひつじねいりは恐ろしく漫画ということだ。何を言っているのかと思われるだろうが、問答無用な強さがある。

また、奥にある、おそらくはフィルムカメラで撮られた写真たちが印象的だった。アラサーの私としては”映るんです”はかなり身近だったものの、それが2023年に息を吹き返すとは思わなかったんだよな。

フィルムカメラで撮られた芸人のオフショット。
白が白すぎることで有名な映るんですよの”エモ”写真たち

この画質、のちのち時代検証の邪魔になりはしないのだろうか。お笑いをわざわざ写真ベースで歴史検証することは未来永劫ないだろうが、まんじゅう大帝国やYes!アキト、大鶴肥満のビジュアルがフィルムの持つ平成初期の質感にあまりにもマッチしていて、学者が首を傾げている様を夢想してしまった。トイレ待ちの列でそれらを眺めていると、前に並んでいるお嬢さんがつぶさにまんじゅう大帝国の竹内さんを探し、写真を撮っていた。お嬢さん、ここにも竹内さんいますよ、なんて声を掛けたい衝動を堪えつつ、私も田中さんを探す。もしかしてこの写真、定期的に入れ替わっているのだろうか。ぜひまた来て、検証したい。

客席に関しては基準がないので比較できないが、なるほど、スモークを炊かないので、音楽ライブよりも空気が綺麗な気がする。声も音響もとにかく聞き取りやすい。そういえば、転換時にマイクの音量を調整していなかったが、芸人本人たちが声量をコントロールしているってことなのだろうか?ますます恐ろしい人種だ。誰一人として聞き取れない演者はいなかった。学会ならばまずあり得ない。
また、前方の席を取れば手持ちのカメラでの撮影も効果的そうだったので検討したい。一方で、席間は狭めなので大きな鞄でくるのは控えるのがおすすめだ。私は所用で大きめのリュックで参戦し、足元に置いていたので足が攣りました。

そういえば感動した点がもう一つあった。”あのアクスタ”だ!

ナルゲキエースたちのアクリルスタンド
竹内さんのようこそナルゲキへ!感が眩しい。

古参ファンの方のSNSでよく見るやつ。これは終演後に出口付近に設置されていたが、開演前はトイレ並び列で眺められるように配置されていた。思ったよりもコンパクトで可愛い。ハロープロジェクトのアイドルアクスタと同じぐらいのサイズだろうか?ナルゲキアクスタ、新メンバーも追加して再販してくれないだろうか。余談だが、うちにはムラムラタムラが居て、呪術廻戦の七海建人と並んでいる。アニメの絵柄と違い、芸人のアクスタは格好つけない逆説的な格好良さがある。古参ファンは販売されたアクスタをコンプリートし、卓上を”俺の考える最強のお笑いライブ”にしているのだろうか。いいなあ。

まんじゅう大帝国の16万

ネタの中身については言及しないが、ライブの結果について少し触れさせてもらいたい。前述の通り、まんじゅう大帝国の5連覇を阻むゲストバトラーとして強力な2組がセッティングされた。オープニングトークでももちろん、これらの強敵と対決するまんじゅう大帝国に意気込みを聞かれていた。しかし、ここで「みんな面白くて怖い」といった感想と共に名前が上がったのが「ヤーレンズ」。実際に1位ヤーレンズ、2位まんじゅう大帝国、3位ザ・ギースといった結果になったわけだから、彼らの懸念は的中したわけだ。うーん、俺の推し、聡い。
不勉強で申し訳ないが、私はヤーレンズのネタを初めて見た。これは、強い。規定時間を大幅にオーバーした反則技ではあったのだが、それを感じさせない笑いの連続と、何よりも不思議と嫌にならない明るいボケのキャラクター。最強やん、これ。まんじゅう大帝国は超えられるの?と緊張しながら、カーキ色のスーツが照明に照らされるのを待った。

贔屓目なしにまんじゅう大帝国の今月の時事ネタ(彼らは毎月のニュースをネタをする出来高方式でトッパレに臨んでいる)は面白かった。少しだけいつもよりコントが多く、普遍的なネタをパワフルに笑いに持っていくスタイルでドカンと爆笑をとっていた印象だ。いや、生意気に語っているが、自分が夢中で笑っていたので冷静に判断できているとはいえない。ファクトが弱くて申し訳ない。
しかし実際、まんじゅう大帝国はヤーレンズとの票差は17票差という大健闘を見せた。予想されていた強敵のゲストバトラー二組は下したものの、自他ともに認めるベテラン実力派に僅差で敗れる。なんてドラマチックなのか。ドラマに反して生々しい金額の5連覇賞金16万円を逃して、彼らの連戦は幕を閉じた。



暗転していく中、誰よりも長く深く、客席に礼をしていた田中さんの姿が焼きついて離れない。舞台上ではニコニコとして笑いを途絶えさせない舞台装置であった彼らが、裏でどんな気持ちなのかなんて、分からない。知ろうとするのも彼らの本意ではないだろう。このバランスがお笑いファンは難しいのだろうとツギクル芸人グランプリをリアルタイムで観ていた時にも思った。しかし、笑わせた時点で決して負けではないのにそれでも勝ち負けに拘る姿は、どんなに皮肉を言おうが自虐してみようが、やっぱり格好いい。負け顔や涙だけが真剣さじゃあないよな、と思う。

帰り道、大きな余白を残して書かれた田中さんの「勝ちてぇー」がポツリと言葉の中に佇んでいるのを、思わずじっくりと眺めてしまった。

ナルゲキ前掲示板にて演者の一言コメント
全員壊します、静かに怖い

勝手に疲れた帰り道

人生初めてのお笑いバトルライブは、大いに笑って、勝手に胸を締め付けられ、勝手に爽やかな気持ちで帰りました。
現場はネタに集中するためにかなり体力を消耗することが分かったので、今後も配信視聴を織り交ぜてとはなるが、K-PRO界隈のお笑いを楽しませていただこうと思う。ああ、急いで先週のソロライブの配信を視聴しなくては。以前も記事に書いたが、芸人の彼らの迷惑になるべくならないように、そして速やかにお金を落としていきたい。






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