見出し画像

診断され苦しんでいる方々へのメッセージ

『症状とあなたの価値は無関係です』 樋口直美(レビー小体病本人) 

認知症とつく病気を診断されたら、何もできなくなってしまうのでしょうか?家族や人に迷惑をかけるようになるのでしょうか?自分が自分でなくなっていくのでしょうか?
 いいえ、違います!それは、誤った過去の情報です。診断された私たちは、それを身をもって伝え続けています。

 診断され、深く傷ついている今、できないことが急に増えたかもしれません。私たちもそうでした。真っ暗闇の底で打ちひしがれ、孤独で、このままただ悪くなっていくのだと思っていました。でもそれは、まったく違っていました。
 この病気の症状は、ストレスがかかると一時的にとても悪くなります。安心して人と笑い合えるようになると、新しいこともできるようになります。今、色々なことが急にできなくなっていたとしても、それは辛い気持からくるストレスのせいです。

 私たち仲間は、その暗闇から抜け出して、今は、新しい生き甲斐やしあわせを感じて生き生きと暮らしています。
 きっかけは、様々ですが、同じ病気の仲間と会い、話したことという方が多いです。本やネットには、辛いことばかり書いてあるかも知れませんが、同じ病気の仲間と会えば、みなさん元気に生活されていることがわかります。

 もし出会いの場に恵まれなかったとしても、今は、本人が自分で書いた本があり、本人が話すテレビ番組があり、動画も多数ネット上に公開されています。辛さを語る動画には共感し、前向きな姿には、元気と勇気をもらえます。

 診断後も同じ会社で仕事を続けている仲間、診断後10年経っても講演活動を続ける仲間、ボランティア活動をしたり、絵を描いたり、歌ったり、野菜を作ったり、スポーツを楽しんだり…。全国の仲間たちが、病気と共に生き生きと暮らしています。病気になってからの人生の方が、素晴らしい人と出会い、充実していて楽しいという仲間も少なくありません。

 病気は、あなたの中のほんの一部分です。苦手になることは、無数の脳の働きの中のほんの一部分です。あなたは今も、これからもずっとあなたです。これからの人生を豊かにしあわせに生きることができます。仲間たちが、それを証明しています。仲間たちの笑顔を動画で見てください。

 病気の症状は、恥でしょうか?
症状とあなたの価値は、無関係です。忘れたっていいんです。どんな不思議な症状があってもいいんです。それは、病気が起こすもので、あなたの人格とは、何の関係もありません。確かに不便は増えますが、大丈夫です。笑顔で生きる道は、たくさんあります。

そのために、気持ちが落ち着いたら、まず一番親しい人に病気のことを話してみましょう。きっとそのままのあなたを受け入れてくれます。そして困った時、なにげなく手を貸してくれるでしょう。迷惑なんかじゃありません。人は、お互いに支え合うもの。その人が困った時は、あなたが手を貸し、助けてあげることができます。

 病気になってから、新しい、よりよい人生が始まったと仲間たちは言います。ゆっくりで構いません。一緒に歩き始めましょう。

*認知症の原因となる病気は数多く、症状も多種多様です。そのため、「認知症」という状態を1つの病名として使うことには、個人的に抵抗しているので、「認知症になった」「認知症と診断された」という書き方でなく、「病気」という言葉を敢えて使っています。 

樋口直美:1962年生まれ。30歳代後半から幻視が出現。41歳でうつ病と誤診され、6年間、誤治療の副作用に苦しんだ。2013年、若年性レビー小体型認知症と診断された。2015年、『私の脳で起こったこと』を出版。現在も幻覚、時間感覚の障害、自律神経障害、嗅覚障害などのさまざまな症状はあるが、執筆活動を続けている。

出典:『認知症になっても人生は終わらない 認知症の私が、認知症のあなたに贈ることば』【著:認知症の私たち 協力:NHK取材班 2017年4月20日(株)harunosora発行】 p.42〜p.46 

目次
◆PART1「届け、私たちの声!」
 曽根勝一道/樋口直美/杉本欣哉/青山仁/丹野智文/奥公一/福田人志/町田克信
◆PART2「認知症の私から認知症のあなたへ」
 認知症になったあなたに伝えたいこと(奥公一)
 周囲に思いを伝える事が大切(町田克信)
 日々、奮闘中!(大城勝史)
 症状とあなたの価値は無関係です(樋口直美)
 私だから言えること、私しか言えないこと(曽根勝一道)
「上を向ういて」と口ずさみながら歩きます(村山明夫)
 認知症になってよかったなと思える時がある(丹野智文)
 これで生きていけるよ(福田人志)
 私が認知症とは思っていなかった(鳥飼昭嘉)
 まだ出来る。そんな思いで生きている(I・H)
 すぐに介護が必要なわけではありません(平みき)
◆PART3「私のホンネ」
 佐野光孝/M・Y/村上昭三/兒島光子/K・S/I・S/吉田キヨ/A・H
◆聴かせてください、私たちに(平田知弘)
◆伝えてほしい、ありのままの声を(永田久美子)

→ Amazonサイト  → harunosoraサイト

素晴らしい希望のメッセージ集です。是非、図書館にもリクエストして下さい。病院の待合室にも置いて下さい。診断され、今、苦しんでいらっしゃる方の手に届けて下さい。お願いします。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

🔵 ヨミドクター(読売新聞サイト)に書いたコラム:

相模原殺傷事件に思うこと『普通の人として、普通に生きるために』    認知症と終末期医療 『何もわからない人というとても大きな間違い』

🔵 医学書院のサイトに連載中(症状の詳細をエッセー風に):      『誤作動する脳 レビー小体病の当事者研究』

🔵 樋口直美公式サイト (動画や原稿へのリンク集です。)

🔵 拙著『私の脳で起こったこと レビー小体型認知症からの復活』(2015年度日本医学ジャーナリスト協会賞 書籍部門 優秀賞受賞)→アマゾン


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?